高木由利子写真展「chaoscosmos vol.2 -sakura-」 「無秩序の自然現象」を捉えるマクロ的視座
こんにちは。
Webマガジン「SHOOTING」の編集長をしている坂田です。
サイトでは、写真にまつわるヒト、コト、モノを発信しています。
今回は写真展の鑑賞ブログです。
東京・表参道のGYRE GALLERYで開催中の高木由利子写真展「chaoscosmos (カオスコスモス)vol.2 -sakura-」を観た。
日本人にとっては、桜と富士山は特別な存在です。ただ富士山は実際に観に行くため、撮影するためには物理的な移動が必要なのに対し、桜は日本全国どこにでも咲くので、被写体としては身近な存在と言える。開花時期になれば、SNSには桜の写真があふれ、コンテスト本には桜の満開写真が多数掲載される。桜はとても身近で、ある意味「とても難しい被写体」とも言えます。
その中で、高木さんの写真を拝見したのですが、「素敵な写真だなあ」と思いました。
皆さん、観に行ってください。
以上。
で、終わってもよいのですが(笑)、
何がどう素敵なのか、もう少し書きたいと思います。
注目したポイント
1「桜」=「カラー写真」がほとんどだが、作品はモノトーンがメイン。
2「桜」=「大木」「花のクローズアップ」が多いが、花が枯れ落ちた部分に注目
3 「花びら」ではなく「粒子の集合体」的な捉え方
4 和紙や光沢紙、漆喰の板など様々な素材にプリント
5 作品を床にべた置き(一点だけ)
1「桜」=「ピンク」の写真が多いが、作品はモノトーンがメイン
SNSの時代でも、世の中の写真はほとんどカラーで撮られている。桜のカラー写真ももちろん美しい。でもそこで敢えて色を排除することで、見えてくるものもある。
本展には、カラー作品も出展されているが、メインはモノトーン。それによって「色味が美しい」という感覚は排除されて、ラインやシルエットが強調される。さらには「木」や「花びら」ではなく「別の何か」に転化したような、「想像していたイメージ」が一度リセットされる。
2「桜」=「巨木」または「花びら」だが、花が枯れ落ちた部分に注目している
桜の写真は巨木を引きで撮影したり、枝についた花びらをクローズアップするなどが一般的。それは「桜という木」またはその「木の状況」を撮影しているから。しかしこのシリーズは本体ではなく、「落ちた花びら」に注目することで、そこに形成される「何らかの自然現象」を捉えている。
高木さんは桜の木を撮影しているのではなく、そこから離脱した花びらが、別の物に変化していく事象(過程)を捉えている。
3 「花」ではなく「粒子」的な捉え方
「chaoscosmos」というタイトルが付けられているように、「混沌と秩序」が同時に形成されるという考え方。それをカメラという記録装置で撮り下ろしている。
「桜の木」がある風景写真を撮っているわけではないので、花びらの集合体が「銀河」に見えたり、「ISSから地球を見下ろした夜景」また「細胞の集まり」のような…。観る人によって捉え方が変わるのではないだろうか。写真という静止した作品にも関わらず、長い年月で変化している銀河を捉えた感じがする。
4 和紙や光沢紙、漆喰の板など様々な素材にプリントが施されている
展示されているプリントは巨大なサイズから、2L判?程度の小さなサイズまで様々。プリントに用いられる紙も、和紙や光沢紙、漆喰の板など様々で、黒を締めたい時、艶を出したい時、和紙の風合いを出したい時など、目的に合わせて使い分けされている。
写真用紙とアクリルを貼り合わせたり、シルバーのフレームを合わせるなどの加工もされているが、基本的には写真のトーンを活かした額装で、主張しすぎることはない。
カラー作品には、アルミの板に直接インクを吹いたような、もしくはピクトリコ「GEKKO パールラベル https://amzn.to/43K1R1m 」のようなベースがシルバーのプリント作品も艶があって美しい。
5 作品を床にべた置き(一点だけ)
この展覧会では、一点だけ作品が床にベタ置きで展示されている。壁に吊らないで、床に立てかけた展示はたまに見かけるが、ガラスを挟むこともなく作品ママの直置きは珍しい。もし複数名で閲覧するならマスクを付けて頂けたらと思う。
写真は撮ってないのだが、一番奥の通路の壁には縦位置で2点、桜の写真もあるのでそちらは是非会場で観てください。
高木由利子写真展
chaoscosmos vol.2 -sakura-
カオスコスモス 弐 - 桜 -
会期:2024年3月1日〜4月29日
会場:GYRE GALLERY
住所:東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
URL:https://bit.ly/3TIQSkf
SHOOTING Magazine
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