見えたら、行ける。(企画メシ5)
阿部広太郎さんが主宰する「企画でメシを食っていく(企画メシ)2021」も折り返し地点を過ぎた。第5回のテーマは「本の企画」。講師はライツ社代表の大塚啓志郎さん。
今回の課題は、「自分の中で絶対いける!」という確信の持てる本の企画。ライツ社の企画会議はLINE上で行っているため、企画をLINEグループに送る。LINEという形式にも戸惑ったけれど、「絶対いける」という企画自体が難しくて、ぐるぐるぐるぐる迷走した。
好きを起点に考えていたわたし
「いつか本をつくりたい」というのは、私の夢のひとつ。旅が好きだけれど、最近は思うように遠くへ行けないこともあって、「旅」をテーマにした本をつくりたい、というのが一つの方向性だった。
今まで自分の頭だけで考えていたなあ、ということに気づいたので、今回は、本好きの友人たちに話を聞いてみることにした。「どんな本があったら読みたい?こんな本の企画考えてるんだけど?」と話したりLINEしたりしながら考えたのは、旅をテーマにしたものと、本をテーマにしたもの。
色で旅する世界
本で旅する世界
旅先の朝ごはん
コピーライターの本棚
自分でも読んでみたい、と思う本の企画を選んだ。他にもいろいろ考えたのだけれど、私が考えつくものは、既にだいたい世の中にある。
講義で大塚さんは、このように話してくれた。
自分の気になっていること、課題や悩んでいることから企画した人と、好きなものから企画した人がいる。好きなものから企画するのは超難しい。実用的でないから。好きなものを本にしても、好きな人にしか届かない。そのまま本にしてはうまくいかない。
講義の後、すぐに企画生たちがTwitterで感想をツイートしていた。私も勇気を出して感想を書いてみた。すると、大塚さんがすぐにコメントしてくださった。「好きなものより好きな人を見つけたほうが具体的だと思う」。
大塚さんは大好きな人の力になりたい、大好きな人を広げたいから本をつくっているそうだ。好きなもの起点だった私。好きな人起点の大塚さん。以前参加した学びの場で、自分の「好き」「やりたい」だけでなく、「なぜやるのか」「どんな課題の解決につながるのか」を考えて企画しよう、と言われたことを思い出した。
大塚さんは「速さ」を大切にしているそうだ。私は読むのも書くのも行動も遅くて悩んでいるのだが、もう少しスピードアップを目指したい。と思ってnoteを早めに書こうとしていたのだが、結局週末になってしまった。
ライツ社さんのnote はこちら ↓
企画には理由が必要だ
情報紙の編集部に所属していたころ、「好き」「やりたい」と思って考えた企画は、出しても出しても通らなかった。それでも懲りずに、切り口を変え、見せ方を変え、企画会議にかけ続けた結果、ついに実現した。私の企画が素晴らしかった、わけではなく、タイミングが合ったのだ。
たとえば「ワインの特集をしたい」と思っても、ただやりたいだけでは、通らない。ボージョレーヌーボー解禁直前でワインが話題になる時期。地元で造られたワインが大きな賞を受賞した。日本のワインがブームになっている。そんないくつかの要素が重なって、ようやく会議で選ばれる企画になる。
大塚さんは、「あなたはバターのような人だよね」と言われたことがあるそうだ。バターは主役にならないが、バターがないとおいしくならないものはいっぱいある。それは、編集者としては一つの正解。
私は編集者やライターの仕事は黒子のようなものだと思っている。ライターとして関わるときには、心を動かされた人や物事を、黒衣に身を隠して、しっかり伝えていきたい。
一方で、書くことで表現したいという欲もある。その時には自分を隠すのではなく、自分が見えた方が伝わるものになるのかもしれない。自分を出すことには勇気がいるけれど。
見えたら行ける、その先へ
「企画だけでは本にならない。企画した瞬間にイメージできるのが売れる本」と大塚さんは言う。
編集部時代、特集記事を作るとき、最初にタイトルからレイアウトまでイメージできたときは、よい企画になった。この話を聞いていて、別の講義での阿部さんの言葉を思い出した。
見えたら、行ける。
未来や叶えたいことが、見えたら、行ける。
なるほど、見えなかったから行けなかったんだ。やりたいことが、なりたい自分が、見えたら、そこへ近づける。
数年前から私の中に、こんなイメージがある。私は今いる場所からあっちへ行っては戻り、こっちへ行ってはまた戻り。歩き回っているのだが、なかなかその場を抜け出せず、遠くへ行くことができない。周囲には白い靄(もや)のようなものが立ち込めていて、先が見えない。
でも、企画メシに参加して、少しずつ靄が晴れ、視界が広がっていくような感覚を覚える。まっすぐな道が見えたら、私ももう少し遠くまで、歩いて行けるかもしれない。
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