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エージェントを使わずにエンジニア経験者を25名程度の採用を実現した中での反省点

2023年末ということで、今年の振り返りをしようと思ったところ、エンジニア採用 Advent Calendar 2023 企画を見つけた。そこで、本企画に便乗する形で、採用面の振り返りをしようと思う。

尚、これまで本noteを読んだことのある方々はご存知だと思うが、私自身は今年の8月から採用を離れている。そのため本noteの主題である1年程度の期間は2022年も含んでいる点に留意いただきたい。

また、本noteは振り返りを主眼に置いている。つまり、エンジニア経験者採用を実現する上で取り入れた手法や考え方、その過程で参考にしたデータ等については詳しく触れない。そちらについては、以下のnoteを参照して欲しい。

採用人数にズレがあるのは、私はエンジニア採用以外も行っており、エグゼクティブを含む、海外事業職や営業職、カスタマーサクセス職、コンサルタント職の採用も数人達成していたためである。こちらについても、同様にエージェントを使っておらず、求人媒体のみで採用している。その甲斐があり採用費用は一人あたり100万円を切っている。

※採用費用の低減化に成功したのは、主にOpenWorkのお陰である

また、スカウトメールのデータに関してだが、直近でスカウトメールの曜日別・時間帯別・求人媒体別の返信率を2,000通以上のデータ量を元に開示している媒体は、私が把握している限りない。そのため、データとしての希少性はそれなりに高いと考えている。価値を持つかは担当者によるだろうが、日々の業務に役立ったら幸いである。

採用業務を成功させる上で最大の反省点は事業理解

エンジニア経験者を1年程度で25名程度、中途採用全体で30名程度を採用したと聞いて、多いと感じるだろうか? 少ないと感じるだろうか? 私としては「思ったより採用できなかった」と感じている。つまり、少ないと結論づけている。

他社の採用担当者や人事担当者、採用コンサルタント、人材紹介会社のエージェント、RPO、ヘッドハンター達と少なくない数の話す機会を持ち、採用実績としては非常に多いと評価されたが、現職企業の採用目標数に対する成果として考えれば、やはり少ないと考えるのが妥当だと考えている。

実質的に一人の中途採用担当として稼働を開始したのが2022年の7月。最初の採用者が出たのが8月〜9月の間頃だったと記憶している。採用に動いてから内定承諾を得るまでのリードタイムとしては、一般的なペースと思われる。

一方で、スカウトメールの送付自体は2022年1月頃から実施しており、半年程度の助走期間があった。その点に鑑みれば、7月〜8月上旬頃に1名採用できていても不思議はなかったと考えている。採用に関する施策を始めたとき、その成果が出てくるのが半年後というのは珍しい話でないが、納得感はなかった。

助走期間があった割には、立ち上がりに時間がかかったと感じていた。そもそも8月に就職活動を実施する求職者が少ない点に鑑みて、7月〜8月上旬に採用者を出せなかったことが、2週間〜3週間程度の遅れに繋がったと考えており、この点を以て失敗したと感じざる得ないのである。

なぜそうした立ち上がりの遅れが出たのか。理由は明白である。私の事業理解があまりに不足しており、結果的にマッチングを上手く機能させられなかったためである。

採用とはマッチングである

過去のnoteで度々伝えているが、採用とはマッチングである。採用の成否を分けるのは、採用者(企業)側と候補者(求職者)側の希望がマッチするかどうかであり、それ以上でもそれ以下でもない。

スカウトメールにしたところで、その成果を分けるのは、やはりマッチングである。世の中にはスカウトメールのテキストがスカウトメールの返信率といった成果に直結するといった妙ちくりんな話をする者がいるが、大いなる勘違いである。

こと上記2点について異論を唱える者は少なくなかろうが、明らかに認識の齟齬が生じていると思われる。とくに現在において採用の成果が芳しくないのであれば、一度冷静に考え直すことを勧める。思考のズレは、成果を大きく左右する。

少しスカウトメールについて踏み込むと、やはり過去のnoteで伝えているが、スカウトメールの返信率を左右するのは、テキストではない。マッチ度である。”適切な候補者”に”適切なタイミング”で送付できれば、テキストがどうであろうと高確率で返信が来る。その結論に至った経緯は、先ほど紹介した記事で実例を元に説明している。

もちろん、その後の遷移もやはりマッチ度が影響する。それでは、高いマッチ度を獲得するには、どうすれば良いか? 単純な話である。数多くのレジュメの中から、候補者の希望等も加味しつつ、自社にマッチしそうな人物を見つけ出し、先方の意向と摺り合わせれば良いだけである。

その過程で、「やはりマッチしないから選考(内定)を辞退する」という候補者は現れるだろう。だが、そうした候補者は、どの道入社まで至ったとしても早期に離脱する。そう考えれば、選考の中で離脱して貰った方が、お互いにとってポジティブである。

