ぶかぶかの衣装ー「売上を、減らそう。」を読んで考えたこと
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ぶかぶかの衣装ー「売上を、減らそう。」を読んで考えたこと

どんなに売れても1日100食限定のお店「佰食屋」。その理念やビジネスモデルについて書かれた「売上を、減らそう。たどりついたのは業績至上主義からの解放」を読みました。以前、小売業のバイヤーとして働いていた時に疑問に感じていたことと合わせて、今回読んだ本の感想を書きたいと思います。

【今回読んだ本】

1.「佰食屋」について

佰食屋さんは、京都にある小さな定食屋さんです。当初のメニューはこだわりのステーキ丼のみで、1日100食を売り切ったら営業は終了。なので、早く売り切ればその分早く帰れるという営業形態です。

堀江貴文さん監修の「まんがでわかる 絶対成功!ホリエモン式飲食店経営」では、このように紹介されています。
・サービスを極限まで絞ることで売上を上げているお店
・飲食店の形は自分の人生に照らし合わせて決めることができる

これについて、著者の中村さんはこのように捉えています。

この2行の冒頭、「サービス」と「飲食店」を「働き方」に変えるとこうなります。
・働き方を極限まで絞ることで売上を上げているお店
・働き方の形は自分の人生に照らし合わせて決めることができる

つまり、どれだけ儲かったとしても、「これ以上は売らない」「これ以上は働かない」。あらかじめ決めた業務量を、時間内でしっかりこなし、最大限の成果を挙げる。そしての残りの時間(人生)を自分の好きなように使う、ということ。

売上や収入に上限を決めることで生まれる時間を、自分の人生のために使う。大きく儲けたり、莫大な収入を得ることはできませんが、時間という報酬を手に入れることができる。これが働く人たちのインセンティブの一つになっているようです。
本書では、そのビジネスモデルについて存分に紹介されていますので、興味のある方は是非読んでみてください。

2.自分が売っているものは、本当に必要なものなのか

以前、僕は小売業のバイヤーとして働いている時期がありました。そのときはお菓子などの嗜好品を担当していました。週次、月次、年次で売上目標、利益目標が決められ、売上結果が分かる日はいつもドキドキしながらパソコンの画面を見ていました。売上目標を達成するため、毎日のように商品や企画とにらめっこしている時にふと思ったのが、
「お客さんはこの商品を本当に欲しいと思っているんだろうか?」
「自分はお客さんの生活に本当はいらないものを売りつけようとしているんじゃないか?」

ということです。
お菓子は嗜好品なので生活にどうしても必要なものじゃない、という思いがこの考えの根底にあったんだと思います。前任者からは「お菓子は人を幸せな気持ちにさせるもの」と教わっていました。この理屈で言えば、たくさん商品が売れるほどたくさんの人を幸せにしているということになるのですが、ひたすら数字を積み上げ売上を追求することに疑問を感じ始めていました。結局その答えが見つからないまま、僕はその部署から異動することとなります。

そんな自分にとって、この本のタイトルは衝撃的でした。「売上を減らそう」なんて、会社で口に出そうものなら怒られます。ですが、現代では売上や業績という指標では測れないものが多くなってきていることも事実です。
自分に与えられた売上やノルマを達成するために日々奮闘されている方々はたくさんいると思います。目標は前月、前年を超えるものが設定され、常に高い目標に挑み続けることに不安を抱えている人もいるでしょう。会社として数字や利益を出すことを否定はしませんが、人口減少によってこれから市場が小さくなっていく日本では、常に数字を上げ続けることはとても難しいことになっていくと思います。

国の豊かさを測る指標にGDPがあります。これは物の豊かさとリンクしているので、高度経済成長時代はどんどん伸びていく指標でした。売上や業績もGDPに関連した指標でしょう。ただ、これから経済が縮小していくことが予想される日本ではGDPは下がっていくでしょうし、そうなると国の豊かさを測るためにGDPに代わる指標が必要となるのではないかと思います。

3.ぶかぶかの衣装を脱ぎ捨てて

イギリスの思想家トマス・カーライルは「衣装哲学」という本の中で、このような考えを示しています。

人類がこれまでにつくりあげてきた習慣や制度は、生活の装飾や快適さのためのものであり、いってみれば身体を飾ったり快適にしたりする衣装のようなものだ。衣装は、それを着る人が成長したり変化したら繕ったり仕立て直したりしなければならない。そして、小手先の修正では対処できなくなると、まったく新しい衣装に変えなければならない。現代の社会はすでに身体に合わない衣装を着せられているのだから、新しい社会のための衣装をつくって着替えなけれならないはずだ。(「コミュニティデザインの源流」(山崎亮)より「衣装哲学」に関わる部分を抜粋)

日本は高度経済成長によってどんどん大きくなっていく体に合わせて、その衣装も大きなものに仕立てあげていきました。そして今、体が小さくなっていくのにも関わらず、まだ大きな時のままの衣装を着続けようとしているのではないかなと思います。「衣装哲学」で示されているように、小手先の修正ではなく新しい衣装に着替えるタイミングにあるのではないかなと。ぶかぶかの服を着続けるのではなく、その時の体型に合ったステキな衣装へと衣替えする、売上や業績を追求するのではなく自分に合った働き方を追求する、その一つの選択肢が「佰食屋」さんのビジネスモデルなのではないかなぁと思いました。

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読書家兼ソーシャルアクター。年間読書量100冊以上。読書や日々の生活での学びを共有して、次世代が生きやすい社会をつくりたい。その情報発信の一つとしてnoteを書いています。毎週日曜日に週報を発信中。