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「卯月の精進料理」 2015年4月

4月に入り新年度を向かえ、新しい生活が始まりました。鎌倉も、桜だけでなく、みつまた、かいどう、雪柳、あせび、ぼけ、たんぽぽ、はなにら・・・一斉に春の花が咲き誇って、散策に最高の季節を迎えています。
さて、料理のほうは、汗ばむ日もあったりするので、筍でさっぱりとした御寿司をつくりました。合わせるお椀はアスパラガスの青々しい味わいを生かし涼しげな味わいに。胡麻豆腐は黒胡麻と白胡麻で鯨を模したもどき料理を。お惣菜の定番にしていただきたい卯の花煮や中華の家常(家庭)料理、じゃが芋とピーマンの炒め物も、旬の新じゃがを使って和風に仕立ててみました。どれも簡単にできますので、お試しください。

1.筍寿司 2.アスパラのすり流し椀 3.鯨豆腐 4.卯の花煮 5.新じゃがのピーマン炒め


1.筍寿司
やわらかく細い筍を使ってのお寿司です。出会い物(同時期に旬を迎え、料理の相性がいい食材のこと)の若布、木の芽はぜひ一緒に使ってくださいね。甘くない御寿司なので、お酒のアテにもいいですよ。

材料:米3C、水690cc、筍200g、若布50g、木の芽適宜
打ち酢:米酢60cc、淡口大1
煮汁:出汁1/2c、砂糖・酒各大1、醤油大1強

1)筍は食べやすい大きさに薄くスライスして、さっとしもふります。筍はゆでてから水に漬けて保存しますが、水っぽさを抜くために行います。しもふったら、ザルにあげておいてください。

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2)若布は洗って塩を抜いて食べやすい大きさに切っておきます。水に漬けておくとふやけてやわらかくなりすぎてしまうので、塩は洗って落とすこと、これ、大事です。
3)出汁に筍をいれ、砂糖を加え数分してから酒、醤油を入れてさらに数分煮て、若布を入れたら火を止め冷ましておく。筍は味が入りにくいので、まず分子の大きい砂糖から先に入れます。

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4)米は洗ってざるにあげてから水加減し、炊きます。寿司飯の水の配合は15%増しにしてください。普段より5%水分を少なくします。昔は湯炊きといって、熱湯を入れてすぐ炊き始めましたが、最近のお米は機械乾燥が多いため、水から炊くことにしています。浸水時間を置かないのも寿司飯を炊くコツです。
5)4を10分蒸らし、打ち酢をして、飯に酢をいきわたらせてから、汁気を切った3を加え、団扇で扇ぎつつ、よく混ぜ合わる。打ち酢は酢と醤油を混ぜるだけで火にかけたりはしません。また、扇ぎならが打ち酢をする方がいますが、粘ってきてしまうので、団扇で扇ぐときは具を混ぜるときにしてください。また、ご飯が冷えていると団子状になって具が良く混ざりませんので、必ず温かいうちに混ぜてくださいね。

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6)盛り付けたら叩き木の芽を乗せて食べます。叩き木の芽というのは、木の芽を包丁で荒く微塵切りにすることです。手のひらでぴしゃっと叩くのではないので、ご注意を!


2.アスパラのすり流し椀
私たちになじみ深い野菜のひとつ、グリーンアスパラ。カロテンやビタミンB群が豊富で、穂先には抗酸化作用があるルチンが多く含まれている栄養野菜でもあります。またその名も「アスパラギン酸」というアミノ酸の一種が多く含まれているのですが、それには疲労回復効果もあります。
1年中スーパーに売っていますが、今は春芽の旬です。白や紫などのアスパラでも同様につくれますので、色々と試してみてください。

材料:グリーンアスパラガス1.5束(150g)、グルテンミートのあられ適宜、水溶き辛子適宜
出汁5C、塩・淡口・酒各小1、片栗粉大1(同量の水で溶いておく)

1)アスパラガスは、下の部分だけピーラーで皮をむき、塩を入れた熱湯で茹で、水に取る。 水にとるのは色留めのため。しっかと冷たい水を使いましょう。
2)1.の穂先を飾り用に3cm程度残し、残りを軽く刻んで、出汁の半量を加え、ミキサーにかける。 

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3)残りの出汁を温め、調味し、片栗粉でとろみをつけて2を混ぜ合わせる。片栗粉でとろみをつけるのは、アスパラと汁の分離を防ぐためと、穂先を浮かせるためです。

