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「皐月の精進料理」 2016年5月

なんとも気持ちの良い季節到来ですね!目に青葉、山ほととぎす...は、江戸時代の句ですが、たからの庭のことを詠んだのでは?と思いたくなるような、まさにぴったりの句。緑一色、薫風そよぎ、すっかり上手くなった鶯の歌を聞きつつフィトンチッドいっぱいの庭にいますと、すっーと世間の毒気というか、力んでいた自分が素に戻れますね。

これから梅雨を迎え鬱陶しくなる前のほんのひととき、端午の節句で大分ではよく作られる郷土料理の黄飯、その黄飯にかけるかやく、やさしい味わいの豌豆とズッキーニのすり流し、新玉葱や新人参の柔らかく甘い魅力を生かした献立をいたしました。どれも簡単に作れますよ!

1.黄飯  2.精進かやく  3.豌豆とズッキーニのすりながし 4.新玉葱のソテー ポン酢餡かけ 5.新にんじんのしりしり

1.黄飯
黄飯は、大分県臼杵市の郷土料理。「おうはん」と読みます。愛知や静岡にも同様の料理がありますが、それぞれ「きいはん」「きめし」と言ったりしています。もともとはスペイン料理のパエリアから来た説が有力です。大分では当主大友宗麟がキリシタンだったので、南蛮文化の影響を食文化でも多く受けていたんですね。
黄色い着色にはスペインではサフランを使いますが、日本では手軽に手に入る梔子の実を使います。黒豆も乗せますが、もしかすると黒オリーブの代わりなのでは?と思ったりもします。地域によっておひな祭りだったり、大晦日だったりしますが、一番多く食べられるのは端午の節句です。ちまきだけでなく、南蛮渡来のご飯でお祝いするのも楽しいですよ。

材料:米2・1/2C、梔子(くちなし)の実2個、水3C、塩小3/4
黒豆の煮豆適宜

1)米は洗ってざるにあげておきます。
2)分量の水に梔子の実を割っていれて、色を出しておきます。

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3)鍋に米と色がでた水だけを入れて塩で調味して、15分程度浸水して炊飯します。梔子の実のかすが入らないように、色がついた水は漉して使ってくださいね。また、浸水して長く置くと、きれいな黄色に炊きあがりませんので、注意してください。

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4)炊き上がりを茶碗に盛り付けたら煮豆を数個飾ります。

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2.精進かやく
黄飯にかかせないのが、かやく。簡単にいえば汁が少なめの建長汁といったところでしょうか。地元大分では魚のすり身と大根や人参を入れて煮て、黄飯にかけて食べますが、最近は別々に食べるようです。精進なので、すり身の代わりに豆腐をたっぷり使い、野菜のうまみたっぷりの滋味あふれる煮物に仕立てました。

材料:大根300g、にんじん30g、ゴボウ1/3本、木綿豆腐1/2丁、昆布出汁3C、サラダ油適宜、みりん大1/2、淡口大1、酒大2、塩少々万能ネギ適宜

1)大根、にんじんは3cm程度の長さの拍子切りにします。
2)ゴボウはささがきにして水に放っておきます。

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3)豆腐は水切りしておきます。
4)鍋に油を入れて、水切りした豆腐を崩しながら入れて軽く煎ったら、ほかの野菜を全部加えます。先に豆腐を炒めると汁が濁りにくいんですよ。さらに炒めて出汁を入れて調味し、柔らかくなるまで煮ます。

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5)盛り付けて、彩りに万能ネギの小口切りをふります。

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3.豌豆とズッキーニのすりながし
豌豆(えんどうまめ)の美味しい季節です。豌豆だけですとざらっとした舌触りになりやすいのですが、ズッキーニが入ると、つるっとしたテクスチャーになって、飲みやすくなります。今までは生クリームを入れたりするレシピで作りましたが、今回は豆乳でさっぱり仕上げました。温めても冷たくしても美味しくいただけますよ。

材料:豌豆さやつき300g、ズッキーニ1本、タマネギ1/4個、オリーブオイル適宜、バター大1、
昆布出汁3C、塩小1/2弱、豆乳1C、コショウ少々

1)豌豆は作る直前さやから取り出します。必ずさやつきを買ってください。豆の柔らかさが違います。

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2)ズッキーニはスライスしておきます。薄い方が早く火が通ります。
3)タマネギはみじん切りにしておきます。
4)1を塩ゆでします。豆の鮮度にもよりますが、沸騰したところに入れて3分程度でよいでしょう。ゆであがったら水にとってください。
5)鍋にオリーブオイルとバターを入れてあたたまってきたらタマネギを炒め、透明感が出たところで豌豆とズッキーニ、出汁を加え5分加熱します。バターはこくを出すために使用しますが、苦手な方はオリーブオイルだけでも結構です。

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6)ミキサーで5を攪拌してから鍋にもどして、豆乳を入れ、温まったら調味します。冷やして召し上がる場合は少し塩を強めに調味して、冷蔵庫で冷やす前にしっかり粗熱をとってから冷やすと早く冷えるし、痛みも少ないですよ。

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4.新玉葱のソテー ポン酢餡かけ
新玉葱は辛みも少なく、水分もたっぷりで美味しいですよね。まんまソテーにしてきりっとした即席ポン酢でいただきます。簡単ですが、ポン酢にとろみをつけてソース仕立てにすることによって、それなりに立派なひと品になります。

材料:新玉葱各1/2個、絹さや各2本、片栗粉大1弱(水大2)、塩・コショウ適宜、日本酒大1
サラダ油適宜、ポン酢(レモン汁・醤油・みりん各大1)、水とき辛子適宜

1)新玉葱は皮をむいて輪切りにし、軽く塩・コショウを振ります。
2)絹さやは筋を取って、湯がき、水にとっておきます。
3)ポン酢の材料を混ぜ合わせておきます。
4)フライパンに油を敷き、1を途中酒を振りつつ表裏焼きます。酒を振ると風味が増すだけでなく、早く焼き上がります。そこにぽん酢を少々かけて焼き付けます。

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5)焼けた玉葱を器に盛り付け、フライパンに残りのぽん酢を入れ、味を見て辛いようなら出汁を少し足し、水とき片栗粉でとろみをつけて玉葱にかけます。絹さやを添えて、水とき辛子をかけて召し上がってください。

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5.新にんじんのしりしり 
しりしりは沖縄の郷土料理。人参を千切りにして炒めて作る料理で、沖縄では千切りのことをしりしりというのでその名がつきましたが、炒めるときしりしりという音がするのでついたという方もおいでです。主に卵でとじたり、ツナを入れたりしますが、精進料理ですので、たっぷりと煎りごまに人参のうま味を吸わせました。お弁当や、なにか一品足りない時の副菜にぜひどうぞ。人参にカロチンが多く含まれているのはよく知られていますが、油と調理するとビタミンAとしての吸収率が高くなるんです。葉付きが買えたら、ぜひトッピングに使ってくださいね。

材料:普通のオレンジのにんじん2本、黄色人参1本、サラダ油適宜、白煎りごま大2~3、砂糖小1/2、醤油大1~1・1/2

1)にんじんはマッチ棒程度の千切りにします。
2)フライパンにサラダ油を敷き、にんじんを炒め、柔らかくなったら砂糖から調味します。

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3)2に半づきした煎りごまを加え、一混ぜでできあがりです。必ず味見をして薄いようなら醤油を足してください。また砂糖は人参の甘さを引き出す程度の少量でOKです。

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レシピ&原稿:温石会 入江亮子(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 5月の献立より)


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