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思想と実践

先日、「未来ジャーナル」と言う建築系動画配信メディアの取材を受けて15分番組を一気に4本撮りする機会がありました。短い時間に小割にしてインタビュー動画を配信すると言う手法は要点がぼやけがちなロングインタビューに比べて1つずつのコンテンツが明確になり非常に良いやり方だと感心しました。主宰されているランリグ社の渡邊社長、さすがです。建築業界で大きな影響力を持つ最大手メディア、新建ハウジングの三浦社長のアテンドで収録された4回それぞれのテーマは①共感型工務店を標榜する株式会社四方継の成り立ちと取り組みについて、②才能主義で現場実務者の意識改革、組織改革のサポートをしている一般社団法人職人起業塾についてと建築業界の職人不足問題、③建築業界における共感型ビジネスモデルの構築について④私個人と私が代表務める2つの事業の今後のビジョンについて。と、私が長年建築業界で感じてきた課題とその解決のために取り組んでいること、これから目指す世界観について気持ちよく話させて貰いました。(笑)

思想&実践

そんな収録を終えた後日、私のSNSの投稿に三浦社長が書き込んでくれたコメントが非常に深い意味合いを持っているように感じられ、はっとさせられました。そのコメントは「ありがとうございました!思想&実践の話で、リスナーさんの参考になると思います。僕も学びました。」とのことで、私としてはインタビューの間中、実践の話を延々とした覚えがありましたが、思想の観点で話したつもりは全くありませんでした。なるほど、と改めて気付かされたのは思想と実践の親密な関係性です。そもそも、日常生活で「思想」と言う言葉を使うこと自体がほとんどなく、私自身も意識したことがありませんでした。ちなみに、思想の定義はこちら、

し‐そう〔‐サウ〕【思想】

[名](スル)
1 心に思い浮かべること。考えること。考え。「新しい思想が浮かぶ」
「普天下の人をして自由に―し」〈中村訳・自由之理〉
2 人生や社会についての一つのまとまった考え・意見。特に、政治的、社会的な見解をいうことが多い。「反体制思想を弾圧する」「末法(まっぽう)思想」「危険思想」
3 哲学で、考えることによって得られた、体系的にまとまっている意識の内容をいう。
出典:デジタル大辞林

哲学と言う言葉がなかなか馴染みづらく使いにくいのと同じように、私の思想は〜の文脈で自分自身が考えていることや思ったことを語るのはなかなかハードルの高い言い回しであり、実際、私が長年生きてきた中で多分一度も使ったことのない言葉でした。それを自分を評した言葉で使われたのにはとても新鮮な印象を受けました。

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思想家ではなく実践家

私は、自分自身のことを思想家だと言うつもりはサラサラありません。しかし、起業してから20年以上、職人の正規雇用と育成にこだわった工務店と言う実業と、そこで蓄えた知見をもとに一般社団法人職人起業塾で全国の同業他社への研修事業や組織改革のサポートを行っていることに対して、実践家であると胸を張って言い切れます。今となっては人前で話すことも少なからずあり、セミナーや講演の講師の依頼を受けることも増えましたが、私はあくまで講師業の先生ではなく、現場を知り尽くした職人であり、20年以上職人育成を行ってきた工務店経営者であると言う立場を今も頑なに守っています。実践こそが私の強みであり、1番の経営資源になっていると言っても過言ではありません。三浦社長のコメントでハッと気付かされたのは、思想とは実践で培われるものであるということです。本来ならば、まず初めに理論や概念、思想があり、それを行動に移すことが実践であるはずです。私のような学のない職人上がりの経営者が、そもそも思想などという高尚なものを持っているはずはないのですが、実践を繰り返す中で徐々に確かなもの、信じるに値することが見えるようになり、それらを元にまた実践を積み重ねていく中で思考がまとまるようになり、人の目に思想を持っているかのように映るようになるのだと実感した次第です。

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実践が哲学を醸成する

私が大好きな小説の一つに出光興産の創業者出光佐三氏をモデルにした「海賊と呼ばれた男」があります。小説かけてなく岡田くんが主演を張る映画もとても良かったのですが、その元ネタとしての位置付けの水木楊著 (元日本経済新聞論説主幹)の「反骨の言霊」なる出光佐三氏の伝記的な書籍が最も好きで、財務諸表よりも社員を大切にした勝負師の半生を活写し、その熱き言葉を披瀝したこの本には経営者としての在り方を学び、大きな影響を受けました。その本の中にあった「学ぶことなくただ闇雲に行動に走るのは行動バカである。」「概念を実践で裏打ちすることで知恵や哲学が生まれる。」という言葉はずっと胸に刻み続けており、私が主宰する私塾「継塾」や一般社団法人職人起業塾の研修でも繰り返し伝え示しています。
今は亡き、私がメンターとして慕っていた先輩経営者は私が40代後半に差し掛かったときに「男は50歳になったら哲学を持て。」とのアドバイスをくださいました。その当時、哲学という言葉自体に無縁だった私は、さてどうしたものかと途方に暮れましたが、今になってその当時からの流れを鑑みると、(無学だっただけに)貪欲に学ぶ姿勢、それを継続する習慣と、学んだことを実直に実践に落とし込むことを繰り返すことで哲学も思想も自然に醸成されてくるものなのだと腑に落ちます。まさに出光佐三氏が遺された至言通りであり、実業に向き合い、実践人として年月を重ねてきた結果、第三者から見た時に思想を持って事業に取り組んでいるように映るのだと感じた次第です。世の中はすべからず表裏一体と言いますが、思想と実践とは対の言葉のようで実は一体なのだと気付かされた三浦社長のコメントでした。いい気づきを有り難うございました。感謝いたします。

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哲学を生み出す実践研修を行っています。
九州(博多・鹿児島)での共感型、自立循環型組織へのシフトをサポートするオープンセミナー&ワークショップ受付中。



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