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「弥生の精進料理」 2016年3月

3月といえば、ひな祭りに始まり、啓蟄、そしてお彼岸を過ぎるとまだ肌寒さは少し残るものの、ポカポカ陽気も増えて暑さ寒さも彼岸までとはよくいったものだなぁと毎年思います。

たからの庭の3月は、恒例の椿祭。本当に世界一美しい真っ赤な椿が咲き乱れ、その回りではお茶席や、椿油マッサージ、ナチュラルフード、もぎたての無農薬野菜を使った料理などが並びます。そこに集ったすべての人がほっこりなれる、そんな心温まる「春が来た!」をシェアするイベントなんです。まだ知らない方、ぜひ来年お待ちしています。
さて、今月は新じゃがや菜花、山菜を使って芽吹きを意識した料理にしました。滋賀や有田の郷土料理も登場しています。どれもとても簡単に作れます。早速どうぞお試しを。


1.金柑ご飯  2.群雲汁  3.呉豆腐の山菜餡かけ 4.新じゃがの磯辺揚げ  5.丁字麩と菜花の辛子酢味噌和え

1.金柑ご飯
金柑はのどにいいとか風邪に効くということは知られていますよね。でも大体生か甘露煮にして食べるくらいしか思いつかないのではと思います。精進料理ではよくおかゆに入れるのですが、今回は炊きこみご飯にしました。種が気になる方もいるので、最初に半分に輪切りして、種を抜いてから炊きこみます。金柑の良い香りと甘酸っぱい味わいで意外といけますよ。カラフルなのでお弁当にもいかがですか。

材料:米2.5C、昆布出汁3C、金柑12~13個、塩小1弱

1)米は洗ってざるにあげて15分くらいおきます。
2)金柑はよく洗ってヘタをとり、1/2に輪切りして種をぬいておきます。

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3)1を調味し、20分おいてから2を入れてたきます。

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4)10分置いて天地返しをして盛り付けます。好みで白胡麻を振ってもいいでしょう。

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2.群雲汁
日本料理で群雲汁というと、かき玉汁のことをいいますが、卵の代わりに手軽に入る乾物の干し湯葉を使って作りました。湯葉からも繊細な甘みのある出汁が出ます。具が沈まないように片栗粉で薄めにとろみをつけておくのがポイントです。

材料:混合出汁5C、茗荷3個、片栗粉大1、干し湯葉適宜、塩小1/2、淡口小1

1)茗荷は縦1/2に切ってから斜めに千切りしておきます。

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2)干し湯葉は食べやすい大きさに割っておきます。
3)出汁を温めて湯葉を入れて数分炊き、良い出汁をしっかりだしてから調味します。

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4)水溶き片栗粉でとろみをつけて茗荷を入れて火を止め、椀に盛ります。茗荷はあまり火を通しすぎるとくたっとするだけでなく、退色しますので、入れたらすぐに火を止めてくださいね。

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3.呉豆腐の山菜餡かけ
呉豆腐は有田の郷土料理。呉とはそもそも大豆をつぶした汁のこと。通常の豆腐はにがりで固めるところを、葛や片栗粉といったでんぷんで固めたものです。ルーツは中国から伝わった精進料理の普茶料理「胡麻豆腐」とされています。つるんぷるぷるとした食感で、味わいも優しく、癖になる味です。
今回は隠し味に練り胡麻も少し加えています。また流し缶がなければ湯のみにラップを敷いてスプーンで適量入れて、輪ゴムで止めて冷水で冷やしても結構です。山菜あんかけにしましたが、もちろん醤油とわさび、練り味噌などでも美味しく召し上がっていただけます。比率は水分(今回は豆乳と昆布出汁)5:葛1で覚えてください。

材料:呉豆腐:豆乳2C、昆布出汁1C、本葛粉1/2C、練り胡麻大1、塩少々、流し缶(小)
うるい2本程度、タラの芽3本、蕗1/4本、木の芽適宜
混合出汁2C、味醂大3、淡口大2、片栗粉大2(同量の水)

