「弥生の精進料理」 2015年3月
草木が弥生(いやお)い茂ることから〝弥生"といわれるようになったといわれますが、まさにたからの庭もそんな感じ。木々たちにはかわいい新芽が一杯です。
今月のメインイベントは何といっても上巳の節句ですね。また水辺で手足を清めたあと薬草を踏んで邪気を払う「踏青」などもありますね。
たからの庭ではちょうどお彼岸に毎年椿祭を行っていますが、まさに暑さ寒さも彼岸までを実感するポカポカ陽気に毎年恵まれております。
今月は、春ならでわの山菜の天ぷら追い込み煮の技法を使ったお寿司などをいたしました。
1.追い込みちらし 2.若竹汁 3.山菜天ぷら 4.菜花の辛子浸し 5.わけぎと湯葉の辛子酢味噌和え
1.追い込みちらし
ちらしの具は普通はバラバラに煮て、合わせるという方法をとりますが、これは1つの鍋で徐々に調味料を加えて煮ていく"追い込み煮"という江戸料理の技法を使ったお寿司です。
私も初めて学んだときはなんて便利なんだろうと感動したものです。具が甘いので打ち酢には砂糖を入れないのも珍しいかと思います。ぜひ定番料理にしてください。
材料:米2.5c、水575cc
打ち酢(米酢60cc、淡口小2)
・人参80g
人参煮汁(出汁1/2c、砂糖大1、醤油大2)
・干し椎茸3枚
干し椎茸の煮汁(人参煮汁の残+砂糖・醤油各大1/2)
・油揚1枚
油揚の煮汁(干し椎茸の煮汁+砂糖大2、醤油大1/2)
・蓮根50g
甘酢(米酢大3、砂糖大1/2、塩少々)
絹さや50g、紅生姜適宜、もみ海苔適宜
1)米は研ぎ、ざるにあげて15分は置き、浸水してすぐ炊き始める。水加減は通常の炊飯より少なく15%増しにしてください。またかつては湯炊きをしていましたが、最近のお米は乾燥しすぎているので、水で炊いていきます。
2)具を作る。人参を3cm位の長さの千切りにし、冷たい出汁に入れ温まったら調味料を加え、やわらかくなるまで煮る。
3)干し椎茸を戻し千切りし、2の鍋から煮あがった人参を取り出して、調味料を追加して煮ていく。
4)3の鍋から椎茸を取り出し、さらに調味料を加え、油抜きして線切りした油揚げを煮る。
5)炊きあげて10分ほど蒸らしたご飯を飯台に取り、打ち酢を上から1か所にさっとかけ、飯を上下に大きくひっくり返しながら混ぜていきましょう。この時にはうちわであおぎません。べたべたしてしまうからです。
6)煮あがった具を5に加え混ぜながら、うちわであおぐと、とってもいい艶がでてきます。ガビガビにならないように濡れ布巾をかけておいてください。
7)上に乗せる具を作る。蓮根は皮をむき、4つ割にして薄切りしたら、鍋に酢水をつくってそこに入れて、そのままゆでて、ザルにとり、甘酢に漬けておきましょう。甘酢の作り方は、上記材料を鍋に入れて火に掛け、砂糖が溶けたらOK。
8)絹さやは筋を取り、熱湯に塩一つまみ入れゆでで3cmくらいに線切りし、水に放っておく。すると種が浮いてくるのでその種は使いませんので、捨ててください。
9)ちらしを盛りつけ、もみ海苔、蓮根、紅生姜、絹さやを上にもって出来上がりです。お土産、お弁当にもいいですよ。残ったら翌日は蒸し寿司にしても美味です。
2.若竹汁
走りの小さい筍は柔らかくてとっても美味しいですよね。ちょっと贅沢気分でいただきましょう。若布とは「であいもの」といって旬が重なる相性の良い材料です。
材料:筍水煮100g、若布20g
出汁5C、塩・淡口各小1
