出向社員のアイデンティティ

2018年の3月。出張から帰ってきた僕を待っていたのは、出向の辞令でした。

よく外国に行くと、「日本人としてのアイデンティティに気づく」という話を聞きますが、会社が変わることでも同じようにアイデンティティが問われると思います。これまでの企業文化とは違うところへ行く。そこで問われるのは、単に自分が出向元の企業人としてのアイデンティティではなく、自分がどう働きたいか、自分が企業に対して何ができるか、というものでした。自分は別業態・別業種に出向したので、余計に強く感じたのかもしれませんが、そこで、自分が得たものを、ここにまとめておきます。

目次
1.前職とのギャップ
2.越境への一歩
3.溶ける境界

1.前職とのギャップ

出向先で仕事を始めて、数日経ち、気づいたことが「全然仕事が物足りない」ということ。物足りないと思うのは「量が足りない」や「待ち時間が多い」というところから。僕の仕事は基本的に、申請書類の受付だったので、書類がたくさん来るときは忙しくて、来ない時は時間を持て余すという状況でした。思い立って、周りに「何か手伝うことはありませんか?」と聞いてみますが、「今は無いよ」とか「大丈夫だよ」とのことで、結局仕事は増えず。出向者だから気を遣われていたのでしょうか。出向元からも特別な仕事が無く、出向先でも仕事が多くない、これが「出向する」ということなのかと悩みました。これまでが働きすぎだったという可能性もありますが…

以前も「周りは仕事があって自分はヒマ」という状況を経験したことがありますが、けっこうしんどいものです。自分が取り残されている感もありますが、無駄に時間を過ごしているような感覚や成長を実感できないという感覚が襲ってきて、精神的にかなり来るものがあります。正直、今回も出向して3ヶ月くらいで精神的にかなり落ち込みました。

2.越境への一歩

そんな自分の転機になったのは、ストレングスファインダーを活用したコーチングと、知人のSNSの投稿でした。(コーチングの方は、今回の内容から逸れますので興味のある方は、こちらのnoteをご覧ください。)
https://note.mu/shohei64/n/n3ec3134a2527

SNSの内容は、自分の出向元のイベントに参加して講師をやるというもので、自分もそれのお手伝いがしたいと思いました。そう思い立ってから、知人に連絡を取り、お手伝いすることの承諾と、出向元の関係部署に連絡、出向先の上司に交渉を行い、無事に当日のお手伝いをもぎ取りました。

当日は、ゲームのアシスタントとして動き回りましたが、出向元にいた時には全然関わりが無く、全く知らなかった活動を知ることができたことが大いに刺激になりました。また、自分が尊敬する人や一緒に仕事をしてみたいと思っていた方と仕事ができたこともすごく楽しかったです。

3.溶ける境界

今回のイベントを通して、感じたことは出向元に場所が無いという自由さです。出向元にも所属している部署が無く(形式的には人事部に所属していますが)、出向先では所属はあるものの「出向者」という異質な立場にいるということが、組織を一歩ひいて見る視点を与えてくれました。
これまでは、会社の中の部署やグループという立場で仕事をしたり物事を考えていましたが、今では会社という視点で仕事を考えられるようになりました。「今の部署としてできることはなんだろう」から「会社に対して自分ができることはなんだろう」「この情報はこの部署に持っていたらいいんじゃないか」といった部署の垣根を越え、会社という一つの組織に対して、自分のできることを考えるようになりました。この視点に立つと、自分の仕事というのは、「自分の能力や情報を使って、会社・組織に貢献すること」になります。一つの会社にはたくさんの組織があり、それぞれが求めるものは多種多様です。まだまだ自分の能力を使う場はあふれています。

今、僕が目指しているのは「情報のハブ」になること。多くの情報や人材を適切な部署に提供していく。これまで異動が多かった(4年で6回)のが、プラスに働いてきます。出向元と出向先だけに限らず、自分が持っている人脈や情報を多くの方に役立てていただきたいと思います。