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読書は「しなくちゃいけない」のか

本を読み終えるたびにSNSで感想を投稿するのが習慣となっています。そういうことをしているからか、会う人には「めちゃくちゃ本を読んでますね」とよく言われます。そしてその後に「僕も本を読まなきゃいけないと思っているんですよ」という言葉が続きます。私は読書は趣味の一つだと思っているので、相手がなぜ読書を義務のように考えているのか不思議です。もちろん社交辞令で言っている人もいるのかもしれませんが、この「読書をしなくちゃいけない」という考えは意外と多くの人が持っているものなんじゃないかと思います。そこで、なぜ人は読書をしなくちゃいけないという認識を持つようになったのか、本当に読書をしなくちゃいけないのならどうすれば読書ができるのかについて書きたいと思います。

1.「読まなきゃいけない」の3つのタイプ

①本当は読みたくないけど・・・(「ネガティブ読まなきゃタイプ」)
世の中にはたくさんの本があって、その中には読書の仕方や読書の効能をうたった本が数多くあります。タイトルも「仕事ができる人は読書をしている」とか「読書で手に入れられるもの」といった、人に対して「読書しないとマズいよね」感をあおるものがつけられています。これが人の「読書しなくちゃいけない」感をかき立てている一因かと思います。昨今ではあまり本が売れていないそうなので、こういうプロモーションは出版社の戦略なのかもしれません。こういう方々には一旦落ち着いていただいて、ただ本を読んだだけで「仕事ができる」ようになったりはしませんし、そもそもイヤイヤ読んでも内容が頭に入ってはきません。あくまで読書は、自分の成長や人生を楽しむための一手段に過ぎませんので、本を読んでいないからといってそんなに不安になることは無いと思います。気が向いた時に、自分の気になった本を手に取るのが、読書を始める正しいタイミングだと思います。

②本を読むってカッコイイ(「ファッション読まなきゃタイプ」)
①のこともあってか、本を読んでいる人に対して「頭よさそう」「仕事できそう」というイメージを持っている人がいらっしゃるかと思います。それがあるからか「本を読んでいる自分」を周りにアピールしてそういう風に見られたいと思って読書をしたいと言っている人も少なからずいるのではないでしょうか。ファッションという面での「読書をしたい」という方ですね。そういう方は難しそうな本を読んだり、ステキな表紙や装丁の本を読んでみるといいかなと。実際に読まなくても、本をインテリアのようにしている方もいらっしゃいますし、私もジャケ買いした本もあります(もちろん私はジャケ買いした本もちゃんと読みます)。こういう方々が本を選びときは、よくテレビで専門家の方が話すときに、本棚に並んでいるものとか参考になるんじゃないかなぁと思います。なんか後ろにずらっと本が並んでると知的に見えますよね。あと文庫よりはハードカバーの方がオシャレです。

③本当にしたいのは「読書」じゃない(「なんちゃって読まなきゃタイプ」)
①が「本を読む」という部分にフォーカスを当てているのに対して、こちらは「本をよって手に入るもの」に対してフォーカスを当てているタイプです。本当にこの人たちが欲しいのは「学び」や「情報」だったりするのですが、それを手に入れる手段として「読書をしたい」という人たちです。ただ、これらは別に読書じゃなくてもネットや他の趣味の活動でも手に入るものだと思います。こういう方々には一度立ち止まってみて、「本当に読書をしなければ手に入らないものなのか」というのを自問してみてください。
参考までに、私が思う読書によるメリットは以下の2つです。
1.まとまった知識が得られる
2.他人の人生を疑似体験できる

この2つが読書以外で手に入るのであれば、何も読書にこだわる必要は無いかと思います。それにメリットがあればデメリットもあります。以前、私のnoteでも書きましたが、読書によるデメリットは以下の3つ。
1.お金がかかる
2.読むのに時間がかかる
3.精神的負荷が大きい

1,2に関する説明は不要かと思いますが、3が意外と見落とされがちな部分です。読書のメリットで語られるように、本を読むということは、その人の人生を追体験したり、物語の登場人物たちに感情移入したりと、普段の自分では体験できないような感情を共有できることです。人の一生は短く、体験できることは限られています。それを擬似体験できる本は素晴らしいものだと思います。ですが、そこに落とし穴があります。それは、疑似体験できるものが良い体験だけではない、ということ。本の中には、誰かを傷つけてしまったり、不幸な境遇に陥ってしまうものもたくさんあります。それを追体験することで、自分も不幸な気持ちになってしまい、気持ちがすごく落ち込んでしまいますこともあります。また、誰かの成功談や輝かしいストーリーにも注意が必要です。本を読んでいる間は、自分もその本の主人公になったような気持ちで成功の幸せに酔いしれることができますが、本を閉じて現実に戻った時、そこにいるのは普通の生活をしている自分です。そのギャップに苦しみ、自己否定や自己嫌悪に陥ることもあります。なので、本を読むという行為は意外と精神的に負荷がかかるので、体調や精神状態によっては読む本を選ぶことをオススメします。