1)筍の水煮はくし型に食べやすい大きさに切って、さっと熱湯でしもふる。これは、水っぽさを取り除くこと、殺菌の2つの理由からします。
2)若布は洗って塩をとり、食べやすい大きさに切っておく。
3)出汁を温め、調味し吸い地を作る。
4)3をお玉1杯分小鍋にとって味醂・淡口少々で味をつけ(分量外)、1,2を温めてつつ、薄味をつけ、椀にもり、吸い地をはる。 好みで吸い口に木の芽を使っても春ってかんじでいいです ね。
3.山菜天ぷら
山菜は春ならでわのご馳走ですね。ほろ苦成分は植物性アルカロイドといって、デトックス効果があり、季節の移り変わりの体調保全にもいいんですよ。全く自然は良くできていますよね。たからの庭に咲いている柔らかい雪ノ下の新芽も少しいただいて沢山揚げました。
材料:独活、タラの芽、こごみなど山菜各種、揚げ油適宜
衣:小麦粉1C、水150cc、片栗粉少々、塩少々
1)山菜はさっと洗って水気をよくふきとっておく。
2)衣を作る。衣の材料をボールに入れ、粘り気が出ないように注意しながら混ぜてください。精進料理の天ぷらは"油滋(ゆじ)"といって、衣自体に味がついているのが特徴。なので脇に塩をおいたり、天汁などがないんです。
3)1に軽く粉をうってから衣にくぐらせ、170度程度で揚げていく。こうすると衣が取れにくく、また油はねもありません。
4.菜花の辛子浸し
菜花がちょっと沿わせてあるだけで、春って感じになりますよね。普段は脇役ですが、今日は単体で使って主役になってもらいます。同じアブラナ科の辛子とは抜群の相性です。
材料:菜花1把、塩少々、ガーゼ
漬け地:出汁1/2C、塩小1/2、淡口・味醂・練り辛子各小1
1)菜花は1時間程度水あげしてから茹でて水にとり、色止めしたらザルにあげておく。この水揚げ、大事です。茹で時間も短縮できるんですよ。
2)漬け地の材料を混ぜあわせたら、1をバットに並べて、上にガーゼを乗せて漬け地をかけ15分程度おき、味を含ませてから器に合わせて2~3等分に切り盛り付ける。辛子は意外と溶けませんので、必ずガーゼを敷いた上から漬け地はかけてくださいね。また作ってすぐに食べない場合は、漬け地の辛子以外の材料に一度を火を通して置いてください。
5.わけぎと湯葉の辛子酢味噌和え
湯葉は精進料理になくてはならない食材のひとつ。旬のわけぎと生の平湯葉を使っての辛子酢味噌和えです。ピリッとした辛子とまったりした練り味噌がとってもよいハーモニー。湯葉の歯ごたえも楽しい春のひと品です。練り味噌は作っておくと保存も利いて大変便利です。
材料:生平湯葉1枚、わけぎ1束、
練り味噌:白味噌100g、砂糖大2、酒大1、酢大3、練り辛子小1
湯葉煮汁:出汁1/2C、淡口少々
1)わけぎは3~4cmの長さに切り、太いほうからさっと油でいためる。 普通はゆでますが、油でいためるほうがよりお手軽です。またいためることにより香ばしさもプラスされますよ。
2)湯葉は食べやすい大きさに切って、出汁に淡口少々でさっと煮ておく。 こうやって下味をつけておくことが料理を美味しくするコツです。
3)白味噌に砂糖・酒を加え、丘まぜしてから火に掛け、軽く練って荒熱が取れたら酢と辛子を加える。丘まぜとは日本料理独特の言い回しで 、火にかける前に材料を混ぜておくことを言います。
4)食べる直前に3に1と2を混ぜ合わせる。
レシピ&原稿:温石会 入江亮子(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 3月の献立より)