建築について1

熊本県立美術館という美術館がある。この建物は熊本を代表する建物だと思っている。外壁はその当時画期的な打ち込みタイル貼り。二の丸公園の片隅にひっそりと佇み静かに呼吸している品格の漂う建築である。タイルは焼物であるから時間の経過とともにその場所の雨、風、光を蓄えて唯一無二のものに醸成される。時が経つとともに美しさを増している。

小学校低学年の頃からよく両親と訪れた。最も鮮明におぼえているのは庭に落ちる光の美しさである。ロビーから二階に上がる階段の左手に庭があり、そこに落ちる光の記憶が鮮明にある。その記憶はとても透明なもので、事ある度に蘇り私の支えとなっている。

建築を志したのはそのような美しい記憶があるからといっても良いと思う。そんな心の支えとなるような美しい場所を創りたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?