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4)椀に3を注ぎ、穂先のアスパラとグルテンミートのあられを散らし、水からしをたらす。吸い口(汁ものに添えられる香りのもののこと)は、水溶き辛子にしましたが、木の芽でも結構です。


3.鯨豆腐
精進料理にはがんもどきをはじめ、さまざまなもどき料理があります。肉食をしてはいけないという決まりごとの中で産まれたユーモアと工夫溢れるもどき料理が私は大好きです。そんなひとつに鯨豆腐があります。鯨の皮の部分を黒胡麻で、脂肪の部分を白胡麻で作ります。それぞれの違う味わいと両方が溶け合った味わい、いくつもの味が楽しめて、かつ見た目も面白い料理です。追善の茶事や朝茶事などでもよく向付に使われます。

葛粉100(75g程度)cc、出汁500cc、黒練り胡麻30cc、白練り胡麻70cc、塩少々、味醂各小1、流し缶(中)
おろし生姜適宜、出汁醤油(醤油と昆布出汁同割合)適宜

1)葛粉に出汁を加え、よく溶かしておく。1時間以上は置いたほうがいいです。
2)1を1:2に分け、それぞれに練り胡麻を加えて混ぜて一度漉し、白から火に掛け練り上げていく。しっかと鍋をやっとこなどで押さえつつ、しゃもじで延々と練っていきます。最低20分程度は練ってください。鍋の縁についた生地もしっかりととりつつ、練ってください。あまり弱火だと弾力が出ません。黙々とまさに修行のように練っていきます。

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3)しゃもじで鍋底に一文字が引ける用になればOK!最後に塩少々と味醂を加えて火を止め、すぐに水でぬらした流し缶に流し、平らにしておきます。

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4)続いて、黒胡麻の胡麻豆腐を同様に作って、白胡麻の胡麻豆腐の上に流し冷やし固めます。このとき、なるべく冷蔵庫に入れないほうがいいです。本葛ほど、固くなってぼろっとしてしまいます。

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5)食べやすい大きさに切って盛り付け、生姜おろし、天盛りし、醤油と出汁を同量で割った出汁醤油をかけて食べます。


4.卯の花煮
おからのことを別名"卯の花"と言いますが、本物の卯の花もまさに小さくて白い花をちょうど今頃咲かせます。常備菜として、色々なお野菜を入れた卯の花煮を作りました。干し椎茸や野菜、昆布のうまみをおからがぎゅっと封じ込めてくれます。お弁当や箸休めにもぴったりの懐かしい甘辛いお味ですよ。

材料:卯の花1C、サラダ油大1、糸蒟蒻50g、わけぎ1本、人参40g,干し椎茸2枚
出汁1C、砂糖大3、醤油大2

1)糸蒟蒻はゆでて食べやすい大きさに切っておく。
2)人参は2cmの長さの千切りにしておく。
3)わけぎは小口切りにしておく。
4)干し椎茸は水で戻し、千切りにしておく。急ぐときはお湯で戻してください。でもゆっくり戻したほうが不思議と美味しいんです。椎茸は搾ってはだめですよー。

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5)鍋に油をしき、糸蒟蒻、人参、わけぎをさっと炒め、卯の花を加えなじませ、出汁を加え煮立ってきたら砂糖と醤油で調味して、火を止め、少し置いてから食べてください。翌日のほうが美味しかったりもします。ほかには蓮根や牛蒡など、好きなお野菜を入れて彩りよく作ってみてくださいね。

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5.新じゃがのピーマン炒め
中華の家庭料理を家常菜といいますが、東北地方の「尖椒土豆絲」をヒントに、ゆでるときに調味するという中華料理の調理法を入れてレシピを起こしてみました。

材料:新じゃが中4~5個(400g程度)、ピーマン1.5個、サラダ油大1、昆布茶ふたつまみ程度、ごま油大1.5
下茹で用:昆布出汁5c、塩大1弱、砂糖大1/2、サラダ油大1

1)新じゃがは洗って、千切りにして水に5分程度さらし、ザルに揚げて水気を切る。
2)ピーマンも千切りにしておく。
3)下茹で用の調味料を沸かし、沸騰したら1を入れ、再沸騰する直前にザルにあげて水気をよく切っておく。

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4)鍋に炒め油を敷いてピーマンを軽くいため、3を入れてすばやく混ぜ合わせ、調味し、最後に香り付けにごま油を回しかける。

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レシピ&原稿:温石会 入江亮子(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 4月の献立より)


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