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五十肩の痛みと可動域はどのような関係があるか??

こんばんは。

今日は肩の話題を一つ。

理学療法というよりは医師の領域のものですが、ブロックによって痛みを抑制した状態でどのようになるかという話題です。

ただ、このような処置が施された後の理学療法は効果的である可能性もあり、知っておくべき内容かと思います。


抄読論文

Kurashina W, Sasanuma H, et al.
Relationship between pain and range of motion in frozen shoulder.
JSES Int. 2023 Jun 5;7(5):774-779.
PMID: 37719810; PubMed. DOI: 10.1016/j.jseint.2023.05.014.
五十肩における疼痛と可動域の関係
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【五十肩の痛みと機能制限】

五十肩、いわゆるFrozen shoulder(FS)は人口あたり3〜5%の発生率とされ、多くの人を悩ませています。

主な原因は肩甲上腕関節の滑膜炎と線維症であり、多方向のROM(関節可動域)が制限される。そして、それは継続することもあり、平均7年間の追跡調査にて60%が何らかの硬直感などの症状が残存していることが報告されています。

特徴として、炎症期、凍結期、解凍期と時期に別れていることがあります。それぞれの時期で症状や痛み、ROM制限の度合いなどが異なることが病態を複雑化させています。

主に疼痛が主となり、ROM制限を助長させることも少なくありません。
近年はエコーガイド下での頸部神経根ブロックを用いた肩マニュピュレーションが普及し、良好な結果を示しています。

本研究では、FS患者の麻酔前後の肩関節ROM変化を測定し、変化を与える要因を調査することを目的としています。

【方法】

平均55.6歳の男女(男性17人、女性37人)54人を対象としています。
平均罹患期間は6.6ヶ月であり、患側肩関節外旋が反対側の肩外旋の50%未満であることを包含基準としています。

頸部神経根ブロックは上記のように実施され、その前後にて可動域を測定しています。

ROMは麻酔後のROMから麻酔前のROMを減じて、ΔROMとしています。
肩の痛みはNRSにて、夜間時痛と動作時痛を評価されています。痛みはいずれもブロック前のものを用いています。

【結果】


ブロックの前後でROMは有意に改善しました。


また、夜間時痛の状態とROM改善度の関係では、屈曲、外転、外旋ともに中等度の相関を示しました。
動作時痛では、外旋のみ相関を示しました。

一方、ブロック前後それぞれのROMと夜間時痛、動作時痛、それぞれとの関連は相関を示すものはありませんでした。

【考察】

本研究では、ROMの変化量が痛みの度合いと関連を示しました。
夜間時痛が強いものほど、ブロック前後でのROM拡大が大きいという関連を示しています。

これは、ブロックによる痛みの軽減、麻酔効果が疼痛を抑制し、ROMが拡大したと考えます。
つまり、疼痛が強い症例は通常より、ROMを無意識下であっても抑制していることが考えられます。

また、恐怖や疼痛回避思考が高いことも考えられ、疼痛が継続していることで、動きを抑制していることも考えられます。

ブロックの施行により、疼痛を抑制していくことはこの連鎖を断ち切ることになり、その後の理学療法などにおける改善を容易とする可能性があるものと考えます。

【どのように活用するか】

すごくシンプルな研究で、読みやすいものでした。

ブロックにより疼痛を抑制する、それにより可動域が改善する。当たり前のことではあるものの、本研究では改善度合いを見て、それにより特徴を検討していることにあります。

つまり、痛みが強いほど、ブロックによる痛みの抑制、痛みだけでなく、運動いわゆる過剰な肩関節周囲筋の収縮も抑制することができるということです。
それらを複合して生じた減少が、夜間時痛や動作時痛が強い人ほど、ブロック後ROMが改善するということになります。

理学療法士がブロックを行うわけではありませんが、医師によりブロックがなされた後の、後療法を良い方向に持っていくことは理学療法士の役目かと思います。

そのためには、何が行われているのか、どのような方法で、どのような薬剤が注射されているのか。それによって何が抑制されるのか。その上でどこまでどのように可動していくべきなのか。
といったことを医師の意見を聞くとともに、複合して考えていくことが重要ではないでしょうか。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

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