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「文月の精進料理」 2015年7月

ついこの間まで雨露に紫陽花が美しく映えていたかと思ったら、もう底紅の槿が満開です。アスファルトの照り返しや室外機の熱気で寝苦しい真夏日が続いていますが、たからの庭にひとたび足を踏み入れれば、心地よい風が迎えてくれます。木陰に入ればまたぐっと涼しく、汗も引いてきます。和室は風がよくとおり、夏でも冷房がいりません。ギャラリーでラムネを買ってビー玉を鳴らしながらごくり。子供のころ好きだった夏が思い出されます。
食材もすっかり夏!です。今月は五節句のひとつ「七夕」にちなみ「七夕素麺」を中心に献立を組みました。葉の裏が紫色の加賀野菜「金時草」の浸しや簡単にできるセロリの金平なども栄養たっぷりです。素麺のルーツ唐菓子の「索餅」も作りました。精進料理ではありませんが、悠久の昔に思いを馳せつつお召し上がりください。

1.七夕素麺 2.白瓜とオレンジの酢の物 3.清正人参(セロリ)の当座煮 4.金時草の浸し 5.索餅(精進ではありません)


1.七夕素麺
七夕は五節句のひとつですが、中国の故事をルーツに、日本でも七夕行事へと発展したようです。現在のように素麺を食べたり、短冊を飾る習慣が一般化したのは江戸時代といわれています。食欲も落ちる時期、つるつるとのど越しの良い素麺とカラフルな短冊に見立てた野菜で夏ばてを防いでくださいね。

材料:そうめん各1.5把、油揚各1/3枚、生椎茸各1枚、赤パプリカ1個、胡瓜1本、海苔1枚
小葱2本、古生姜1かけ、大葉各1枚
油揚げの煮汁:昆布出汁1/2c、砂糖大1、醤油小2
そうめん汁:昆布出汁3c、砂糖大4、味醂大3、醤油大2、淡口大6

1)つゆを作ります。鍋に調味料と出汁を合わせてひと煮立ちさせ、冷蔵庫で冷やしておきます。砂糖は溶けにくいのでしっかりとかき混ぜてください。
2)油揚げは熱湯をかけて油抜きし、1cmの幅に切って煮汁で煮ておきます。甘めに炊くのがポイントです。

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3)椎茸はじくをとり、焼いてから薄くスライスし、薄塩を振っておきます。焼くことにより味に凝縮感がでます。
4)パプリカは縦1/2に切って種をとり除いてから焼いて、皮をむき、1cmの幅にスライスし、椎茸同様、薄塩を振っておきます。

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5)胡瓜と海苔は1cmの幅、5cm程度の長さに切っておきます。

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6)薬味を作ります。小葱は小口切りにします。生姜は皮をむいてすっておきます。大葉は極細の千切りにして水に放っておきます。
7)そうめんはたっぷりの熱湯にいれて箸でほぐし、ふきあがったらカップ1/2くらいの差し水をしてさらに吹きあがってきたら火を止め、すぐに冷水で洗い、器に氷を張ってもりつけます。
8)2~5を彩りよく盛り付け、薬味を小皿にもり、汁は80cc程度を1人前とし、素麺に添えます。


2.白瓜とオレンジの酢の物
旬の長い胡瓜と違って、白瓜は初夏の短い期間しか旬がありません。色も淡い緑で美しく、クセも少ないので、汁物、和え物、漬物・・・どんなお料理にも変幻自在。一緒に組み合わせる食材も選びません。今回はオレンジと涼しげなひと品を作ってみました。お気に召したら甘夏などお好きな柑橘系でオリジナルを作ってみてください。

材料:白瓜1.5本、オレンジ1/2個、茗荷1個、煎り胡麻小1
掛け地:酢・水各大2、淡口・味醂各小1、昆布5cm

1)白瓜は縦1/2に切って種をスプーンなどでとり除き、薄くスライスして、たて塩(カップ2の水に対して大1の塩)に10分程度漬けて水気を絞っておきます。

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2)オレンジは薄皮まで剥いて食べやすい大きさにちぎっておきます。

