【書評】俯瞰の視点で、地方の“から元気”に愛と喝!評者:つぐまたかこ
「田舎の力が未来をつくる!~ヒト・カネ・コトが持続するローカルからの変革」金丸弘美著
「地方が注目されている」とか、「地域おこしの風が吹いている」とか。そう言われて何年たつだろう。確かに東京に一極集中していた視点やものの流れは、地方に向けられ始めているような気がする。国からお金もずいぶん流れているようだし。
しかし、それが「点」であったり、いっときの「瞬間芸」であったりすることが、地方に住んでいるとよくわかる。ローカルニュースでは「こんなに頑張っている人がいます」「こんな町おこしが行われています」「特産品でおみやげを作りました」といった情報が流され、 “おらが村”が繁栄するんじゃなかろうか、という錯覚に陥るが、決してそうではない。
「点」を広げていかなくては、「瞬間」を継続する時間にしていかなくては、繁栄につながらない。そのためには、サブタイトルにもあるように『ヒト・カネ・コトが持続する』ことが必要だ。しかし、一番大事なのは「俯瞰で見ること」ではないかと思う。悲しいかな地方にいると、気をつけていないと自分が住んでいる地域の情報にばかり囲まれてしまう。また、グリーンツーリズムと6次産業化、再生可能エネルギーなど、微妙に違う方向性のものが交わらずに動いていることも多々目にする。
著者金丸氏は、その「俯瞰の目」を持って日本のみならずヨーロッパを行脚しながら「ローカル」を見つめ、拾い、事例を紡いだ。だから本書は「この村、この人、がんばっているね」ではなく、「仕組みはこうなっている」「こうやって人を動かしている」というノウハウが惜しげもなく紐解かれ、点を面にし、瞬間を継続させて地方を元気にするヒントのようなものが、そこかしこにちりばめられているのだ。しかも「このヒントに気づける?」というちょっと挑発的なスタンスで。
発刊から2か月が過ぎた。その間、何度も読み返した。書評を書くためだけではなく、関わっている生産者さんや自治体へ向けてのヒントはないか?と思いながら。
不思議なことに、読み返すたびに新しいヒントを見つけてしまうのだ。おそらくその時々で自分が抱いている問題意識が異なっているからだろう。文脈に紛れて、また章をまたいで、まるで地雷のように潜んでいるヒントたち。金丸さん、いったいいくつ隠しているの?
評者:つぐまたかこ【会員番号113】
金沢町家に住む、食いしん坊を仕事にした女
㈱リクルート退職後、独立。1998年4月より金沢市に暮らす。食の専門誌、女性誌や地元紙などに執筆。執筆活動に加え、「加賀野菜」の普及や加賀の伝統猟「坂網鴨」のブランディングなど、食のブランド化や商品開発のプロデュース、メニュー開発に関わり、テレビ・ラジオ番組出演、イベント企画、講師・講演なども行っている。農商工連携アドバイザー石川会長、NPO法人アグリファイブ副理事長。
資格/青果物ブランディングマイスター、野菜ソムリエPro、フードツーリズムマイスター、べジフルビューティーセルフアドバイザー、ティーアドバイザー ほか
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