増え続けるフリースクールの課題と職人育成高校という新たな選択肢
「お盆休みを利用して訪問させていただいてもいいですか?」と連絡があったのは山梨県でフリースクールを運営されている村松さんから。先月、山梨で開催されたソーシャルカンパニーフォーラムに出席した際、懇親会の席でほんの少し、私たちが現在進めている職人育成の高校のプロジェクトの話をしたのが印象に残っていたとのことで、詳しい話を聞いてみたいとご連絡を下さいました。夏休みが終わると本格的に2023年入学の学生の募集をスタートさせる私達にとってはフリースクール等の学歴マイノリティに対するサポートを行われている事業所や団体との情報交換や連携、ネットワーク構築は非常に重要な活動です。渡りに船とばかり喜んでお迎えしました。
奇跡のタイミング
ちょうど、お盆休みの真ん中で、弊社のテラスにてその彼も入会されている経営実践研究会で一緒に活動している関西でのチームメンバーとBBQをしながら事業の構造化についての勉強会をすることになっており、その日にタイミングを合わせてご来神いただくことにしました。折しも、その日は神戸でフリースクールを営まれている「さとのわ」さんと私たちでコラボして子供大工のDIYイベントの開催日でもあり、午前中はそのイベントを視察に行き、昼からは勉強会にご参加いただくことにしました。奇跡のタイミングが重なったことで、当初の目的だった職人育成の学校プロジェクトの詳細だけではく、活発な活動を行わえているフリースクールとの繋がり、また事業構造化についての基本的な考え方と、村松さんの期待以上にお応えできたのではないかと思っています。
増え続けるフリースクールが抱える悩み
現在、日本中の小中学生で不登校になっている子供の数は33万人と言われます。現在のテスト重視の学校教育に意を唱え、圧倒的に増え続ける学校の枠組みや学歴社会からこぼれ落ちる子供たちをなんとか救いたいとフリースクールを開設される事業者が全国的に増加しています。そしてその殆どが子供達をサポートしたいとの想いに突き動かされて事業をスタートさせられるのですが、運営を持続可能にする構造、マネタイズをしっかりと計画に落とし込み実現されている事業所は非常に少ないと言うのが私の印象で、山梨からお越しになった村松さんも同じ悩みを抱えておられるとのことでした。想いだけでは事業として成り立たないのを実感されておられ、収益をもたらす価値の創造について模索されているように見受けられました。
出口戦略こそ本質的価値創造
また、フリースクールを運営するにあたり、子供を預ける親御さん等から強く要望されているのは出口の選択肢を増やして欲しいとの声だとのことでした。子供達に楽しんでもらえる、テストの点数にとらわれない幅広い教育を提供する自由なスタイルの学校と言うだけではなく、やがて子供達が大きくなった際にどのように社会に出て活躍出来るようになるのか、自立して生活できるようになるのかまでを含めて考えねばならないのは大きな悩みの種とのことでした。学びのための学びはなく、目的があってこその学びであり教育であるべきなので、当たり前ではありますが、学校を卒業してからの進路を提示するのもフリースクール事業者の責任の範疇になります。そもそも、学校という集団生活、社会に適応仕切れなかった子供達を如何にして社会に送り出すかがフリースクールの役割でもあり、それが担保できれば大きな価値を生み出すことも可能だと感じた次第です。
希少価値を生む出すマーケットへのセグメント
フリースクールを主宰する方が皆さん声を揃えて口にされる、学歴マイノリティーの子供達に学歴社会での価値観に囚われることなく、隠れた才能を発揮して、生きがいを持って安心して暮らせる社会にしたい。とのの想いは私達も全く同じです。そして、現実としてお金が価値の中心に存在している資本主義社会の世の中では、個々の才能をお金として価値転換してこの世知辛い世の中で生きていく糧を得られるようにしてあげなければなりません。価値の生み出し方、お金の稼ぎ方は様々ありますが、市場の原理を考えるとニーズが高く、供給が少ないカテゴリーの方が飽和状態の市場よりも有利なのは歴然です。その意味で、圧倒的な若者不足、人材不足に陥っている建築現場でのモノづくりの世界は学歴マイノリティーの若者にとって大きなチャンスがあると考えています。村松さんも山梨で私の話を聴いてその部分で直感的にチャンスを感じられたのだと思います。
職業人としてのスキルを教え育む機関
私たちが現在進めているプロジェクト、2023年度からスタートする未来職人高等学院(仮称)は3年間の通信制の学校で社会人的基礎からコミュニケーションスキル、志を持つ意味と意義を考え、日々の暮らしの中で実践しながら、モノづくりの技術と高校卒業資格を取得できる高校です。そこではテストの点数で評価されるような事はなく、身の回りの人に喜ばれることから価値創造に取り組み、その輪を徐々に広げることで社会にとって有意義な人材に育ってもらうことを目指します。今までの建築現場でのスタンダードだった、若者がこの業界に入ると職人見習いとして現場に放り込まれて見て覚えろ的な誰も「教え育む」ことをしない悪習を断ち切り、3年間、教官と講師とメンターがついて伴走しながら成長を見守るシステムの構築を目指しており、受け入れ先の事業所のガバナンス整備を含めてこれまでの職人育成とは全く違う画期的なスキームを組み立てています。フリースクールの出口の選択肢としては非常に親和性が高いと思っています。今回、山梨からわざわざ村松さんに訪問頂いて、私たちの職人育成高校のプロジェクトとフリースクールの事業者との共通の課題や親和性を改めて強く感じることができました。9月以降はまずは関西一円でフリースクールや児童養護施設、就職支援団体などにモノづくりの面白さを知ってもらう出張ワークショップのボランティアの取り組みもスタートさせます。少しでもご興味がある方はお気軽にお声がけ下さい!
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未来職人高等学院(仮称)の詳細についてはこちらのマガジンをご参照ください。
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