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ニーズ高まる「一時保育」の拡充で、地域に開く園づくりを——写真で知ろう!小規模保育【園運営

保育園を、地域のすべての子育て家庭に“開かれた場所”にしようと始めた「一時保育」。さまざまな事情を抱える保護者を支えながら、少しずつ認知が広がり、開始2年が経つ2023年3月には1日平均3.2人の利用がありました。小集団だからこそできる関わりによって、子どもたちにも変化が生まれています。

<りとる・ピッピ/神奈川県横浜市>

【園児数】12人(0歳児3人、1歳児4人、2歳児5人)+一時保育5人
【保育者数】保育士7名+保育補助2名

■ ねらいと配慮

地域には、就労を理由に子どもを預けたいと考える保護者以外にも、さまざまな理由で支援を必要する子育て家庭があります。当法人では、「保護者が働いていなくても子どもを預かり、共に育ちあう場所をつくりたい」といくつかの保育事業を運営してきました。特に認可保育園の安定した基盤の上で行う「一時保育」は、柔軟な対応ができる点で意義が大きく、2017年に開園した小規模保育園りとる・ピッピでも、4年後の4月に「定員5名」でスタートすることにしました。

始めるにあたっては、もともと2戸分の壁を打ち抜いて使用していたマンションに1戸分の部屋を追加。一時保育の専任スタッフも確保し、さらにアレルギー対応の給食メニューを提供できる体制も整えました。

対象は在園児と同じ「57日〜2歳児」とし、利用者負担は「1時間300円」(横浜市で定められた基本料金)で設定。事前の面談を経て、曜日を固定してお預かりを約束する方法、2週間前から前日までに電話で予約いただく方法、緊急時にご相談いただく方法の、3つのパターンに対応することにしました。

■ 振り返り

コロナ禍もあり、スタート後すぐたくさんの利用者が集まったわけではありませんでしたが、市の窓口で紹介いただいたり、普段お散歩にいく公園で小さな案内カードを配ったりしながら徐々に認知を広げ、2022年度には年間の見学・登録者数が39人に。面談では、直接のニーズはもちろん、保護者が抱える「背後の課題」を丁寧にヒアリングする時間も設け、時に必要な支援機関につなげながら対応していきました。

一度利用された方がその後も使ってくださったり、口コミで広めたりしてくださる場合も多く、2023年3月にはのべ63人(1日平均3.2人)の利用がありました。63の要件としては、就労理由が41、リフレッシュ利用が11、緊急対応が10。週2〜3の就労を機に定期利用される方が増える一方で、配偶者の海外赴任などから、一人で孤独に育児をされているような方が訪れたり、家族の入院に伴い緊急的に相談されたりする場合もありました。

また、利用された保護者が園の保育に共感くださって、その後の入園につながるケースも出ています。

一時保育の利用は、子どもにとっても、近い年齢の子どもたちの中で育ち合う貴重な機会になります。発達に特性があり、療育センターにも通う子どもが、センター以外の場所で遊びを楽しんだり、さまざまな経験をしたりするために来るようにもなっています。

また在園児たちも、さまざまな子どもと触れ合うなかで、新たな姿を見せてくれることがあります。まだ小さいと思っていた子どもたちが、新しく来た赤ちゃんを気にかけ、「かわいいね」「ちっちゃいね」「今ちょっと寂しいのかな」と言葉にするのを聞いて、保育士が驚くことも度々ありました。

その日限りの利用となる子どもと一緒に過ごすなかで、職員にも変化が見られています。子どもたちをよく見守り、「今この子はどんなことをしたいかな」「今日を楽しく過ごすために、何ができるかな」と、目の前の一つひとつの保育をより大切に捉えていくようになりました。

■ 「小規模保育」としての視点

近年、男女を問わず育休が推進されたり、待機児童が解消されてきたりする一方で、慣れない育児に戸惑うご家庭は多く、乳幼児の「一時保育のニーズ」そのものは高まっていると感じます。先ほどの1カ月63人の内訳でも、「0歳児」が34と、過半数を超えました。子どもにどう寄り添えばいいか悩まれている保護者が、一時保育の利用をきっかけに、ちょっとした育ちや変化に気づかれていくケースも実際よく目にします。

横浜市の場合は、一時預かりWEB予約システムを導入したり、0歳児の無料利用枠をつくったりと、こうした支援に特に積極的だと感じます。一方で、利用ニーズの増加にくらべ、園側の対応が追いついていない状況もあります。

そうした中で、そもそも0〜2歳の子どもたちが小さな集団で暮らす小規模保育園は、重要な存在となりえます。丁寧なゆったりとした関わりができる点で、乳幼児を受け入れやすく、地域の子育て家庭の課題にも気づきやすい。社会的な認知や制度の拡充を機に、より地域に開かれた園となるためにも、一時保育には今後も力を入れていきたいと考えています。

【園情報】
りとる・ピッピ(特定非営利活動法人 ピッピ・親子サポートネット)
https://npo-pippi.net/littlepp/
青葉区市が尾町1065−5 市が尾森ビル5番館104・105
定員12名
小規模保育事業A型・管理者設置あり


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