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プロダクトマネジメントの意思決定を上手く行うスキル5選

こんにちは。カミナシでプロダクトマネージャーをしている中村といいます。

過去に書いた記事はこちら

「プロダクト戦略どう立てたらいいかわからん」な人に贈る7つのコツ
【プロダクト開発に関わる人必読!!!】 モノゴトを前に進める『波乗り理論』
職能を超えて成果をだす

プロダクトマネージャー(PM)が行うことの中でも、難しいと感じる人が多いことの一つが「意思決定」ではないでしょうか?
今回はこの意思決定について、こうすれば今までよりも上手くできるかも?という「意思決定のスキル」を書いてみました。(カミナシ社のプロダクトマネジメントチームで実践している内容です。)

それではどうぞ!

意思決定はどのようであるべきか

まず最初に整理したいこととして、意思決定とはどうあるべきなのでしょうか?(と小難しい入りですが、別に難しい内容ではない。)

とにかく何かを決めることが意思決定ですが、とにかく何かをテキトーに決めてもいいことはなさそうです。それによって、自分自身も他のチームメンバーも、会社の経営も顧客の体験も影響を受ける可能性があるので、一定の理屈に沿って、良い影響を受けられるように意思決定する必要があります。

つまり、意思決定には「質」を伴う必要があります。質が伴っているというのは、決めたことが最終的に自分たちにとって有益であるということです。

ただ、この有益かどうかを考え出すと、途端に意思決定することが怖くなります。意思決定を先送りしたくなります。有益かどうかを明確にしたいので、とにかく情報が欲しくなりますし、懸念事項を洗い出したくなりますし、何より意思決定そのものをしたくなくなります。有益かどうかもロールや時間軸で変わったりもします。ややこしいです。

結果、意思決定が遅くなったり、意思決定自体がされない(先送りされる)こともあります。そうすると、方針や方向性が定まらずにチームが同じ方向を向けなくなったり、具体的にどのような行動をするかが決まっていないため、各チームメンバーが有効な動きをできなかったりします。

つまり、意思決定とはどうあるべきか?に対する回答としては、「質と速度を両立すべき」というのが答えになりそうです。

プロダクトマネジメントにおける意思決定

そんな難しい意思決定ですが、プロダクトマネジメント上必要な意思決定は無数にあります。
・ターゲット市場を定める
・ターゲット顧客を定める
・どのようなコンセプトのプロダクトにするかを定める
・どのような価値で伸ばすかを決める
・どのような体験を重視するかを決める
・どのような体験は捨てるかを決める
・上記の内容を続けるか、微修正するか、思い切って変更するか決める
・自社サービス内で提供するのか、他社サービスと提携するのかを決める
・どの体験を優先的に提供するのかを決める
・既存機能の改修と新規機能の開発どちらを優先するかを決める
・プロダクトロードマップを定める
・バックログの優先度を定める
・機能要件を定める
・仕様を定める
・リリース後の追加改修が必要かを決める

ただ、これらはコツをつかめば、比較的容易にできるものが多いと思います。難しいと個人的に感じるものもたくさんあるのですが、7-8割くらいはささっと意思決定できる印象です。

自分はプロダクトマネジメントで意思決定すべきこととして下記の図を参考にしています。この図の赤い点線の起点や終点が意思決定ポイントです。
つまり、方向を定めること、目標を定めること、要件(アイデア)を定めること、フィードバックをもとに磨きこむこと、変更することが意思決定する内容になります。

Triple Track Development: Business Innovation Through Continuous Discovery and Continuous Delivery の記事より引用

※ちなみに、この図のように、事業(Business)、検証(Discover)、提供(Delivery)すべてをいったりきたりしながらプロダクトをマネジメントしていない限りは、「プロダクトマネジメント」とは言えないと思ってます。すべての観点に関与すること、特にこの3つをつなぐポイントに関与することがプロダクトマネージャーの役割として大事だと思います。

この中で、難しいのは起点となる意思決定です。ビジネス上のゴール設定、戦略設定、目標設定、ターゲット設定、注力すべきUXなどはフィードバックをもらう前にとりあえず定める必要があるので、難しいところです。(これが意思決定事項の2-3割を占める印象)

この意思決定は、泥臭くしつこくやるしかなく、いかに「自分はこう思う」というポジションをとりつつ、いかに「本当にそうか?」というオープンなマインドを持ち続けられるかが勝負になると思います。

フィードバックをもとに磨き込むこと、変更することは比較的容易な印象をもっています。情報をもっていたり、大方針をもとに決めればいいので、事前準備ができていれば、ある程度さくさく意思決定できる印象です(これが7-8割を占める印象)

これから紹介する意思決定のスキルを使うと、7-8割を占めるさくさく決められる系の意思決定を時間をかけずにできるようになり、残りの2-3割の難しい意思決定に集中できるようになると思います。
ちなみに、このような状態になると、ステークホルダーへの回答が早くなり、チームから信頼されるようになります。また、プロダクトマネジメントに本当に必要な戦略上のポイントに絞って情報収集し、意思決定し、磨き込むというという好循環のサイクルをまわせるようになります。

