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腰痛へは身体活動と肥満どっちが強い?

こんばんは。
今日は腰痛続きということで、最近の研究報告から。
腰痛に影響する要因を身体活動と肥満の状態、背筋の強さなどから検証した論文です。
コホートで少し結論は飛躍してる感ありますが、ぜひ参考にしてみてはどうでしょうか。


抄読文献

Bayartai ME, Määttä J, et al.
Association of accelerometer-measured physical activity, back static muscular endurance and abdominal obesity with radicular pain and non-specific low back pain.
Sci Rep. 2023 May 12;13(1):7736.
PMID: 37173344; PubMed. DOI: 10.1038/s41598-023-34733-4.
加速度計で測定された身体活動量、背部静的筋持久力、腹部肥満と、神経根痛および非特異的腰痛との関連
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要点

【はじめに】

腰痛は世界的に主要な障害であり、医療サービスを求める人が最も多いと考えうる一つの疾患である。
腰痛の原因は多岐にわたることもあり、遺伝的、生理学的、心理的、社会的要因など様々なものが言われているが、正確な要因は未だ不明のままである。


身体活動や筋力強化といった運動プログラムは、健康に対して有効であるとされ、多くの活動が推奨されている。
腰痛に対しても身体活動を増加させることが、発生予防につながるという報告もある。
しかし、これまでの報告は自己記入式のものを採用していることも多く、客観的評価に乏しい可能性があ離、結論づけられていない。

本研究は大規模ベースの研究として、加速度計を用いて身体活動を調査した。そして、背筋持久力や肥満度なども調査し、それらを踏まえて腰痛との関連を明らかにするということを目的とした。
そして、将来より効果的な予防策や治療法の開発につながることを目指した。

【方法】

本研究は北フィンランドで行われ、中年の5,871人を対象とした。
最終的に3,385人が適格基準に該当し、組み込まれた。

腰痛の分類は、腰痛なしと腰痛ありに分けられ、腰痛ありのうち、医師の診療の状況により、神経根性腰痛と非特異的腰痛に分類した。
(ここの分類が正直すごく曖昧に感じる。原文を読んでもはっきり分かりにくい…)

測定項目は腹部の状況として、BMIとウェストを測定し、ウェストは男性で94cm以上、女性80cm以上を肥満有と判定した。
(これも基準が大きい気もしますが、フィンランドなので…)

背筋筋力は、Biering-Sorensenテストを用いた。
※Biering-Sorensenテストとは?
 腹臥位で上前腸骨棘から上をベッドから出した状態で、両大腿部と足部支持で水平位を保つ。体幹を水平に保持できる持続時間を測定する。
 → 持続時間を測定するため、持久力の判断

身体活動は、腕に装着する身体活動計を用いて、測定した。
24時間、14日間装着した。

【結果】

腰痛なしと神経根性腰痛、非特異的腰痛の測定結果を上表に示す。
BMIや背筋持久力、ウェストなどで腰痛なしに比べて、2つの腰痛あり者が大きい数値を示した。
腰痛あり者は歩数は少なく、活動量も高活動が少ない結果となった。


多変量解析の結果を示す。

非特異的腰痛では、腰痛なしとの関係性で腹部肥満有無、背筋持久力、身体活動、歩数が影響した。
歩数では、1,000歩増加すると非特異的腰痛になるリスクが4%減少するという結果になった。
(ここの解釈は正直微妙…だが論文通りで)

神経根性腰痛は腹部肥満の度合いが大きく影響し、非特異的腰痛よりも判別要素が高くなった。
また、激しい活動に関しては、活動量が大きく影響していた。

【考察】

非特異的腰痛と神経根性腰痛は異なる特徴を有していた。

非特異的腰痛は歩数と関連し、神経根性腰痛は腹部肥満の状態が最も影響していた。
非特異的腰痛には歩数を増加するように活動していくことで、予防もしくは改善していくことができる可能性を示すものの、活動量とは大きな関連がなかったことが懸念される。しかし、歩数との関連を示す報告もあり、関連していることを裏付ける。

神経根性腰痛には肥満度が大きく影響した。激しい活動の活動量も神経根性腰痛と関連が強かった。これには交絡が影響しているかもしれない。つまり、腰痛がないから、激しい活動ができるという因果の方が成り立つ可能性がある。これに関しては、同様の報告が見られることもあり、裏付けされる。

研究限界として、本研究はコホート研究であり、因果関係を定めることができない点にある。
しかし、大規模サンプルの研究であり、加速度計という客観的数値を用いていることは一定の見解として認める要因となる。

どのように活用するか

本研究は、腰痛の要因を非特異的なものと、神経根性のものとに分けている。
この分け方には疑問があるが、観点は興味深い。

非特異的腰痛には主に歩数が関連した。
これを活用していくとしたら、活動が少ないことが非特異的腰痛を有する人の因子ということになる。
活動量が低いから腰痛になったのか、腰痛になったから活動量が低くなったのかは因果として方向性を決めることはできない。
しかし、非特異的腰痛は心理的要因も関わってくることから、近年の精神活動に身体活動が好影響を及ぼすという概念から、活動していくことで腰痛が改善していくことも考えられる。

つまり、非特異的腰痛に対しては、腰痛の増強などに留意しながらではあるが、身体活動を高めていくことが重要になるのではないか。ということになる。

一方、神経根性腰痛には肥満度が影響し、神経根性腰痛という基質的要因が関連していることで納得がいく。
これらに関しては、身体活動を増強していくことも重要であるが、神経根性腰痛は活動による疼痛が増強することも考えられる。
そこで、肥満に対して介入できるように、腹部周囲筋のトレーニングや歩行での活動よりもエロバイクなどの運動により肥満への介入を行なっていくことが重要になる。

この知見を活かして、活動方法、介入方法の選択をしていくことも重要になるであろう。

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今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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