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3)茗荷は縦1/2に切って、斜めに3cm程度の長さに薄く切っておきます。
4)掛け地を作ります。材料をすべて混ぜて一度火にかけてから冷蔵庫で冷やしておきます。昆布を入れることによって出汁が出るだけでなく、酢のとがった風味がまろやかになりますよ。
5)1~3を鋳込むようにして盛り付け、昆布を取り除き冷やしておいた掛け地をかけ、天に煎り胡麻をふります。オレンジがあまり甘くないようなら、掛け地に小さじ1程度の砂糖を加えてください。

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3.清正人参(セロリ)の当座煮
清正人参ってなに?と思われた方、おいでかと思いますが、セロリの別名です。清正公は虎退治だけでなく、朝鮮、明などへの出兵でも知られていますが、その際に日本に持ち込んだとされています。1年中見かけるのであまり旬といわれてもぴんときませんが、一番の出荷量の長野では夏~秋に沢山とれます。サラダやジュースあるいは肉などのにおい消しに使われがちですが、沢山手に入ったらこんなセロリが主役の当座煮はいかがでしょうか。ご飯のおかずにぴったりですので、お弁当にも活用してください。

材料:セロリ200g、出汁昆布の残り(セロリの1/5程度の量程度)、ごま油大1、
砂糖大1弱、醤油大1~1・1/2、七味唐辛子適宜

1)セロリは筋をとって、3~4cmの長さの斜め切りにします。葉もざくざくと切ってください。

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2)出汁昆布もセロリと同じ大きさに切っておきます。
3)フライパンにごま油を敷き、セロリの茎部分と出汁昆布をいため、しんなりしてきたら葉の部分を加え、砂糖をいれ、そのあと醤油を足して汁気がなくなる程度までいため、火を消してから七味唐辛子を好みでふってください。

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4.金時草の浸し
金時草はその名のとおり金時芋のように葉裏が紫色をしており、アントシアニンを多く含む栄養満点な野菜です。加賀野菜ですが、ここ数年人気が出てきて、他県でも栽培されてはじめました。別名・水前寺菜。旬はまさに今!夏です。風味はつるむらさきに似て少しぬるみがあります。どこかでみかけたらぜひこの浸しを作ってくださいね。

材料:金時草1把、干し湯葉適宜
浸し地:昆布出汁1/2C、淡口10cc

1)金時草は軸が固いので葉だけ摘み取り、塩ひとつまみを入れた熱湯で1分程度ゆでてすぐに冷水にとります。これは色止めのためにする処理です。熱いものを入れるとすぐにぬるくなってしまうので、冷たい水に替えましょう。

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2)1が冷えたら軽く絞って3cmの長さに切っておきます。
3)干し湯葉は出汁と調味料を入れた汁で1,2分煮て冷まします。この浸し地は出汁10:淡口1の割合です。ぜひ割合で覚えておいてください。

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4)3が冷めたところに切った金時草を加えます。

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5.索餅(おまけ:精進ではありません)
素麺のルーツは奈良時代伝わった唐菓子の「索餅(さくべい)」といわれています。京都ではこの時期、神社へのお供物としてたまに見かけたりします。悠久の昔に思いをはせながらぜひ作ってみてください。素朴な味わいです。

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材料:薄力粉200g、牛乳50cc、卵1個、砂糖50g、胡麻油大1、揚げ油適宜、粉糖適宜

1)粉と砂糖をボールに混ぜ合わせておきます。
2)別のボールに卵と牛乳をいれ混ぜ合わせ、1に加えて手でよくかき混ぜたら、さらに胡麻油を加えてなじませます、ラップに包んで30分程度は冷蔵庫で寝かせておきましょう。 

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3)20cm程度の長さにのばし、1cm間隔で切り、その1つをさらに両端を持って捻ります。

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4)170度くらいの油で揚げたら熱いうちに粉糖をまぶしかけてください。

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レシピ&原稿:温石会 入江亮子(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 7月の献立より)

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