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映画感想『フォロウィング』


クリストファーノーラン監督の長編処女作が映画館でやると聞いたので行ってみました。

栄のパルコ最上階にある、センチュリーシネマという映画館でやっていました。この規模の映画館には行ったことがなかったので、マイナーな雰囲気に心が痺れました。
フォロウィングのポスターだらけです。この作品の知名度は、正直非常に低いと思いますが、やはりコアなファンは行くようで、平日の昼間ながら、僕の他に二十人弱のお客さんはいましたね。
僕はサイコパスという友人と行きました。


内容は、男が事件に巻き込まれていくサスペンスで、ノーラン監督お得意の時系列いじりが炸裂しています。全編白黒です。

ネタバレありです

率直な感想としては、いい意味で、胸糞な気分になる映画、です。というのも、主人公が巻き込まれて、結局巻き込まれたまま、手のひらで転がされて終わるという、主人公に肩入れするようにできてるわりに、主人公完敗の展開だからです。

つまらないわけではありません。バラバラにされた時系列が繋がる瞬間はわかりやすく、こう繋がっていくのか、との驚きは楽しいです。例えば、とある時系列のビルは顔に殴られた跡があるのですが、痛々しくて、いつ誰に殴られたのかと気になります。そして、綺麗な顔のビルが殴られた瞬間、ここか!と興奮する、といったような感じです。

また、ビルが少し天然っぽいところも面白かったです。挙動がおどおどと不自然だったり、盗みに入る時に食器を盛大に落としてしまったり、カバンなしで現金を持ち運ぼうと考えた結果、体に札束を貼る、などですね。人を信じていなさそうな顔をしていながら、わりかし素直に人を信用して墓穴を掘っていました。そういう部分が魅力で、作品に逆に緊張感を与えていたような気もしますが、そのせいで彼にとってのバットエンドが訪れるんですよね。

そうです、面白いけれど胸糞なんです。もちろん時系列をいじった分、実はコッブがビルをはめていた、というどんでん返しの他にもう一つどんでん返しがあって、それが終盤のオチに直結しました。コッブは、一緒にビルをはめていた仲間の女性にも嘘をついて騙しており、殺してしまうのです。結果、ビルは殴られ、犯罪を自首させられ、殺人の容疑でもほぼ有罪が確定という、情けない惨敗に終わるのです。

このコッブという男の計算通り、完全勝利です。全てが上手くいき、登場から結末まで、徹頭徹尾ずっと余裕で気取った振る舞いです。嫌な気持ちになりませんか? せめてコッブの過去や、計画の変更を途中で余儀なくされて焦る姿でもあればいいですが、ありません。

どんでん返しを、コッブの完全な計画の説明にするのではなく、ビルがコッブに一矢報いるようなどんでん返しにしたならば、楽しかったでしょうね。その映画が好きになるかは別として。

ただ、『セブン』のような結末でありながら、『セブン』程の人間関係の深みを描くことはなく、『ユージュアルサスペクツ』のような結末でありながら、『ユージュアルサスペクツ』程の軽さはなかった印象です。

文句のようになってしまいましたが、70分という短さで、2時間映画並みの満足感であることは言っておきます。楽しめた映画でした。
オッペンハイマーの白黒は本当に美しいな、とサイコパスと二人で話したりしました。

これでノーラン通のフリができますね笑
「え、ノーラン好きなのに『フォロウィング』見てないの?」と。
冗談です笑

ポストカードも貰えました。

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