素晴らしきスピンオフの世界
スピンオフとは、「既存の作品(本編)からそれに関連する別の作品が派生すること」(ウィキペディアより)。
名作のその前やその後、主人公以外にスポットを当てた作品など、スピンオフ作品には、原作には無いステキな魅力が詰まっています。僕のお気に入りのスピンオフ小説・マンガを紹介します。
※一部ネタバレあります。
1.「月光条例」
僕の中でのスピンオフ作品の最高傑作。
青い月の光を浴びておかしくなってしまったおとぎ話のキャラクターたちを、元に戻すために奮闘するストーリー。
キャラクターたちはおかしくなるといっても、ただ暴れ回っているわけじゃないんですよね。原作のストーリーの中での不満や不安がその行動に表れているのが、このマンガの素晴らしいところです。
例えば僕の一番好きな回が「シンデレラ」なんですが、おかしくなってしまったシンデレラはスポーツカーに乗って暴走しまくっているんです。その理由が、このシンデレラのセリフに表れています。
これを読んだときに、「こんな風にシンデレラを読む人がいるんだ」と衝撃を受けました。このマンガの作者は、シンデレラは「与えられた幸せ」に納得していなかったのだと感じたのです。シンデレラといえば、「シンデレラストーリー」という言葉があるように幸せや成功の物語です。でも、手に入れた幸せに対して、「自分は運が良かっただけ」「地べたに座っているあの人と何が違うの?」と不安を抱えているその姿は昔に読んだシンデレラをより立体的に写し出してくれました。
シンデレラ以外にも素敵なお話がたくさんあるので(個人的には「赤ずきんちゃん」「フランダースの犬」)、ぜひ読んでほしい一冊です。
2.「むかしむかしあるところに、死体がありました。」
「月光条例」と同じくおとぎ話をベースにしていますが、こちらはミステリー要素をかけ合わせた作品。
昔話の登場人物が「実はこういう気持ちを抱えていたんじゃないか」とか、「あの結末の後にこういうことがあったんじゃないか」といった話は想像力をかき立てられますし、原作を違った視点で見るきっかけにもなります。「めでたしめでたし」で終わらないこんな昔話も悪くないと思います。
3.「引き立て役倶楽部の陰謀」(「ノックス・マシン」収録)
名探偵の相棒たちが一同に会する「引き立て役倶楽部」。その倶楽部での良からぬ企みについての物語。
名探偵の陰に隠れて目立たない相棒たちが集まるという設定も面白いですし、普段どんな気持ちを抱えているかも明らかになってより名作が楽しめる気がします。
4.「ドロシィ殺し」
オズの世界で起こる殺人事件。その犯人の語りがこの作品最大の見所だと思います。
作者が「オズの魔法使い」という作品を本当にいろいろ調べて知識を深めたんだなということが分かります。それが犯人の最後のセリフ「虹の彼方に行くのは私だったはずなのに…」に表れていると思います。
オズの全作(舞台を含めて)を見たい気持ちになりました。
スピンオフの魅力は原作者とは違った視点で、その作品にスポットを当ててくれるので、より想像力をかき立てられます。
皆さんもオススメのスピンオフ作品がありましたら、是非教えてください。