見出し画像

手塩にかけて育てた大工が辞めるんです。に根本解決でお答えします。

先日、全国工務店協会の代議員総会に出席してきました。全国から各地の代表となる工務店の経営者が一堂に会し、国交省や林野庁と一緒になって、住宅産業の根底を支える木造住宅の施策を考え、実装していく組織です。

残念すぎる報告が多すぎる

私は長年、自社で職人の育成を行いながら、同時に「職人起業塾」なるイントラプレナーシップの研修事業を行っており、全国の工務店の現場実務者を預かって、職人育成のサポートや研修を行ってきました。全国代議員総会に出席するとそこに参画頂いた旧知の経営者も多く、以前私の研修を受講した塾生たちのその後の成長活躍を伺うのが1つの楽しみになっています。
今回、私が衝撃を受けたのは、大活躍していた若手の大工や施工管理の卒塾生が退職したとの報告を複数の経営者から相次いで受けたことです。手塩にかけて坊主から育てた大工や現場実務者が一人前になり、やっとこれから活躍してくれるとの期待を持った途端に独立や転職すると会社を去っていく、悲しみと憤りが混じった複雑な面持ちで皆さん残念な報告を私にしてくれました。

ケツの穴の小さい経営者に未来無し

私が主宰している研修は職人起業塾という名を冠したイントラプレナーシップ(社会起業家精神の醸成)研修です。起業しても十分やっていけるほどの能力や思考、経営者感覚を身につけてもらう研修は当然、社員の独立起業へと繋がる可能性を秘めています。以前、研修の紹介を行うセミナーで「職人に変な知恵をつけたら独立してしまうやないか!」と怒っていた経営者がいました。その際、私が答えたのは「言われたことを何も考えずに行うだけの作業員を増やしたところで会社の発展はないし、そんな職人ばっかりになれば余計に若者はこの業界に入ってこなくなる。職人は絶滅しますよ。」という反論です。
職人は道具じゃない。一人の人として最大限のパフォーマンスを出力するべきだし、誰もがもっと付加価値を生み出す才能を持っているというのが私の持論です。成長させると独立してしまうからキャリアアップをさせないとのケツの穴の小さな経営者は人を人として見ることなく、目先の自利を追うのみ、先行きは知れているとしか思えません。

コスト意識が生み出す盲目と課題

今月、とあるリフォーム団体の会合でセミナー講師を務めることになり、先日、トークライブを一緒に行うメンバーとの打ち合わせがありました。もちろんテーマは職人育成、人材教育です。私が推し進める職人不足問題の根本解決のアプローチは職人の正規雇用が大前提であり、入り口です。しかし、リフォーム業界では自社で職人を雇用する、育成する会社は少なく、研修会に出席される熱心な経営者が集まる場ではそれなりにいますが、全体で見れば皆無と言っても大きく違いません。
職人の正規雇用を行うにあたって、まず費用対効果で試算をすると、絶対的に外注の職人に委託する方が安く上がります。それは、職人の所得も地位もが低いまま定着してしまっているからに他ならず、圧倒的な職人不足を生み出している根本原因です。
職人不足に危機感を感じていると言いながらも、目先の損得勘定を乗り越えて人材育成に先行投資しようとする経営者が圧倒的に少ないのにはほとほと呆れてしまいますが、悲しいかなそれが建築業界の現実です。

職人育成のコストは職人が生み出す付加価値で賄う原則

実際、外注の安い(福利厚生のかからない)職人を使って工事をするのが悪しきスタンダードとしてどっかりと定着している上に、競争が厳しく、コストダウンを重ねている状況で、わざわざ仕事も出来ない見習いの職人を正規雇用して育てるのははっきり言って高いハードルです。結局のところ、損得勘定、お金の問題がその根本にある以上、収益構造の改革が必要になります。
そこで私が自社で取り組んできたし、全国の同業の職人を預かって行ってきたのが、単なる作業員ではなく、現場で付加価値を生み出す人材育成であり、イントラプレナーシップの研修です。また、同時にキャリアパスの構築をサポートすることで、頑張った者が報われ、やりがいを持てる職場環境への整備を提案してきました。これをセットで行わなければ、人材育成の意味が無くなるとの注意喚起と共に。
職人起業塾に参画頂いた企業には、キャリアパス・評価制度の運用までがセットだとお伝えしてきたし、全国でそのワークショップも開催してきました。人事制度の改革、運用を実装レベルまで推し進められる経営者は数少ないですが、おられますし、そこでは離職の問題はほぼ起きていません。
逆に、私が預言した通りこれが整わないとある程度成長した職人達はやっぱり離れてしまいます。