1)豆乳と昆布出汁に葛粉、練り胡麻を溶かしておき、最低1時間はおきます。葛は融けにくいのでできれば一晩が理想です。

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2)鍋に沈んだ葛をよく混ぜつつ火に掛け、しっかり中火で練って、最後に塩少々を入れて火を止め、ぬらした流し缶に一気に入れて冷まします。火が弱いと腰が出ませんので頑張って力の限り、一生懸命練ってください。

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3)うるいは熱湯でさっと茹でて水に取り、2~3cm程度に切っておきます。タラの芽は袴の部分をとり、やはりさっとゆでて水にとり縦1/2に切ります。蕗は塩ずりしてたっぷりのお湯でゆでて水にとり、小口に切っておきます。山菜はこのあと餡にするので、柔らかくする必要はないのですが、アクが強いので、そのままでは汁が黒くなってしまうので、あらかじめ軽くゆでておくのです。水にとるのは色止めのためです。ですので、水がぬるいとさらに火がはいりすぎてしまったり、青々しくなりませんので、冷水が大事ですよ。

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4)出汁を温めて、調味し、水溶き片栗粉でとろみをつけたら、山菜を加え火を止め、呉豆腐の上にかけて天に木の芽を乗せます。

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4.新じゃがの磯辺揚げ
皮も美味しくてかわいい新じゃがを同じく新もののあおさ海苔をまとわせて揚げた1品です。あまり長くあげていると、海苔がこげてしまうので、あらかじめジャガイモを蒸しておくのがポイントです。また、精進料理の揚げ物は衣に味をつけておくのが基本。今回も衣に塩を入れて揚げています。

材料:新じゃが各50g、小麦粉適宜、新あおさ海苔(乾燥)10g、天ぷら粉100g、水1/2C、塩小1/3、揚げ油適宜

1)新じゃが芋はよく洗い、皮ごと軽くふかしてから1/2に切って、打ち粉(分量外)をふっておきます。打ち粉を振ることで衣が付きやすくなります。ただし、あまり早くつけてはいけません。揚げる直前にふりましょう。

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2)衣を作り、塩、青さのりを加えてよく混ぜ、1をくぐらせます。

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3)170度でからっと揚げます。

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5.丁字麩と菜花の辛子酢味噌和え
丁子麩は滋賀の近江八幡を代表する特産品。四角い形は、戦国時代に豊臣秀次が近江の整然とした街並みを気に行って四角く作らせたのだとか。また、このほうが丸い形より割れにくく携帯によかったようです。現地では辛子醤油を絡めて食べることが多いのですが、今回は菜花と辛子酢味噌で和えました。菜花と辛子は同じ種なので、相性もいいんですよ。麩のくちゅっとする独特の食感と菜花のさくさくとがまた楽しいです。

材料:丁字麩8個程度、菜花1/2把、練り味噌大4程度、辛子小1/2、酢大1
八方地:昆布出汁1C、みりん・薄口各小1

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1)丁字麩は3等分に切って、水に漬けてやわらかくしてから軽く搾り、薄い八方地でさっと炊いておきます。八方地というのは、八方美人と同じでいろいろに使えるということから付いた名で醤油やみりん、酒などで作った調味液のことですが、基本は出汁10:みりん1:醤油1です。ですので、今回は薄めの八方地ということになります。

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2)菜花はゆでる1時間前には水に放っておき、水揚げをします。そうすることにより早くゆであがり、また筋張らず柔らかくゆで上がります。熱湯に一つまみの塩を加えてゆがき、きあげ(水にとらずに笊にあげること)してすぐに団扇で扇いで冷ましてから、3cm程度に切っておきます。水にとらずにきあげする理由は、水っぽくしないためです。

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3)練り味噌に辛子と酢を加えて酢味噌を作り、食べる直前に軽く絞った麩と菜花を混ぜ合わせます。

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レシピ&原稿:温石会 入江亮子
(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 3月の献立より)

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