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サハリン2開発に反対した私が、今サハリン2からの撤退に反対するわけ②

ウクライナに侵攻し、国際法違反をおかした核大国ロシアへの経済制裁をどうすべきか。いろいろな問題が折り重なっていて、すぐに答えが出るわけではなかった。

サハリン2からシェル(2月28日)、サハリン1からエクソン(3月1日)が撤退することを聞いたとき、私の頭に浮かんだのは次のようなことだった。

(1)大規模開発で現地に甚大な環境被害や社会影響をもたらし、大きな利益を得てきたメジャー企業が「立つ鳥跡を濁したまま」“えらそうに”出ていくのは腑に落ちない。

(2)経済制裁によって苦しめられるのは、戦争など望んでいないロシアの大多数の人々ではないのか。

とはいえ、ウクライナの人々が目の前で殺されていくのを何とか止めたい。そのために、経済制裁が効果的であるとして、日本がサハリン2から撤退を選択した場合、

(3)天然ガスが入らなくなれば、電力価格などが上がり、日本に住む人々の生活がますます苦しくなるのではないか(LNG全輸入量のうち、ロシアからは約8~9%)。

(4)それでも、そのことを日本社会が受け止め、社会的な弱者に配慮をしながら、省エネを徹底し、再エネ導入を加速(メガソーラーなど環境被害の大きいものは避ける)するのであれば、選択肢になりうる。でも、今の日本では、原発推進の勢力が強まり、別のリスクや社会不安につながりかねない。

経済制裁の効果はあるのか?

ロシアや日本の市民の暮らしに影響が及ぶのは間違いない。それでもロシアの残虐な軍事行動を止められるのであれば、(4)の道を選ぶよりほかない。気候危機への対応という点で、化石燃料からの脱却はいずれにせよ急務な道だ。

でも、私には経済制裁そのものにロシア軍の行為を止める効果があると信じるに足る根拠がなかった。北朝鮮はどうか。さらに第二次大戦中の日本を思えば、「鬼畜米英」の標語のように、かえってロシア国内の結束を高める要素に働き、戦況をさらに悪化させるのではないか(侵攻後、プーチン氏の支持率は前年63%から83%に急上昇)。

少なくとも、経済制裁が効果を持つには、国際社会の連帯が不可欠だ。当初のSWIFTからの締め出しといった金融制裁は、国際社会が一致団結してロシアの軍事行動にNOを突きつけたという意味で、重要な圧力になっていると感じた。

しかし、この頃(4月)米国を中心としたNATOの動きに対する各国間の反応には、すでに分断の兆しが見えていた。国連総会で行われた3回目の対ロシアに関する決議において、半数近くの国が棄権か反対を選んでいた。(③につづく)

サハリン2の原油・天然ガスの掘削エリアには、生息数わずか
100頭のクジラの唯一の餌場があった

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