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終章「輪廻」 小説『サークルアンドエコー』

 ……さて。
これが私とエリーの第三ステップ。今思うと、無茶だろってくらい怒涛の勢いで突き進んでいたね。
 運命からは逃げられない。けれど、運命を自分のものにしてしまうことはできる。そうすれば、私が運命を捕まえて逃がさないのだ、という強い気持ちになる。
 ……私たちは過激だったよね、絶対。宇宙船に忍び込んでハイジャックするなんて犯罪だもん。宇宙空間に放り出した男は今頃何をしているかしら。
時は巨大な環を描いていて、私たちが時という悪魔に抱かれているという事実は、私たちが何をしようと存在し続けるんだよね。でも、エリーと出会えたことで、それに気がつき、抵抗心が芽生えた。それは小さな勇気だけれども、どう進むか、どの空に向かうか、その選択肢の幅を広げてくれる、希望を持った勇気だった。
ありがとう、エリー。あなたに会えてよかった。あなたは犯罪者じゃない。私たちが犯罪者なの。私はあなたの罪をとやかく言うつもりはない。私たちの罪だけを振り返って笑うから。誰にだって間違いはあるもの。間違えない人生を描こうとするから、あの星みたく滅びてしまうのよ。
そろそろ、私たちの物語は終わりという名の始まりに戻ってしまう。
実は、どう終わらせようか結構前から悩んでいるんだけど、どうしようかなぁ。
 ドーナツでも食べようか、グルグルと散歩でもする? それとも、丸い形の流れるプールに飛び込んで流されるとか。
 ……フフ、わかってる。最後まで抵抗しなさいってことでしょ。死ぬまであと百年あっても、あと一秒しかなくても、死ぬまでが人生だからね。
歌を流す。これでどう? あなたにおすすめされた曲だよ。初めて聴いた時に、エリーのことを歌っているみたいだね、と私が言うと、あなたは私のことを歌っているみたいだね、と言った。
 あぁ、エリー。今頃あなたは一人で家にいるんだよね。訪ねる人さえいない孤独を生きながら、幼稚園児みたいに無邪気な夢を寂しく抱えている。諦めないで。途中で挫けないで。思い出すのよ。私たちという存在を。
 私を探して。もうすぐそこにいくから。いい曲ね、エリー。絶対にまた会えるって、曲が伝えてくれるみたい。でもそれじゃ……ううん、もういい。
始めよう。

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