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旅とビール

 初めてビールをおいしいと思った夏の日の午後。ギリシャのビーチ近くのタベルナ(食堂)で、学生時代からの友人2人と飲んだギリシャのビール。空は青くて、海も青くて、太陽はまぶしくて。住むところも環境も変わった3人が旅先に集い、同じ時を過ごしている。それまで苦いばかりでおいしいと思えなかったビールを、突然おいしく感じた。 

それは、旅の空の下での解放感と、久しぶりに会う友人たちがいたからかもしれない。日の光に照らされて、キラキラと金色に輝く冷えたビールと、穏やかにゆっくりと流れていく時間。それは私の人生の中でも、忘れられないしあわせな時間だった。

 それ以来、「とりあえずビール」ができるようになり、旅先ではその土地のビールを楽しむようになり、今では一人でビールも飲めるようになった。旅は、その土地の空気を感じること。その場でしか見ることのできない風景を目にし、そこでしかできないことを体験する。


 たとえ同じものでも、どこで飲むか、どこで食べるかで、味わいも変わるはず。だから、旅をすると、地元のお酒を飲み、郷土の料理を食べてみる。この土地だから、この味が生まれたんだと、実感できる。

 ビールが、お酒が、飲めるようになってよかった。旅も人生も、もっと楽しく深くなったから。

 次はどこで、だれと、乾杯できるだろうか。あの夏に乾杯。そして、まだ見ぬ未来に乾杯。

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