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職人進化論とノーマーケティング

はじめまして。

初めてnoteに投稿します。神戸と台北で建築会社と地域コミュニティー事業、あと、一般社団法人職人起業塾の塾長(理事長)として職人の社会的地位向上をミッションに新しい時代に即した職人のキャリア構築のサポートをしています。髙橋剛志と申します。元大工です。

私は若かりし頃、学歴社会からドロップアウトしてどうしようもないクズな暮らしをしていた時期がありまして、ひょんなきっかけと、人とのご縁に恵まれて、真っ当な人並みの人生を歩めるようになりました。本来なら、とっくの昔に地獄に落ちているべき人間ですが、大工から起業して工務店や飲食業、鍼灸院など何とか20年経営を続けることができています。それは多くの先輩に愛情たっぷりにご指導頂けたおかげだと感謝しており、次世代を担う若い世代のにご恩送りをしたいと3年前に一般社団法人を立ち上げて、職人の意識改革と職人を育成する会社の制度改革のお手伝いをしています。

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職人の付加価値創出がミッション

今回、noteを使って記事を書くことになったきっかけは、これまで11年間毎日更新してきたブログ「職人進化論」がサーバーの不具合で閲覧できなくなるトラブルが相次いだ為、緊急避難と引越しを視野に入れて以前にアカウントを作っていたnoteを使ってみることにしました。どれくらいの頻度でアップするかは今の所まだ未定ですが、原理原則系のマーケティング理論を切り口に自律循環型ビジネスモデル構築のための思索を書き連ねて行きたいと思っております。よろしくお願いします。

職人の地位向上に欠かせないのは他業種に比しても見劣りしない安定的で豊かな暮らしが可能な所得と保証です。これが叶わなければ、若者は職人になりたいと思うことはないし、今頑張っている職人も次第に離れてしまいます。要するに、職人はもっと稼げるようになるべきで、その為には職人自身が今までの働き方を変えて付加価値を生み出せなければなりません。その付加価値の生み出し方(マーケティング理論)を私は実業で実証しながらこのブログで情報を発信しています。

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先送りされ、他人事の喫緊の重大な問題

現在の建設業界は圧倒的な職人不足に陥るまさに瀬戸際にあります。その最も大きな原因は、21世紀の先進国とは思えない、未だに多くの職人が日給月給の日雇い労働者的な労働環境にいる現状であり、若者から3Kと忌み嫌われ、その親御さんからは日雇い労働者にする為に学校に行かせたのじゃない、と泣いて止められる職業として定着していることにあります。20年前から減少し続けている職人の数は今後更に減り続け、若者の建設業離れは加速して全国的に職人不足が深刻な影を落としはじめています。(下のグラフは大工の人口)

建設、建築というモノづくりの事業は工事が出来なければ売り上げになりません。職人不足は日本の一大産業である建設業を衰退させる非常に深刻な問題で、本来、業界全体として取り組まなければならない喫緊の課題なのですが、職人の育成にはコストがかかる、この20年間、職人育成に取り組んだ事業所が圧倒的に少なく、ノウハウが無い、目先の利益を優先する経営者が多いなどの理由で一向に進んでいないのが現状です。

大工の人数の実績と予測結果

イマカネジブンの経営者ばかりの業界

長年、建設業界で生きてきた私が率直に感じるのは、「よーするにカネの問題やろ。」ということです。建築会社の経営者に訊くと、全員が職人不足に危機感を感じていますし、若者に建築業界に入職してもらえるようにしなければ、いくら集客をして契約を結んでも一向に売り上げが上がらない状況になる事は皆さん認識されています。「で、職人の育成に取り組まれますか?」と訊ねても殆どの人はお茶を濁してしまいます。その理由は、要するにカネだと思うのです。

現在の建築会社、工務店などは殆ど職人を正規雇用していません。外注、業務委託先として抱えている会社は多くありますが、忙しい時は雇用して、少し工事が少なくなると知らん顔で給与を払わないのがスタンダードで、もちろん厚生年金も社会保険もかけません。人員の在庫となる正規雇用のリスクから逃れて都合良く道具のように職人を使う会社が殆どです。厳しい言い方をすると、今だけカネだけ自分だけ思考の経営者、事業者ばかりだから職人になり手はいなくなったのです。