完全なる負のスパイラル

考えてみれば、手塩にかけて育てた職人が辞める、との悲しく厳しい課題の原因は至ってシンプルです。厳しい言い方になりますが、その会社が職人に未来を提示出来ていなからに他なりません。
現在、職人不足は喫緊かつ重大な国家レベルの大きな課題です。絶対になんとか手を打たないと、今活躍している50代〜70代の職人が引退すれば、新しい建物の建築が出来なくなるだけではなく、災害の復興も対策も、建物の維持管理も出来ない状況に陥ります。そしてそればもう10年もかかりません。
しかし、業界全体が激しい価格競争の渦の中であり、職人を育成できるビジネスモデルになっておらず費用の捻出が難しい。そして、よしんばそれを乗り越えて職人の正規雇用、育成に踏み込めても職人に明るい未来を見せる人事制度を構築しなければ、せっかく育てた職人は去っていく。そして、独立すると出た職人の大半は、一人親方の下請け大工となり、不安定極まりない働き方に陥ります。そして、子供に職人のような不安定で先行きの見えない仕事に就くな、と言うようになります。完全に負のスパイラルとしか言いようがありません。

非常識を常識にするしかない

国交相が20年近く前から国家プロジェクトとして巨額の費用を注ぎ込んで取り組んだ大工育成プロジェクトが全く成果を挙げなかった現実を見てもこの問題の難しさが分かりますが、小手先の対処では絶対に解決出来ません。根本的な解決に向かうにはこれまで、職人の世界で考えられなかった、非常識とも言える人材育成のシステムの構築を全国津々浦々に普及させるしかありません。そこで実現されるべきは、これまで低すぎた職人の地位の向上であり、現場作業員という単なる肉体労働者ではなく、豊富な現場経験を有するプロフェッショナルの育成であり、経営感覚を身につけたマネジメント人材の創出です。若者から忌み嫌われる低所得、不安定、怪我や病気で職を失う不安定な職業から、安定した満足できる所得を得られ、引く手数多の高いスキルを身に付けられる職種へと変容させるしかありません。
要するに、技術だけを身に付けさせるのではなく、高い人間性を兼ね備え、知識を身につけた証明として資格取得を推奨し、マネジメントやマーケティングの基礎理論を体得させる、イントラプレナーシップの醸成を行う教育機関へと変容する必要があるのです。

仮説ではなく、実証済みの非常識理論

この面倒で、ややこしい、しかし確実に根本解決に繋がるシステムをトータルで提供しているのが、私達が全国に広げているマイスター育成プロジェクトです。もちろん、根本解決は一朝一夕で叶うことはありませんが、5年のスパンで考えれば、未来に希望が見出せる成果は必ず手に入れることが出来ると断言します。それば、このシステムは単なる仮説ではなく、私が20年以上の長きに渡って職人育成を行い、自社職人の強みを生かしたビジネスモデルを構築してきたからに他なりません。
一介の大工から起業して25年間、当時、気でも狂ったのか、と言われた職人の正規雇用を継続し、無宣伝、無広告、無営業の職人と女性設計士しかいないビジネスモデルを構築出来たのは、単に職人達の実力です。それは、誰にでも無限の才能があり、その才能を発揮させることができれば、難しい課題を解決することが出来る証左です。
本当に未来を見つめ、職人育成の必要性を感じている方は是非一度、私達にコンタクトしてみて下さい。負のスパイラルからの脱出をお手伝いします。

_________________

繋がって下さい!






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?