ということで、PMとしては超大事なスキルだと思います。

意思決定を早く、質高くするためのスキル5選

ここからは上記の意思決定の質を高めつつ、出来るだけ早く意思決定するために、自分が実践を通して必要だと思った5つのスキル(方法)をそれぞれお伝えできればと思います。

最初に一覧を提示します。見てわかるとおり、結構1つ1つはカンタンな内容です。いかに実践するかだけだと思います。

5つの意思決定スキル一覧

スキル1:可能な限りの一次情報の取得をする

この記事でも同様のことに触れているのですが、とにかく一次情報をとりにいかないと、戦略立案も、UX設計も、これらの磨き込みも、とにかく何をするにしても、トンチンカンになります。とにかく一次情報を取得し、そこから何を学ぶか。
開発チームの外、ビルの外で仕事をする時間をいかに増やせるか(=顧客に会いにいくということ)がPMとしての意思決定を早く、質高くできるかの大前提になります。

一次情報を持っていない中で、何か意思決定をすることは、その意思決定の質を悪化させます。背景や文脈のわからない中で、何かを決めるのは勘に近いものです。これを繰り返しても、よい結果は当然得られません。解像度をもって方向や戦略を決めないと、机上の空論なだけです。意思決定の質は当然下がります。

ただ、ここで注意が必要なのが「可能な限りの」という枕詞がついていることです。いつまでも情報を集めてばかりで意思決定をしないと、実際のビジネスの場面では役にたちません。ではどの程度情報を集めるのがいいのでしょう?

これに対しては答えはないと思ってます。もっというとイテレーティブに(反復しながら)意思決定事項を磨き込むスタンスが一番大事だと思います。つまり、初期はとにかく少しだけでもいいから情報を集め、それをもとに仮の決定をする。そして、その仮の決定があってそうか、もっと違う方向はないかという情報を集める。これを繰り返す。

このように、意思決定と一次情報を中心とした情報取得は繰り返し、繰り返し反復するのがいいと思います。なので、情報集めはそのとき、そのときの最大限「可能な限り」となると思っています。

カミナシではこのような一次情報を大事にすることを「現場ドリブン」というバリューとして定義しています。この実践はカミナシのプロダクトマネジメントでも一番大事にしているところです。

カミナシのバリュー:現場ドリブン

スキル2:決定事項ではなく「仮」決定とする

特に、フィードバックをもらう前にとりあえず方向を決める必要がある場合など、「仮決定」という魔法の言葉を使うことで早く意思決定できるようになると思います。あくまで仮の決定なので、途中でどんどん新たな情報を得るたびに、決定事項を磨きあげたり、場合によっては思い切って方向転換(ピボット)したりすることもできます。

正直、情報の少ない状態(いつでも情報は少ないもの)で決めたものは、だいたい間違っていたり、磨き込む必要があったりするものです。
ただ、だからといって、何も決めずになんとなく時が流れていくだけだと、情報は集まらず、意思決定の磨きこみもできない状態になってしまいます。(情報はほしいと思うものしか見れないようです。探していないものは目に入らない現状を「非注意性盲目」というらしいです。)

すべては実験だと思い、すべては磨けるものだと思うことが大事です。プランAの95%は間違っていると思ったほうがいいです。

そして、間違っているかもしれないという前提で、とにかく早く意思決定してしまうこと、そして間違っていたらとにかく早く修正すること、これによって質を高めつつ、早く意思決定できるようになります。

カミナシでは、このようなスタンスも「β版マインド」という言葉でバリューとして定義されています。プロダクトマネジメントチームでも「仮決定で」という魔法の言葉を使ってこのバリューを体現できるように進めています。

カミナシのバリュー:β版マインド

スキル3:1つ上の抽象度での方向性を明確にする

・どの体験を優先的に提供するのかを定める
・既存機能の改修と新規機能の開発どちらを優先するかを定める
・プロダクトロードマップを定める
・バックログの優先度を定める
・機能要件を定める
・仕様を定める
・リリース後の追加改修が必要かを定める

上記のようなPMとしての意思決定内容において、自分は最近迷ったことがほぼないです。

これはその上段となる方向性や戦略に時間をかけて情報収集し、それをもとに意思決定しているからです。そして、上記のような個別の意思決定は上段の方針にとりあえずしたがってささっと意思決定しちゃえばいいと考えています。

また、これらの内容は(ソフトウェアの設計として不可逆なものとかでない限り)後から変更もききやすいものです。なので、とりあえず、早く決めることが大事だと思います。

毎回毎回このレイヤーの意思決定に時間をかけて議論して、思考して、やっと意思決定するというのを繰り返すとどんどん意思決定が遅くなり、チームが何をすればよいのか、どこを向かえばよいのか見えにくくなります。

