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「食」と「農」は、別れと復縁をくりかえす運命なのか?

食と農の「お別れ」

  • 田んぼや畑(生産地)

  • 食べる人が住んでいるところ(消費地)

この2つは、離れているのがふつうです。

離れていても、現代は流通が発達しています。
生産地で生産された農産物は、きちんと消費地に届きます。

しかし、離れているために、

  • 生産者

  • 消費者

この両者は、ふだんは顔をあわせることがありません。
顔をあわせることがないので、

  • 生産者は、自分が作った農産物をだれが食べてくれるのか、知りません。

  • 消費者は、自分が食べる農産物をだれが作ってくれたのか、知りません。

日本には1億2千万の人間が住んでいます。
地球全体では70億の人間が住んでいます。
こうした人口を支えようとすれば、「農と住が離れた」効率的なシステムが必要となるのでしょう。

とはいえ、

  • 生産地と消費地が離れている状態

  • 生産者と消費者が顔をあわせない状態

を、健全じゃないと考える人も世の中にはたくさんいます。

食と農が「復縁」?!

北米(アメリカやカナダ)では、

  • 農場と生産者

  • 消費地と消費者

この両者を近づけた町づくりをときどき見かけます。

住宅街の中に本格的な農場があり、地域住民はその農場に年会費を払います。
その年会費によって農場が運営され、生産された農産物は会員である地域住民が受け取ります。

  • 地域住民からすれば、顔の見える場所で作物が作られるので、きわめて安心。

  • 農場(生産者)側にとっては、年会費という安定した収入が、しかも前払いで確保できるため、経済的に安心。

両者に安心感がある、このような仕組みのことを
Community Supported Agriculture
(地域に支えられた農業)
略して「CSA」といいます。

もともとは日本発のアイデアですが、日本よりも北米(アメリカやカナダ)で盛んな小規模農場の経営システムです。

かつてアメリカのハウスメーカーは、この CSA とセットで住宅を販売していました。
ハウスメーカーが農場を作り、そこにプロ農家(生産者)を招き、周囲に家を建てて販売していたのです。
そうすると家がよく売れました。

こうやって作られた住宅街を「CSAタウン」と呼びます。
「CSAタウン」はとても人気がありました。

クサくても愛せるか?

CSAタウンには問題もありました。
ニオイです。

会員である地域住民が望むのは、有機農産物です。
農薬なんて撒いてほしくないと思っています。
したがって CSA は有機農業を行うのが一般的なのですが、そうすると今度は、住民は有機肥料のニオイと共存しなければなりません。

  • ニオイに耐えて有機をとるか…

  • CSA を離れてふつうの町に住むか…

究極の選択を迫られ、一部の住民は去りました。
ところが、多くの住民は残りました。

残った人は町のクサさを自慢するようになりました。
面白いことに、
クサければクサいほど CSAタウンに人気が出て、土地の値段が上がる
といった現象もあったそうです。

ちなみに、CSA が出すニオイは有機肥料のニオイだけではありません。
有機農業を行う農家はエコな人が多く、CSA もエコっぽく運営されます。
たとえば筆者が訪れた CSA では、農場内を走り回るトラクターの燃料に、ガソリンではなく「天ぷら油」を使っていました。
近所の日本食レストランから、使用済みの天ぷら油を買っていたようです。
おかげで、農場内は天ぷらのニオイで充満していました。

補足

北米(アメリカやカナダ)には1万を超える数の CSA が存在しています。
そえだけたくさんあると、CSA どうしの競争も生まれ、
「何らかの特徴のあるスタイルに変身し、他の CSA との差別化をしたい」
と考える CSA が出てきます。

そんな差別化の努力の1つとして、
(果物や野菜ではなく)薬草の栽培に特化し、健康意識の高い住民を呼び込もうとする CSA
といったものも登場しています。




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