見出し画像

ありがとう、さようならJAIST

 2021年3月24日で私木村正子は北陸先端科学技術大学院大学:JAISTの博士前期課程を修了します。思えばこの2年は仕事以外の時間はほぼ研究や勉学にまっしぐらでした。
 自分自身のことでは前の大学院を中退したり、仕事を何度か転職したり、本当はフルタイムの学生を志望していたのにも関わらず東京での仕事の都合で東京サテライト校の社会人学生になってしまったこと、石川本校舎と東京サテライトの違いへの落差、そして仕事と勉学・研究のバランスを初め悩み苦しんだ時期もありました。実は休学届を2回提出しかけたり退学願も2回出したこともありました。何度も諦めかけたり修士論文を執筆している時に何度も壁にぶつかり諦めかけた自分もおりました。諦めかけても熱心にご指導頂いた指導教官と研究員の方がいなかったら本当に修士論文を書き上げることができませんでした。
 しかし、それらは振り返って見ると、悩み苦しみ苦難があったからこそ、より深く議論や推論したことが大きな人生の宝物になりました。むしろ、社会人学生だからこそ世の中には様々なバックグラウンドを持ってでも勉学や研究に励む同級生や先輩たちの存在を知ることで世の中をより広域的に見られたことに心から感謝しております。
 このエントリーをJAISTに関わっている全てのみなさん、そしてこれからJAISTへ入学をする、入学を検討している方々全ての人たちへ捧げます。

スクリーンショット 2021-03-23 18.59.21



JAISTは日本で早期に社会人学生を受け入れている素晴らしい大学院

JAISTは誕生してから30年が経過しました。その中で社会人学生の割合は日本国内でもトップクラスです。
JAISTの一番の魅力は先生たちの学生への面倒見の良さと対応の素早さ、そしてどのような学生でもやる気さえあれば最後までご指導いただけるところや国内の大学の中でも性能の良い実験器具が勢揃いしているところです。
 企業で働いた経験がある先生が多いことも魅力的です。特に私の在籍していた知識科学系では富士通やIBMなど大手企業だけではなく中小含めて企業経験のある先生方が多く、修了後を見据えて広域的に多視点でご指導頂けるのがとても素晴らしいです。
企業を経験している先生たちの物腰が柔らかい考え方や思考、面白いアイディアに多く助けられました。

JAISTの素晴らしい教育カリキュラム 主テーマと副テーマ ゼミ制度

また、修士論文の主テーマとサブで研究活動や企業インターンを行う副テーマを行うことが他大学にはないJAISTの特徴です。これは東京サテライトの学生にも同じく課される研究テーマです。
 私は主テーマは指導教官の元で切磋琢磨し行いましたが、研究計画書を提出した春の時点と比べ、まるっきり違う研究テーマで修了することになりました。
 また、副テーマは私の希望もあり研究指導委託という制度を利用し国立大学同士の協定で他国立大学へ特別研究生として1年間国内留学をしました。行き先は名古屋工業大学で触覚の研究を行い、最終的には日本バーチャルリアリティ学会で学会発表を行いました。
 2つの研究を行うことはハードルは高いですが、副テーマで研究のとっかかりについて学び主テーマで本格的に研究するというスタンスにより研究生活の面白みに目覚めることができたのだと思います。
 また、東京サテライトでは東京サテライト教員から直接指導が受けられる全体ゼミ・個別ゼミが月に2、3回あり、研究室のゼミ以外でも素晴らしい先生方からの忌憚なき意見を伺い議論できる機会があります。2020年度こそオンラインへ移行しましたが、私の場合は国内・国際学会への投稿や日本学術振興会 特別研究員DC1への提出があり2年間で合計18回ゼミを利用させて頂きました。研究室の指導教員以外からのご指導や議論はとても刺激的で鋭い意見が多く、時に挫折し折れそうになりますが、先生方を論破できるくらいにならなければという心境に自分を掻き立たせます。議論するための前提としてもっと広域的な知識と多視点なコミュニケーションが取れることが必要とされます。知識を得るために多くの文献や論文を読み、そしてコミュニケーションスキルを磨くためにプレゼン方法を学んだり相手の仕草や態度から読み取れる範囲で発表する内容の言葉を変化させるなどの工夫を学びました。

