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ブックレビュー:日常に侵入する自己啓発 生き方・手帳術・片づけ

準備社会と言われる今日、望ましい未来をつかむため、自分を磨き、高め続けなければならないと思ってしまう感覚は、多くの人が共有するもののように思います。

本書は、そうした「自分磨き」の指南書ともいえる自己啓発本を分析したもの。

ターゲットとなる性別や年代を明確に指定した「年代本」。手帳を使って「自分の時間」の有効活用を呼びかける「手帳術」。身の回りの片付けと自己啓発を結びつける「片付け本」。自己啓発本は、日常のそこかしこに入り込みながら、自己という存在をコントロールしていくよう奨励しますが、男性には「仕事における成功」を、女性には「自分らしさの追求」を呼びかけるなど、基底にある考え方は過去30年近くにわたってほぼ変わっていないと著者は指摘します。

ジェンダーギャップや自己責任論といった現在の日本社会に影を落とす風潮が、身近にある何気ないものから作り出されているのかもしれない。自分の中にある価値観について、あらためて考えなおしたくなる一冊です。

『日常に侵入する自己啓発 生き方・手帳術・片づけ』牧野智和著(勁草書房、2015年)

https://www.keisoshobo.co.jp/book/b194322.html


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