とにかくスピード優先で意思決定していく、そのためには上段の方向を明確にし、基本的にこれらの具体の意思決定はそれに従うとすれば、スピード感をもって決められるようになります。

※ちなみに、機能要件や仕様はPMよりも優れたスペシャリスト(デザイナーやエンジニアなど)がいるので、そこに任せるのも手です。自分より優れた人に基本は任せてしまい、上段の方針との整合性だけPMがチェックするスタンスが一番バランスがよいと思っています。


スキル4:人の脳をハックする

振り返ると、自分一人で思考して捻り出した方針、戦略、意思決定は1つもなかったなと思います。当然、自分で思考する時間は大事にしていますが、それだけだとどうしても限定的な思考、意思決定に陥りがちです。

自分が大事にしているのは、とにかく人の力に頼りまくるということです。何か素案がある場合は、その素案を早めに当てるようにします。何も素案さえ浮かばないときは、とにかく人の話を聞きにいきます。

また、意思決定するにあたり、「適切な抽象度」で意思決定すること、それを言葉にすることが非常に大事だと思っているのですが、この適切な抽象度での言語化も他の人の言葉(特に顧客の言葉)がヒントになることがほとんどです。
将来に対して想像力豊かに「こうしたい」「こうなるべきだ」と思っている顧客(つまりビジョナリーな経営者やリーダー)の声を聞くと、方向性や言語化がはっきりとし、自然と自分たちのビジネスやプロダクトに関する意思決定もしやすくなります。

また、社内でもビジネスチームや経営チームの脳をハックしにいく動きをすると、開発チームの都合に傾倒せずに、顧客視点、ビジネス視点、中長期視点を取り入れた意思決定がしやすくなります。

このように人の脳をいかにハックするかで意思決定の質は変わってくると考えています。(ま、要は人の思考、言葉をパクるというだけです。)


スキル5:自分の「したい」を30%入れ込む

これは自分の持論です。
世の中、特にビジネスの世界では、とにかく「こうすべき」であふれています。普通に考え、普通に意思決定していくと自然と「すべき」であふれることになります。
そして、「すべき」は無数にあり、それだけで考えると、なかなか意思決定にふんぎりがつかなくなります。
かつ、それを突き詰めても平凡な他と差別化されないものになりがちで、自分の意志もこもっていないため、説得力もあまりないものになりがちです。

そこで、自分が大事だと思うのが「したい」という自分の気持ち、意志を込めることです。この「したい」をベースに意思決定されたものは他とは違う少しユニークなものになりやすいですし、意思決定後も意志をもって実行にうつしやすいものになります。

ただ、自分の100%「したい」だけで決まったものには、ビジネスの場合だと誰もついてきません。なんなら、自分自身も論理が不十分なため、自信がもてないのではないでしょうか。

そこで、ちょうどいい割合として30%だけ「したい」を盛り込んで意思決定することがいいと思うようになりました。普通に考えていくと自然と100%「すべき」で埋まっていくのがビジネスなので、少しでも「したい」を入れたいところです。

したいを30%くらい入れるとちょうどよいのでは?

半分はちょっと欲張りすぎな感覚で、30%(これでも十分多い)だけでも自分の「したい」を入れると、スピーディーに、説得力があり、少しユニークな意思決定ができると思います。また、70%という大部分は「すべき」で固めた意志決定なので、大きく外れたり、論理的に説明できないような内容でもなくなります。

ということで、最後のコツは30%自分の「したい」という思いを入れ込むことです。


最後に

いかがだったでしょうか。カミナシのプロダクトマネジメントチームでは上記のようなスキルも使いつつ、なんだかんだもがき苦しみながら意思決定の連続で毎日を過ごしています。

ただ、上記の方法論を実践すると、意思決定が苦しいものではなくなり、楽しいものになると思います。

なにせ、
・実際に自分が実感した情報をもとにしているので自信をもって意思決定できるようになり(スキル1:可能な限りの一次情報の取得をする)
・あくまで仮の決定ということで心理的な負担も減り(スキル2:決定事項ではなく「仮」決定とする)
・細かな意思決定事項は、大きな方向のもとでさくさくできるようになり
(スキル3:1つ上の抽象度での方向性を明確にする)
・人の力を借りるので、自分の力不足と悩むことも少なくなり(スキル4:人の脳をハックする)
・自分の「したい」という意志が入ったわくわくする意思決定ができるようになる(スキル5:自分の「したい」を30%入れ込む)
のです。

実際のところは、とはいえいろいろ苦しみつつですがw、そんな楽しく意思決定できる環境があるカミナシのプロダクトマネジメントチームは絶賛人材募集中です!また、それ以外のポジション(開発もビジネスも)全方位的に絶賛人材募集中です!

特に意思決定に自信のあるシニアなPMの方、ぜひ募集待ってますので、まずは気軽にカジュアル面談でプロダクトマネジメントについて雑談しましょう!


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