画像4

東京サテライトで行われたゼミの日程表(ぼかしあり)年間通じて行われ時には満席になることもある。

 先生方の鋭い議論から学んだ議論の深堀や視点は一生物のスキルです。時に私はヒューマンライフデザインでしたが東京サテライトはMOT(技術経営修士:Management of Technology)が中心であり、他分野の先生や聴講者に伝わる言葉で研究発表をしなければ意味がないことを痛いくらい感じました。

様々なバックグラウンドを持つ個性的な学生たちと社会人学生

東京社会人コースでは一番若くても20代後半の方、そして一番年上で60代で定年を迎えた方など世代を超えて共に授業の中で勉学に励みました。
JAISTは学部も持たない大学院に特化した大学なので様々な大学から進学される方がおり、最近は海外の大学からも入学される方が多くなり様々なバックグラウンドを持つ人たちが居るからこそ、人材の坩堝の大学院です。
 また、たまに実験のために石川の本校舎へ行き本校舎の学生らとも交流する機会にも恵まれました。本校舎でもゼミでの議論の時は良いですが、ゼミ以外のプライペートな交流ではどうしても同級生でも10歳年下の人たちがいるなど年代の違いを感じたこともありました。それでもトレーニング室や留学生との交流では世代を感じることなく一緒に協力できる人たちに恵まれたことはとても喜ばしいことでした。


石川本校舎と東京サテライトを行き来する生活 石川と東京、そして世界を股にかけた仲間たち

 2019年4月入学から2021年3月までの間で石川と東京を往復は合計18回でした。副テーマの時に名古屋へ3回行ったのを合わせるとほぼ毎月移動していたことになります。
幸いにして飛行機のマイルが溜まっていたのでそれを使用したり、会社の仕事案件で数回はビジネスで行けたので移動費用はほぼ掛かっていません。そこはとても恵まれて居たと思います。
 東京サテライトで実験ができない分、本校舎では被験者実験やJAIST Fabでものづくりに励みました。2019年にはIVRCというVRのコンテストの書類選考通過したので石川本校舎を中心にプロトタイプを作成していたのは良い思い出です。
 石川と東京と股に掛ける生活でしたが、どちらにも良い仲間や研究室の人たちがいたのでとても良い人たちに囲まれたのと、当時からオンライン会議システムやSNSでのコミュニケーションを円滑に活用し、常にコミュニケーションを取っていたことで仲間の結束を深めて行けたと思います。

素敵な鶴来の街に支えられた研究生活

入学前に参加した学会で出会ったJAISTの先生のお陰で、本校舎に立ち寄る時の宿泊先にも恵まれました。本校舎には学生宿舎がありますが、東京サテライトの学生は入寮することができません。そこで提案されたのが白山市・鶴来にあるORIZURU PLOJECTという団体が行っているシェアハウスでした。鶴来にある空き家を借り、主に学生やJAISTに関わる人たちが一緒に共同生活する場所でした。私はその中のゲスト部屋に時折お世話になり研究生活では相当助けられました。東京サテライトではどうしても場所の都合上実験ができないこともあり、石川の本校舎で実験することが多かったです。そのお陰で国際学会への論文を投稿できたり、IVRCというVRコンテストのための実装やデバイスを作成することができました。
 シェアハウスの側にはスーパーがあったり、鶴来の町には金剣宮や白山ひめ神社など歴史ある神社を主体に素敵なパン屋やカフェがありとても心を癒してくれる場所でした。
 東京と石川を往復する研究生活の中で鶴来の町にとても支えられました。鶴来の街に本当に感謝しております。

スクリーンショット 2021-03-23 18.59.45

素敵な鶴来の町に古くからある神社・金剣宮 代表的な乙剣社


東京での研究・アート仲間に支えられた社会人学生生活

 東京でも実験をしたり議論する場所が必要でした。東京サテライトは講義室と実習室そして図書館と学内ネットワークはありましたが、スーパーコンピュータや実験器具などはありませんでした。仕事もあるため、しょっちゅう石川本校舎へも行くわけにもいかないので東京でも場所が必要になりました。幸いにして東京・本郷にあるLab-Cafeというコミュニティやちょっとした議論や作業場所であれば東京大学や東京工業大学の知り合いを通じて場所を借りて使わせて頂くこともあり、本当に人に支えられて研究生活を過ごせたと思います。特に東京での場所には心から感謝しております。


