見出し画像

アニメ感想『宇宙より遠い場所』


ネタバレ気にせず

南極に行く波乱万丈な物語に見せかけて、身近な悩みや、大切な人間関係に気づかせてくれる話でしたね。
ぶっちゃけ、南極である必要は特になく、北極だろうが、アメリカだろうが、東京だろうが成り立つように感じました。南極に行くことに意味があるのではなく、南極に行こう、と思うことに意味があるような。

ここではないどこかに行きたい、という玉木マリの気持ちは、客観的に見たらわがままな欲求です。でもそれが自分という人生にとってどれほど大事な欲求かということが、よくよく考えれば僕にはわかります。このまま見渡せる限りの範囲で過ごしていき、死ぬ人生を、僕は嫌だなと思います。狭い範囲の価値観を持って、生物学上の人間の一匹としてただ死ぬのはとても怖いです。マリの気持ちと完全にリンクはしないでしょうが、ここではないどこかに行きたい、その気持ちを受け止め、一歩を踏み出すマリを見て、共感できるような、一種嫉妬するような感情になりました。

共感したかと言われれば話は別ですが、他の主人公たちが持つ様々な感情は全て等身大で、そこもいいですね。展開的に泣かせにきている気満々で、天邪鬼的に泣かないぞと思うのですが、いざその場面が訪れると、予想を超える感情の雪崩が押し寄せ、特に終盤数話は毎回泣きました笑。
報瀬が日向の元友人に、一生苦しめ、的な言葉を投げかけたのは良かったですね。人を苦しめても、時が経てば、立場が変われば、テレビを使えば、安易に許して貰えると思う思考回路をぶち壊していくのが、何故か自分まで救われている気分になって泣きました。

もちろん、報瀬の母親のエピソードは悲しすぎて泣きました。唯一等身大ではないエピソードがこれだと思います。南極楽しい、というムードだけでは終わらせない深刻な問題があり、これが作品の深みを増していたと思います。コメディのノリで時間が経過することもまちまちな作品でしたが、最後、電波が通じて、自分が母親に送った千件を超えるメールが、母のパソコンに一斉に送られることの、恐ろしい程までの現実性が、冷たさを帯びた涙を促進しました。1人でなく報瀬と、部屋の外で3人でなく日向たちと、歯を磨きながら泣くわたくし、という構図でした。あれはずるいし、容赦ないですね。

一体どの層をターゲットにしていたのか、それは少しわかりませんが、こういう時に万人向け、という言葉を使うのでしょうか。
女子高生の青春もの、以上の価値があると僕は思います。
とても面白かったです。

ペンギンの出番がもっと多くてもよかったですけどね。ペンギン大好きなんで。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?