職人自身の問題

しかし、問題は雇用側だけではありません。他業種に負けないくらいの待遇を得るには、雇用される側もそれに見合った付加価値を生み出す必要があります。決められた図面通りに作業を行うだけの職人側にも大きな問題があります。私は大工出身の工務店経営者なので、私の会社は半分が大工の社員です。(あと半分は女性の設計士)弊社の大工の定義は、現場での作業はもちろんですが、着工前からお客様の窓口として営業担当の役割も担いますし、建築士か施工管理技士の資格を取得して現場全体の施工管理もしてもらいます。他にも毎日の現場での進捗をHPのブログにアップしたり、アフターメンテナンスで年間1500件近くの顧客先を巡回したり、工事を行なっている近隣へのコミュニケーションも大工の役割です。ただ、現場作業をこなしているだけでは、世間の大工並みの給与しか取れませんし、年老いて作業の生産性が下がってくるとその分、給与も減ってしまうことになります。現場作業以外のキャリアを積むことで、高い付加価値を生むことができますし、安定した所得を手にすることができるようになりますが、現場作業以外の業務に取り組んで、資格取得をしてキャリアを身につけようという職人は非常に稀なのが一般的です。

ちなみに、全国平均で現在の大工の日給のアッパーは2万円くらいです。月に25日働いて50万円、年収600万円ですが、自分で車や道具を買って毎日ガソリンを焚いて高速道路を走り駐車場に停める。保険も年金も自分で掛けますので月に15万円くらいは経費がかかります。実質の年収は400万円そこそこで、これが10年修行して技術を身につけた職人の最高所得というのが現実で、同じ付加価値しか生み出さなければ同じ稼ぎしか手にする事は出来ません。これが安すぎるとの議論は当然ありますが、通り値として流通している以上、簡単に単価がアップする事はないのです。これではあまりにも夢がない職業です。職人は、未来を見据え意識を変えて働き方を見直す必要があります。

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マーケティングの定義

私が職人進化論というブログ記事で11年に渡って発信し続けてきたのは、職人が原理原則に基づいたマーケティング理論を学び、身につけて、現場で作業以外の付加価値を生み出せる存在になるべきだという事です。マーケティングという言葉はこの10年で非常によく使われるようになり、チラシの書き方からYoutubeの撮影の仕方、コンテンツブログやメールマガジンの配信のやり方まで全てマーケティングと一括りにされるようになりました。しかし、本来のマーケティングの定義はドラッカー博士が「マーケティングの究極の目的は全てのセリング(売り込みの手法)を不要にする事だ」と言われたように、やり方ではなく、在り方から自社独自のマーケット(市場)を作る事です。

元来、マーケティングとはマーケット(市場)を作ることで、自社独自のマーケットとは「生涯顧客」と「新規顧客」で構成されます。生涯顧客は顧客接点の強化で圧倒的な信頼関係を構築すること、新規顧客は他社が行なっていない問題解決(イノベーション)を提供することです。私の持論はこの二つの顧客価値は現場で創出出来るものであり、職人こそがマーケティングの実践者になるべきだと言う事です。建築業界に限らず、モノづくりの世界では出来上がった成果物から生み出される顧客体験が評価の殆どを占めます。また、圧倒的な信頼は丁寧で顧客に寄り添ったプロセスから生まれます。職人がこの原則を理解して顧客の立場に立ったモノづくりを行えば、ブランドとして認知されるようになり、売り込みのマーケティングは不要になります。ドラッカー博士が提唱したノーマーケティングの世界は現場から作れるのです。

ノーマーケティングの世界

このnoteでは、ノーマーケティングの世界を実現し、自然に途切れる事なく引き合い受注が発生して価格競争に巻き込まれずに適正価格で信頼関係のある顧客とのお互いに納得と満足が得られる仕事ができる事業モデルの構築の入り口として、職人の意識改革、働き方改革、そして組織改革のヒントとなる実例をふんだんに盛り込みながら情報を発信していきたいと思います。私が信奉する原理原則論の最も分かりやすいのは「成果は状態に由来する」との真理であり、成果を求めるならば状態を整える習慣を身につけることが不可欠とのごく当たり前の事です。大きな成果、厳しい問題解決は何かしらのアクションで一発で手にできる事はありませんが、未来のあるべき姿を見据えて、小さいながらも確実に歩を進めるならば、日本一高い富士山でも殆どの人が頂上に辿り着けるように、必ず手に入る事は少なからずあります。人は鏡。イマカネジブンの価値観を捨て去り、未来に、価値ある、圧倒的他者貢献を標榜すればきっと、応援してくれる人が集まり、成果を生み出す状態が徐々に整っていくと信じています。

原理原則に則った、人として当たり前の行動を非常識なくらい積み重ねる覚悟と決意を固めるだけで、職人の未来はとんでもなく明るいものになると思っています。ちなみに、私はブログでの配信だけではなく、リアルに研修講座や人事制度改革のワークショップなども行なっていますし、職人育成、人事制度の運用に特化した社外顧問などのサポートも行なっています。個別のご相談にも応じておりますので、お気軽にお問い合わせください。→https://www.shokunin-kigyoujyuku.com/application/contact/

◆一般社団法人職人起業塾のオフィシャルサイト:https://www.shokunin-kigyoujyuku.com

◆四方良しの世界を作る株式会社四方継のHP:https://sihoutugi.com

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