JAISTはチャンスをくれる大学院 関わって頂いた全ての人たちへ御礼と感謝

 JAISTこそ日本の中で最先端で様々なバックグラウンドがある人たちを受け入れてくれる大学院です。
 学部を卒業若しくは同等の学力があると認められた人たちが更なる高みを目指すために開かれた大学院です。日本国内には他の大学院大学もありますが、JAISTの一番の強みは「知識科学」という文理融合された世界で唯一の研究領域があることです。
 知識科学があることで文系の方でも理系の大学院へ入学することができます。入学後は苦労することも多いですが、知識科学があるからこそJAISTは他大学院大学にはない真の意味でのガラパゴス化できる学問領域を創造することができるのです。

私みたいに社会人学生、しかも中退歴あり転職数回ありな人間でも先生たちは最後まで面倒見てくれまました。
修論の口頭審査の後にも遠隔ということもあり、わざわざメールでフィードバックを下さった先生もおり、本当に素晴らしいご指導を頂けたと思います。
オンラインで中々直接的なご指導を受ける機会がない中でその先生のコメントは宝物になりました。

私はJAISTに入学したことで自分の人生において大きなチャンスを頂くことができました。

一つ目は修士号という素晴らしい学位を与えて下さったこと、二つ目は素晴らしい先生方や様々なバックグラウンドがある社会人学生の同級生や石川本校舎に居る個性豊か国際色豊かな学生たちに恵まれ、たくさんの仲間や友人、そして素晴らしい人脈を築けたことが何よりも大きく得たものです。

そして、三つ目は素晴らしい先生たちのご縁とコミュニティのお陰で、さらに飛躍し次の進学先へ繋げることができました。更に研究を飛躍させるには同じ場所に留まっていてはいけないと私を救ってくださった先生の教えもあり、修士のみの在籍は本当に名残惜しいですが新たな場所へ進みます。

私はJAISTから巣立ちます。そして、次の新天地で更なる研究をし自分が本当に目指している「人々のコミュニケーションの円滑化」に向けて更なる実験と研究をし、論文を書き上げたいと思います。

自分が研究者になれる保証はどこにもありません。
筑波大学時代にがんで死んだ研究仲間の想いを引き継いでいるのかもしれません。
研究者以外の仕事が上手くできない人間なのかもしれません。
とても不器用で未熟な自分でも、世の中に1ミリでも役立ち貢献できるのであれば、私はその道を全うしたいと思います。

先行きのことがわからなくても、怖がらずに進めば良いのです。
後悔しないで行動することはとても勇気がいることです。それでも進んで行きたいのです。

JAISTへ入学したからこそ私は人生で再チャレンジすることができました。
もう学位が取得できない、もう世の中に役に立たない人間でダメ人間の刻印を押されたかもと思い込んでいた自分の考えを変えてくれ、チャンスを与え、落ち込んでも休学や退学しそうになっても引き留め支えてくれた人たちがいたからこそ無事に修士号を取得できました。

弱虫で何かあると逃げそうになり立ち止まり遂行すること文章を書くことを諦めていた自分がJAISTのおかげで変わったのです。


もし、この文章を読んでいる人の中に今大学を辞めるか考えている人がいたら伝えたいことがあります。


もし、あなたがその組織で上手くコミュニティを築けなかったり議論できる先生がいなかったら別な場所を探しても良いかもしれない。無理する必要はないです。
でも、その組織の中でたった一人でも話せる先生や仲間がいたら、そこからコミュニティを広げるように努力して欲しい。そうすればあなたは新しい人たちと繋がりチャンスを掴むことができる。

 不器用だっていい、時に研究や勉強したくなくなったらしなくてもいい、ちょっと休んでもいい、一人ぼっちになってもいい、でも最後まで諦めないで欲しい。

あなたはあなたらしく自分の世界を創造して欲しい それがとても小さな人との繋がりでもあなたは存在する価値があるのだから自分を信じて欲しい。

北陸先端科学技術大学院大学は本当に素晴らしい大学院です。
研究に特化した組織や取り組み、補助金、学生へのサポートなど研究をやりたい人にはとても良い大学です。

私は修了し次は他大学院へ行くために離れてしまいますが、人生の道を大きく前進させてくれたのは他でもないJAISTのお陰です。

JAISTへ心から感謝と御礼を申し伝えます。本当にありがとうございました!

そして、さようならJAIST

次は研究のコラボやOGとして来ます。

ありがとう、さようならJAIST

50年100年後もJAISTが更に飛躍し、世界で活躍できる人材を排出する担う素晴らしい研究機関であり続けるように期待しております。


画像5

画像6


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?