「せっかく選考に乗った(内定した)、自社にマッチしそうな人物を容易に手放すのか」と思った読者もいるかもしれない。あくまで私見になるが、その考えを持つならば、採用担当者としての考えが足りていないと考える。理由は幾らかあるが、最も大きいのは、”目的を見失っている”だ。

”採用=マッチング”を理解できていない採用担当者は、採用について考えが足りていない

過去のnoteで何度か伝えているが、採用担当者が担う業務の目的は、採用ではない。採用という手段を使って会社を成長させることである。つまり採用はあくまで手段に過ぎない。目的と手段を履き違えている採用担当者が多く見られる実態は、心から残念に感じている。

会社を成長させる目的を考えたとき、自社にマッチしない候補者を採用することは、明らかに誤りである。明確に失敗と言って良い。昨今は長期勤続が目の敵にされる時代だが、会社の立場に立てば、早期離職は損失以外の何ものでもない。その損失について、採用担当者は多分に責任を持つ必要がある(明らかな本人都合、会社都合についてはその限りでない)。

私も30名程度を採用した中で何名か早期離職者が出してしまっている。本件について反省する点は大いにあったと感じている。また、その点について会社・入社者双方に少なからず責任を感じている。今後採用に携わる機会はないと思われるが、行うとしたら、反省点は大いに生かしたいものである。

巷では「内定承諾率を高める方法」などと謳い文句を並べている人々が見られるが、そもそも内定承諾率を高めるような意思決定を導こうとする時点で、採用は失敗しているのである。入社意向度を上げるなどという考え方は、明らかに採用担当者の職責に対する意識が抜け落ちている。

職責に対する意識が抜け落ちるような人間は、その職務についての思考が明らかに足りていない。その一点を以てしても、候補者の意思決定を内定承諾に導こうとする人間には、採用担当者として必要な能力が備わっていないと考えられる。ところで、ここまでの内容を踏まえると、”事業理解”というワードの重要性に何となく思い当たるのでなかろうか。

事業理解こそが採用を成功させる近道である

採用担当者の多くは自社の説明を担当するが、自社の事業について詳細に理解できている採用担当者は極めて少ないと感じている。よく「採用はその会社の営業が担った方が良い」と言われるが、正しい考えだと思う。私自身、そう強く感じている。

確かに会社の説明をするだけならば、事業理解までは必要ない。だからこそそこまでしっかりと行えている採用担当者が少ないのだろう。しかしながら、採用の本来の目的である、会社を成長させる点に鑑みれば、事業理解が不要なわけがない。

「どんな人間を採用すれば、この会社を成長させることができるのか?」

読者の中で、この問いに明確な人物像を説明できる人はどれくらいいるだろうか? 改めて問われてみると、具体的な人物像までは思い浮かばないのではなかろうか。良くて求人に記載されている要件や社内の誰かが言っていたようなスキルセットを持った人物像くらいでないだろうか。

私もそうだったのである。だからこそ、採用業務において初速を出せなかった。元々エンジニアでなければ採用経験者ですらない私は、自社の採用要件程度しか分からなかったのである。おかげで、スカウトメールを送ろうにも、候補者選びは他部門の方々に任せざるを得ず、面談に出てもろくな話ができなかった。

候補者選びや候補者との話がある程度できたのは、実際に他部門の方々と対話を重ね、社内の多くの情報を獲得してからである。お陰で、最終的に一定程度現場に頼らず、カジュアル面談で候補者から高い満足度を得られるようになった。一方で、事業理解はとうとう異動するまで不足したままだった。

異動後、これほどまでにも事業について理解できていなかったのか唖然したものである。今もどれだけできているか定かでないが、少なくとも採用担当者だった頃よりはマシになっていると思う。

初速が出なかったこと、また思ったよりも採用数を出せなかったことは、この事業理解面が不足していた点にある。逆を言えば、事業理解さえ早期に実施できれば、適切な候補者選定や面談・面接を通じたマッチングの高度化を速やかに行えるようになり、採用数はもう少し増やせたと考える。

自社の事業がどういったもので、その事業をドライブさせるためにどのような人材を欲していて、そうした前提を元に候補者を探し、その中で貴方という候補者と対峙している。そうした説明ができなければ、採用の成功など生み出せない。

ちなみに、この事業理解は何も自社の事業理解だけを指していない。当然ながら、採用担当者は他社の事業についても理解しておくべきである。なぜならば、他社の事業理解なしに、まともに候補者選びなどできよう筈がないからである。

そうしたことを何も分からず、右から左に人を流すだけの仕事を行うのであれば、採用担当者など不要である。間違いなくRPOを利用した方が、より会社にインパクトを出せる。最近noteで書いたが、生成AIが採用にもたらすインパクトは計り知れない。

ともすると単純な作業者になってしまいがちな採用担当者だからこそ、採用に資する事業理解に手を抜いてはいけない。手を抜けば抜くほどに、生成AIやRPOに存在価値を奪われる。

若干尻切トンボ気味になってしまったが、本noteはここで終わろうと思う。この辺りの話は、今後機会を見てもう少し具体的に書けたら良いと考えている。

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