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心不全に対する運動耐用能の向上にはどんな運動が効果的か?


抄読文献

Edwards J, Shanmugam N, et al.
Exercise Mode in Heart Failure: A Systematic Review and Meta-Analysis.
Sports Med Open. 2023 Jan 9;9(1):3.
PMID: 36622511; PubMed. DOI: 10.1186/s40798-022-00549-1.
心不全の運動様式:系統的レビューとメタ分析
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要旨

【背景】

心不全(HF)において、心機能維持型(HFpEF)または低下型(HFrEF)の駆出率を持つ患者の運動処方を最適化することは臨床的に重要である。そこで、このメタ分析の目的は、従来の中強度運動(MIT)と組み合わせた有酸素および抵抗運動(CT)、および高強度インターバルトレーニング(HIIT)が、最大酸素摂取量(VO2)の改善および他の臨床的に関連するパラメーターに与える影響を比較することであった。

【方法】

1990年から2021年5月までに公開された無作為化比較試験を特定するために、包括的な系統的検索が実施された。HFpEFまたはHFrEFにおけるMITとCTまたはHIITの効果を報告している研究試験が考慮された。左室駆出率(LVEF)および様々な拡張機能のマーカーも分析された。

【結果】

最終分析には17の研究が含まれ、そのうち4つがMITとCTを比較し、13つがMITとHIITを比較した。MITとCTの間で最大VO2(加重平均差[WMD]: 0.521 ml min−1 kg−1, [95% CI] = −0.7から1.8, P固定 = 0.412)またはLVEF(WMD: −1.129%, [95% CI] = −3.8から1.5, P固定 = 0.408)に有意な差はなかった。しかし、HIITはMITよりも最大VO2(WMD: 1.62 ml min−1 kg−1, [95% CI] = 0.6~2.6, Pランダム = 0.002)およびLVEF(WMD: 3.24%, [95% CI] = 1.7~4.8, Pランダム < 0.001)の改善に有意に効果的であった。HF表現型で二分した場合、HIITは全ての分析でMITよりも有意に効果的であったが、HFpEFにおける最大VO2の場合を除く。

【結論】

HIITはMITよりもHF患者の最大VO2およびLVEFの改善に有意に効果的である。HFpEFにおける最大VO2を除き、これらの所見は両表現型において一貫している。別途、MITまたはCTに続く最大VO2およびLVEFの変化に差はなく、これは抵抗運動の追加がHFにおける有酸素適応を妨げないことを示唆している。

要点

本研究は心不全に対する運動療法の戦略として、高強度インターバルトレーニングであるHIITと中強度以下のトレーニングである、MIT、 CTとをRCTより抽出し、メタ解析で検証している。


HIITの定義はEXPERTツールで、「High intensity, vigorous effort;高強度、激しい努力」もしくは「Very hard effort;非常にハードな努力」の項目に分類されるものとしている。METsで表すと、6-10METsの運動強度になる。


HFrEFに対して、HIITはMITよりもPeak VO2、LVEFが増加した。
HFpEFに対しては、LVEFのみ増加がみられた。

HFpEFでは効果が得にくかったこととして、HFpEFは近年定義されたものであり、研究の蓄積が少ないことを述べている。

もう一点の結果として、MITとCTを比較したときに、どれも差はなかったという結果になった。

これに関して、CTは有酸素運動にレジスタンストレーニングを組み合わせた運動となり、有酸素運動の要素をMITよりも減少させ、レジスタンストレーニングを加えても運動耐用能である、Peak VO2などの数値は同様の増加幅であるということを示している。
結果的に、下肢筋力等を強化することで代謝を向上させることができるレジスタンストレーニングを安全に加えることができると結論づけている。

どのように活用するか

HIITは高負荷であり、心不全患者において適応することが難しいとも考えられる。しかし、このHIITはMETsや心拍数、RPEなどから負荷の状況を判断するため、運動量に関しては、個人の状態に依存する。
そのため、過剰な負荷量ではなく、適切に管理して行けば、心不全患者、HFrEFの状態であっても実施可能である。

HFpEFに対しても、今後データの蓄積が図れていくことで、差が見られてくる可能性は十分あり、今後の期待となっている。

HIITの有効性を検討している論文は多くあるが、本メタ解析では17のRCTを検証しており、一つの結論として十分活用できる。

もちろん患者の状態に応じてというところはあるが、運動負荷を上げたもの、そして落としたものというインターバルの状態を作っていくことは最高酸素摂取量を上げていく重要な要因になることに一定の見解を持っていいだろう。

エアロバイクやトレッドミルなどのインターバル機能はあまり活用されていないかもしれないが、活用することを検討しても良いかもしれない。


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