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凍結肩に対する神経筋促通法は効果的


抄読論文

Lin P, Yang M, et al.
Effect of proprioceptive neuromuscular facilitation technique on the treatment of frozen shoulder: a pilot randomized controlled trial.
BMC Musculoskelet Disord. 2022 Apr 20;23(1):367.
PMID: 35443651. PubMed. DOI: 10.1186/s12891-022-05327-4.
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凍結肩の治療における固有受容神経筋促通法の効果:パイロット無作為化比較試験

要旨

【背景】

凍結肩は、肩関節の構造的変化を特徴とする肩関節の一般的な疼痛性疾患であり、肩関節の能動的および受動的な活動が制限される。固有受容性筋促通法(PNF)は効果的に肩関節可動域を改善・維持するが、凍結肩患者の肩関節構造を改善できるかどうかは明らかではない。本研究では、MRI観察によりPNF治療による肩関節局所構造の改善を評価し、凍結肩治療における構造に基づいた治療目標を明らかにすることを目的とした。

【方法】

凍結肩患者48名を従来の手技療法群とPNF手技群に無作為に分類した。肩関節の烏口上腕靭帯(CHL)と腋窩陥凹(CAR)の厚さの変化を入院時と治療後4週目にMRIで観察した。2群の患者について、初期、中期、退院時の肩関節の痛みと機能の改善を評価するために、外転位、前屈位、外旋位での視覚的アナログスケール(VAS)と他動的肩関節可動域(ROM)を用いた。

【結果】

主要評価項目として、PNF関節モビライゼーションはCHL(p=0.0217)とCAR(p=0.0133)の厚さを有意に減少させた。中間評価および退院後の評価では、単純な関節モビライゼーションと比較して、PNFは肩の痛みに対してより良い効果を示した。中間評価では、PNF群のROMは3方向においてコントロール群より有意に良好であった(p<0.05)。

【結論】

補助療法として、PNFは凍結肩患者の肩関節構造を改善し、凍結肩の効果的な治療戦略である。

要点

凍結肩は肩の癒着性関節包炎としても知られている。その病理学的所見として、肩甲上腕関節における関節包の肥厚、拘縮、上腕骨頭への癒着などがあげられる。その中でも烏口上腕靱帯(CHL)の肥厚が肩関節の可動域制限をもたらすとされている。また、腋窩陥凹(CAR)の肥厚も、凍結肩の症状を有意に悪化させるとされている。これらかに対して、さまざまな治療が用いられるが、その中でも非観血的治療として理学療法は多く用いられる。
本研究はその中でも関節マニュピレーションと神経筋促通法(PNF)をあげ、PNFが凍結肩に対して有効な治療であるかを検証することを目的としている。


マニュアルセラピーとしてはこれらの項目において行い、PNFも上記の方法を用いている。
それぞれ、位置付けはスペシャルテクニックになり、マニュアルセラピーはMaitlandのテクニックを用いている。
PNFはICFの概念のもと、肩関節の動きを評価し、、身体構造と機能レベル、活動レベル、参加レベルなどの因子に分類した。それに適した内容に置き換えてPNFテクニックを用いた。
(ここの内容は正直意味が不明・・・、なぜICFに肩の機能に関してのものを絡ませるのか?わかる方はコメントください)


結果として、PNFの方が全ての面において有効だということになった。
CHL、CARともにPNF群の方が有意に肥厚が軽減した。
これに関しては、PNFが軟部組織構造の変化に対して回復させる要因があったと考察している。PNFは受動的な運動ではなく、能動的な抵抗トレーニングの要素を含んでおり、そのことが軟部組織に対して好影響を与えたという考察になる。

疼痛やROMも改善が見られているが、これは肥厚が減少したことで、関節の構造的スペースが拡大したことによって可動域も改善が見られたであろう。
また、それに伴い疼痛の減弱も図れたものと思われる。
これらに対しては、強い根拠を持った考察は展開されていない。

どのように活用するか

本研究に関しては、凍結肩に対する治療展開において、一要因の可能性を見出している。
MaitlandもPNFもスペシャルテクニックであり、このような手技を用いることができないと、このような治療結果がだせないと思うのは尚早かと思う。
大事なのは理論的背景であり、関節の受動的モビライゼーションであるマニュアルセラピーよりも、能動的で軽度の抵抗刺激を用いるPNFの方が、より組織の軟性を取り戻すことができたという点に着目すべきである。

その理論背景を理解していれば、その手技に精通していなくとも、生理学的機序から同様のアプローチを行なっていけば良い。
もちろん、PNFとして抵抗をかけていくにあたって、疼痛の増強や関節への負荷が生じる可能性もある。
その点は、他の所見から判断することや患者の反応を見ながら行なっていくことが必要であろう。

いずれにしても、一つの要素のみで治療展開するのではなく、本研究結果はあくまで一つのエッセンスであるということを認識して活用していくことが必要となる。

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