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いまこそコロナのパンデミックを振り返る

はじめに

新型コロナウイルスが武漢で発見されたのは2019年。
そして楽観的な見方を覆した2020年以降、世界はパンデミックに見舞われました。
2023年が終わろうとしている今、私たちは、このパンデミックをどう見るべきなのでしょうか?
そんな大きな問いについて、被害、フェイクニュース、世界の対応、歴史といった広い観点から、できる限りわかりやすくまとめてみました!

新型コロナウイルスの被害について

被害の推定


新型コロナウイルスのパンデミックは、2019年末に中国の武漢で発生し、その後世界中に急速に拡散しました。
WHOのデータに基づくと、現在まで、新型コロナウイルスによる死者数は約700万人にも上ります。
とんでもない数の方が亡くなったことは確かですが、私たちは、この数をどう見れば良いのでしょうか。
これについては、後ほど触れたいと思います。


ワクチン接種の効果

ワクチン接種をした方は多いと思います。
日本では、1億人を超える人々がワクチン接種をしています()。
その結果はどうだったのでしょうか?

結論を言えば、2020年末から各国で開始されたワクチン接種は、死者数の減少に大きく貢献しました。
例えば、米国では2021年のワクチン接種開始後、高齢者を中心に死亡率が顕著に下がりました()。
また、イスラエルでは、高いワクチン接種率を背景に、重症者数と死亡率が大幅に減少しました()。

何より驚異的だったのは、その効果というよりも、その開発・接種のスピード感です。
通常、ワクチンの開発には10年はかかると言われています。
ところが、今回のパンデミックでは、新型コロナウイルスが数週間で特定され、その後、1年足らずでワクチンが完成されたのです。
こんなことは、歴史上、初めてのことでした。


コロナ禍とフェイクニュース


一方で、コロナ禍は、「フェイクニュースは命にかかわる」という大きな一例であり、フェイクニュースの危うさを浮き彫りにしました。

特にワクチンに関する誤情報は、社会に大きな混乱をもたらしました。
例えば、SNS上で広まった「ワクチンによるDNAの変更」や「マイクロチップの埋め込み」「妊婦への影響」などの陰謀論は、ワクチン接種率に影響を及ぼした可能性が十分にあるでしょう。

科学的知識の普及と理解の重要性が強調された一方で、専門家からの情報が一般大衆に到達し、理解されるまでのギャップが明らかになりました。

人間は、科学的知識や詳細なデータではなく、「ワクチンは危険だ」というわかりやすい一言の方にひきつけられやすいです。

私たちのルーツは、科学の理解者ではなく、あくまでも狩猟採集民であり、私たちの脳は疫学ではなく、狩りに適したつくりになっています。

怖いのは、少なくない人が、「疫学の専門家」ではなく、「疫学素人の陰謀論系YouTuber」や「怪しいSNSインフルエンサー」を信じてしまった状況です。
これは、非常に大きな教訓だと思います。

コロナ禍の科学的対処と政治的失敗

では、このコロナ禍を、国や世界といった規模で見たら、どのような見方ができるでしょうか。

私は、歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏が強調するように、「科学の成功」と「政治の失敗」という対比による解釈が重要だと考えます()。

科学的対処の成功


科学界は、ワクチン開発の速さで歴史的な成果を達成しました。
過去のパンデミック、例えば1918年のスペイン風邪では、ワクチンが存在せず、第一次世界大戦自体の死亡者数をはるかに超える犠牲が生まれました。

それに対し、今回はmRNAワクチンなどの新技術を駆使して、わずか1年足らずでワクチンが開発されました。これは、エボラやH1N1インフルエンザの際の対応と比較しても、顕著な進歩です。


政治的失敗


しかし、世界的なワクチン分配の不均等は、国際協力の失敗を示しています。
例えば、一部の先進国ではワクチンの余剰が生じる一方で、多くの発展途上国では供給が不足しています。
ウイルスに国境はありません。どこか1か国でも救えなければ、ウイルスは残り変異のリスクも高まり、世界全体が危険に陥ります。
そんな中、トランプ時代のアメリカを代表するように、世界中で「自国ファースト」の風潮が広がっているように見えるのは、極めて危うい事態であると言えます。

私たちに必要なのは、分断ではなく、国際的な協力なのです(詳しくはこちら)。


総括


新型コロナウイルスのパンデミックは、世界に多大な影響を与えました。
今回の記事では、死者数、ワクチン接種の効果から、フェイクニュースの問題、そして科学的対処と政治的失敗を詳細に分析しました。

今回の危機に対する人類の反応は、将来の公衆衛生危機に備えるための貴重な教訓となります。
科学的な進歩と国際協力の必要性を、この新しい歴史が我々に教えています。



【加藤の詳細について】

―加藤将馬:著者、講演家、幸福学&ビッグヒストリー研究家
・加藤将馬のウェブサイトはこちら
【著書の紹介】
宇宙と人類、138億年ものがたり ―ビッグヒストリーで語る 宇宙のはじまりから人間の未来―
紙の書籍:1260円→電子書籍版:0円(変更の可能性あり)


本書は、宇宙と人類の歩みを考察する一冊です。
「宇宙が生まれた頃はどのような姿だったのか?」「なぜ19万年間も狩りをしていた人間は、今では宇宙進出を始めているのか?」「気候変動やAIなど、これからの人間社会はどうなってしまうのか?」といった大きな問いについて説明します。
 そして、本書の最大のテーマは、「人間は文明を発達させて地球の覇者となったのにもかかわらず、なぜ世界には数多くの自殺者がいて、不幸が消えていないのか」というものです。
 138億年にわたる壮大な物語を堪能していただくと同時に、人間社会のあり方にまで思考を巡らせてもらうことを本書では目的としています。そして、私がなぜ本書を書き、ビッグヒストリーを通じて何を伝えたいのか。ぜひ、最後まで見届けていただけると幸いです。


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