経営者に教えてもらった、DXへのブレない向き合い方
最近、さまざまな業界でデジタル化、DX(デジタル・トランスフォーメーション)が叫ばれています。
私が所属する広告業界・マーケティング業界も、その影響を思いっきり受けています。
社内でもDX関連のセミナーが多数行われたり、クライアントに提供するDXのサービスも、ものすごい勢いで増えています。
一方で、情報量が多すぎて何が大事なのか見えにくくなっているとも感じます。
では、実際のところ、企業の経営者はDXをどうみているのか。
今日は、最近経営者の方から聞いた中でも特に心に残った話を2つ、ご紹介したいと思います。
ビジョンを実現するために、デジタルの力を使いたい
あるメーカーの役員の方とお会いした時の話です。
その企業はコロナ禍の影響で苦しい反面、巣ごもり消費で一部の製品は従来よりも売り上げが上がっている、といった話を教えてくれました。
そんな中、私が「○○さんはDXってどう思いますか?」とストレートに聞いてみました。
すると、こんな返答がありました。
「それでも、やらなきゃいけないことはたくさんあるんだけどね」といって笑っていましたが、その顔に迷いや焦りにようなものはありませんでした。
この話を聞いて、私は少し反省しました。
ブランド戦略のコンサルタントをしておきながら、ブランド=企業の”らしさ”を大切にするよりも、DXのサービスをどう売り込むかを考えてたような気がしたからです。
おそらくこの役員の元にも、日々さまざまなDX関連の売り込みが、コンサルやITベンダーや広告会社などから山のようにあるのだと思います。
また、新聞やWEBでは「デジタルを活用して売り上げがあがった!」という記事が溢れています。
そういう中にあっても、企業の理念を中心において、DXはあくまで手段であると冷静に考え判断するのが経営者だなと、改めて痛感させられました。
メガネの販売は、あえてデジタル化しない
ある講演会でお聞きした、メガネチェーン企業の役員の方の話も印象的でした。
そのメガネチェーンでは、メガネに加えてコンタクトレンズの販売が売り上げの多くを占めるそうです。
そして、コンタクトの販売は積極的にデジタル化を進める一方で、従来から行っているメガネの販売は、あえてアナログな対面型を残しているというのです。
その理由とは、メガネの販売は企業の強みが活かせるから、でした。
メガネの調整は、やはり店員の技術が必要で、そのチェーン企業はスキルの高い店員がたくさんいて、それがこの企業の強みです。
また、社員たちも直接お客さんと話しながら自分のスキルを生かすことに喜びを感じます。
一方で、コンタクトの場合はそのようなスキルを生かすことはできません。
むしろコンタクトの煩雑な手続きで店員が忙しくなり、せっかくのメガネ調整スキルが生かせない状況が続いていたといいます。
そこで、コンタクトの販売にデジタル化をどんどん取り入れて、メガネの販売に時間が使えるようにしていったのです。
つまり、店員が生き生きと働けて、お客さんにとって高い価値が提供できる環境を作るために、デジタルを活用するという考え方です。
世の中にはメガネをデジタルを通じて販売する方法はたくさんあると思います。
しかし、この企業では、メガネの販売においては対面の機会をつくるためにあえてデジタル化しない、という戦略を選んでいました。
企業の強みを明確にすることで、あえてDX「しない」という選択肢も見えてくるのです。
企業には夢がある。夢の実現のためにデジタルがある
今、DXという言葉のもとに、たくさんのツールが生まれています。売り込みや研修なども増えています。
また、「他社はもうやっているのに、うちの会社は大丈夫か」という焦りを感じる人も多いと思います。
下記の記事でも、日本企業のDXへの対応の遅れや人材不足といった課題点があげられています。
その一方で、DXを進める経営者や企業担当者の意識変革についても、このように述べられていました。
もちろん、DXに関する知識や行動は、無いよりあった方が良いのは間違いありません。
しかし、なんのためのDXなのか、その「目的」を見失っては意味がありません。
すべての企業には、それぞれの企業でしかできない個性ある製品やサービスがあるはずです。また、製品やサービスの先に、実現したい夢、叶えたい世界があるはずです。
その夢の実現という「目的」のために、「手段」としてデジタルを使う。
このようなことは、おそらく、DXの教科書の第1章に書いてある内容なんだと思います。
しかし、実際に経営者としてDXに向き合う方々から直接聞いた言葉から、ブレないDXへの向き合い方の重要さを改めて感じたのでした。
※Twitterでもいろいろ書いてます
画像:https://unsplash.com/
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