2019年の読んでよかった本まとめ
今年読んでよかった本の書評(読書メーターの感想)をまとめておきます。
皆さんのオススメの本とか、本の感想とかもらえたら嬉しいです!
●小説部門
1位 ドロシイ殺し/小林泰三
メルヘン殺しシリーズ第3弾。アリス、クララに続き、今作では「オズの魔法使い」の世界が舞台。
マンガ「月光条例」でもそうですが、原作を読んだ時には意識しなかったストーリーやキャラクターに気づかされるのが、すごく好きです。作者の原作への知識の深さが窺い知れます。 ハッピーエンドの裏に隠された登場人物の殺意に、今作も楽しませていただきました。
2位 星をつなぐ手/村山早紀
小さな奇跡を起こした桜風堂書店の続編。今作でも小さいけども温かく優しい奇跡が起きます。
本書で語られる、どんどん無くなっていく本屋への語りが印象的でした。僕も電子書籍を読んだり、ネットで本を買ったりしますが、本屋で本を選ぶのは全く別の楽しみがあります。あの本の森を探検するような感覚、思いがけない本との出会いというのはネットの世界では味わうことのできない格別なものだと思います。
「町に本屋があるということは、そういうことだと思うんだ。その町で育つ子どもに、夢の世界への扉を用意して待っているということなんだ」(本書より)
3位 ある男/平野啓一郎
『一体、愛に過去は必要なのだろうか?』
事故で亡くなった夫は全く違う人物だった。自分が夫だと思っていた人は一体誰だったのか。依頼を受けた弁護士が彼の人生を探るうちに、自分の人生を見つめなおしていく物語。
現在のその人をその人たらしめているのは、その人がこれまで生きてきた結果だと思うのですが、人に語られるのはその全てではないし、真実とも限りません。嘘の過去を教えられていた時、その人を愛したことも嘘になってしまうのか。誰かの全てを知ることができない中で、人を愛するということについて考えさせられた一冊でした。
4位 総理にされた男/中山七里
総理と似ている売れない役者が、ある日突然総理の替え玉を頼まれるお話。
政治なんて何も知らない一般市民だったにもかかわらず総理を演じることとなった主人公。周りの協力を得ながらも、閣僚、野党、官僚と闘っていく姿、そして本書後半の大事件への対応は胸がアツくなりました。
国内の政治問題、政治家への国民の思い、そして国民の政治への考えなど、みんな疑問に思っていること、または薄々感じていることをバシッと書いてくれています。この本を読んだ後、読者が政治に対してどういう姿勢をとっていくのかを問うような一冊だと思いました。
5位 はるかな空の東/村山早紀
幼いころの記憶を亡くした少女が、声に導かれ魔法や精霊が存在する異世界へと旅立つ。邪神の復活を目前にした世界で、世界を救う紋章を受け継いだ人々の戦いが始まる。
20年前に児童書として刊行された本作ですが、舞台となる異世界の旅、命や平和への記述は大人が読んでも十分に楽しめる一冊だと思います。
「人はそれぞれ自分の道は自分で選ぶ。命を運んでゆく。それを”運命”という。運命とは、よくいわれるようにもともと決まっているものではなく、それぞれが自分の手で選びとって、そうして造りだしてゆく道のことだとわしは思う。」(本書より)
●小説以外部門
1位 武器になる哲学/山口周
哲学の考え方を現実の生活や仕事に対して、どう活用していくかについて書かれた一冊。
難しく思える哲学の考え方も実生活に落とし込んでみると「あれのことか」と思い当たることが多々あります。この本のポイントは、哲学者たちから学ぶ方法として「プロセスからの学び」と「アウトプットからの学び」の2つを提示しているところです。かつては正しいように見えた答えも、現代では的外れなものもあります。そういうものは当時の時代背景を含めて、どうしてそういう答えに行き着いたのかを知ることで物事を考えるヒントになることを教えてくれます。
2位 凡人のための地域再生入門/木下斉
地域振興に関わってきた著者が小説形式で、自身の経験や他地域での事例を描いた一冊。僕も「地域振興」に興味があって色んな本を読みましたが、この本はタイトルのとおり入門編として素晴らしい一冊だと思います。
小説という読みやすい形で、地域再生に関わる事例や問題を数多く示してくれています。 本書を読んで、一番に感じたのが「覚悟」が必要だということ。地域を再生するのに必要なのは、補助金ではなく、自分たちで自立して金を稼ぎ、進んでいく覚悟なのだと思いました。自分には、そういうのが足りてなかったというのも反省です。
3位 投資家がお金よりも大切にしていること/藤野英人
投資家である筆者が「お金の本質とは何か」について考えてきたことをまとめた一冊。
僕たち日本人のお金に対する考え方に次々と問題を投げかけ、お金や投資についての考えを変えてくれる素晴らしい一冊です。 特に、消費についてのこの記述が問題になっている長時間労働やブラック企業の根本を言い表していると思います。
「私たちが求めるからこそ、企業はそれに応えようと頑張るのです。需要があるからこそ供給が生まれるわけで、その逆はありません。」
消費の仕方を変えることで世界を良くすることができる、ということを教えてくれました。
4位 アフターデジタル/藤井保文、尾原和啓
オフラインが無くなる時代にどういった変化が起こるのか。共著者の一人が中国での体験をベースに、アフターデジタルの世界を紹介する一冊。
日本にいるだけでは気づくことのできない世界がすでに海外では起きていて、デジタルによる社会システムのアップデートにワクワクしてしまいました。AIによって仕事が無くなるとか、プラットフォーマーにデータを盗られているという話もありますが、オフラインがとオンラインの垣根が無くなるこれからの世界は、もっとダイナミックでエキサイティングなものだと思います。
5位 思わず考えちゃう/ヨシタケシンスケ
絵本作家の著者が日頃書き溜めたスケッチについて、どうしてそれが気になったのか、それを見てどういうことを考えたのかを解説したエッセイ。
いろいろと考えすぎちゃう著者の「これを見てそんなことを考えるの!?」という発想の飛躍や視点が本当にユニークで、読んでいてほっこりしたり悩みに関する気づきを与えてくれたりと気持ちが軽くなる一冊です。 著者と同じで考えすぎちゃう大人の一人として、共感できることも多々あり、折に触れて読み返したい本です。僕のオススメは「よごれて洗ってよごれて洗って」「もし、そうなったら」です。