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子どもたちに「稽古開始」の号令を任せる理由

 皆さんは学生時代、「キ~ンコ~ン カ~ンコ~ン♪」の音で慌てて着席した経験はありませんか。私は、中学、高校時代に「コラ~!!」と先生に叱られながら教室に入った経験が何度もあります。「チャイムを守りなさい」。これは学校生活で何度も教わることです。しかし、「チャイムがない学校」も存在するのをご存じですか。私が以前見学をさせていただいた栃木県のある中学校は、チャイムがないにも関わらず、全クラスが授業の開始時刻前に着席し、整然と授業を受けていました。それは集会や行事なども同様で、先生が指示をしなくても、決められた時刻に全校生徒が集合するそうです。
 学校全体に落ち着いた時間が流れているように感じました。生徒さんたち、先生方の穏やかな表情がとても印象に残っています。


 時計を見て行動する習慣はとても大切です。この習慣を身につけるために、咲柔館では稽古開始の号令をお子さんたちに任せています。もちろん、開始時刻を過ぎてしまうことも想定内です。そのような経験も大切な勉強だと考えています。
 先日は、開始時刻3分前に「どうぶつしょうぎ」を始めました。お子さん達は、今を全力で楽しむ達人です。私は「どうやって開始時刻に間に合せるんだろう。」と興味深く見てみました。2人とも時間が短いことは十分理解しており、どんどんコマを置いていきます。しかし、3分間で勝負をつけ、片づけまで終えるのは難しそうです。開始時刻から1分30秒ほど過ぎた所で時間に気づきました。急いで片づけた後は、何分過ぎてしまったのかを確認です。こうした経験を重ねるうちに、お子さんたちは少しずつ時間を守れるようになっていきます。

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 この他にも、読書や宿題に集中するあまり、開始時刻に気づかない事もあります。私が「開始まであと〇分前だよ」「すぐに片づけて」と言うのは簡単です。ただ、それでは「誰かに指示、管理されなくては動けない人」になってしまう可能性があります。大切なのは、自らを律する心です。多少時間がかかったとしても、自分で時計を見て動く習慣を身につけてほしいと思います。 


 春休みになり、お子さん達はいつもと違うリズムで生活を送っています。だらだらとした日々を送ってしまう心配もあるでしょうが、ここも大きな成長のチャンスです。「〇日までに宿題を終える」「春休み中に本を〇冊読む」「〇時に寝て、〇時に起きる」といった時間や期限に関わるルールを自分、もしくは親御さんと一緒に決め、それに沿った行動を心がけることで、少しずつ自律心が養われていきます。春休みに自律した生活を送ることが、次の学年に向けた最も大切な準備です。


 柔道場では、時間を守る習慣だけでなく、礼儀作法、挨拶、言葉遣い、靴をそろえる、洋服をたたむ、掃除、整理整頓など、社会生活に必要な基本的習慣を身につけることができます。お子さん達が、道場生活で身につけた習慣は一生の宝です。「人生の土台作り」に柔道をご活用してみてはいかがでしょうか。


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