2.本の選び方

これらを踏まえても、やっぱり読書をしなくちゃいけない、というかもう「したい!」というのであれば読書をしちゃいましょう!この段階で聞かれるのが、「一体何を読んだらいいですか?」という質問。正直、漠然とテーマも絞らず「何を読んだらいいか」と聞かれても、こちらは「好きなの読んでください!」としか言いようがありません。というのも、本は読む人によって受け取り方が違いますし、同じ人でも時期や年齢によって感じ方が変わります。私も大学生の時に読んだ感想と、今になって再読した時の感想は違います。なので、私が良いと思ってもあなたは違うかもしれない。逆に、私がイマイチだなぁと思った本があなたには人生を変える一冊になるかもしれない。だから、自分が気になった本を読むのが一番いいと思います。そんな本あるかなぁと思うかもしれませんが、自分が必要としているときにはそういう本に出会うものです。いつもそこにあったはずなのに、ある時ふと目に止まって買ってしまう、そういう瞬間が私には何度もありました。そしてその本はやっぱり買ってよかったなと思うものです。なので、恐れずに自分の感性を信じて買いましょう!

3.読書時間の作り方

次によく聞かれるのが、「いつ本を読んでいるんですか?」という質問。私が読書している時間はおおまかに3つあって、「朝」「昼休み」「すき間時間」です。朝は毎日5時半くらいに起きるので、30分くらい読書する時間を取っています。昼休みは1時間あるので、ご飯を15分くらいで食べてあとは昼休みが終わるまでずーっと読んでます。最後のすき間時間がけっこう大きくて、通勤の電車の中(片道10分くらい)とか、奥さんと子どもが風呂に入っている間とか、待ち合わせまでの時間とかすき間さえあれば本を読んでいます。ちなみに、それぞれの時間で読む本が違うので3冊並行で読んでいますが、そこは人の好き好きかと思います。
これを読んで「いやそんな時間無いわ」という人はきっと、他の趣味を持っている方なんじゃないかなと思います。それはスポーツなのかゲームなのか旅行なのか分かりませんが、そういう時間も取りつつ読書をしようと思ったらけっこう無茶だと思います。1日は24時間しかありませんので、これまでと同じような生活にさらにやることを増やしてしまうと足りなくなります。なので、なにかを始めようとするのなら今やっているなにかの時間を減らすか無くすかしないといけません。私はそもそも趣味が読書なのでこんなに時間が取れている、というか取っていますが、なにか他にやりたいことややらなきゃいけないことがある人は読書をする時間が取れないと思います。それはそれで良いと思います。何も無理して読書する必要は無いんですから。ただ、意外と無意識にスマホいじっている時間とか馬鹿にならないので、そういうところは削る余地があるのかもしれません。

4.どう「学ぶ」か?~なんちゃって読まなきゃタイプの人へ

タイプ別に分けた中で「なんちゃって読まなきゃタイプ」の人は、単純に情報や学びのインプットが欲しくて、「それなら本だ!」というように書きました。実際、本にはそのテーマについて体系的に情報を得ることができますし、ネットとは違いある程度情報の信頼性もあります。ただ本を読むのにはそれなりに時間もかかりますし、活字を読むのが苦手な人にはかなり苦痛だと思います。そもそも本で学びを得るというのは、歴史の年号や英単語を覚えるように単純な知識を得るというほかに、その本に書かれていることを自身の仕事や活動に転用するというのも含まれます。後者についてもう少し説明すると、本に書かれている具体的な事柄から、その本質や普遍的な部分を取り出し、それを自分が関わっている具体的な事柄に落とし込む。最近、マンガで学ぶマネジメントやチーム作りみたいな本がありますが、それらの書籍もやっていることはこれです。マンガの中のあるシーン(具体)を切り取って、このセリフはこういう意味があって(抽象)、仕事のマネジメントにはこう使える(具体)という「具体→抽象→具体」の運動が行われています。本以外から学ぶとするなら、最初の具体の部分を自分の好きなことや趣味に置き換えてしまえばいいのです。例えばカフェが好きなら、「なんでこのカフェはこんなに雰囲気がいいんだろう?」と考え、その思いついたアイデアを職場の環境に転用すればいいんです。

5.それぞれのタイプにオススメの本

「好きなの読んでください!」と言いましたが、私がそれぞれのタイプにオススメしたい本を紹介したいと思います。参考にしていただければ。

①ネガティブ読まなきゃタイプの人へ

・「マンガで読破」シリーズ

このシリーズは、文学作品や古典をマンガでわかりやすく書いたシリーズものです。普段、活字に触れない人でも読みやすいと思います。それに、いきなり「資本論」とか「吾輩は猫である」とかを文字だけで読むのはハードルが高すぎます。「マンガでもいいのか?」という方もいるかもしれませんが、全く問題ありません。マンガといってもきちんとエッセンスは詰まっています。それにマンガも本ですし、活字を読むからスゴいのではありません。読んだものをどうアウトプットするのかが大事です(自戒を込めて)。なので、インプットが小説だろうが、マンガだろうが関係ありません。

②ファッション読まなきゃタイプの人へ

・「アリス殺し」小林泰三

表紙に一目惚れして、内容も確認せずに買ってしまった本。中身はミステリーですが、頭の中がごちゃごちゃになるので普段本を読み慣れていない人は大変かもしれません。今このシリーズは3作でていますが、どれも表紙はステキです。

・「本を守ろうとする猫の話」夏川草介

表紙の美しさもさることながら、表紙カバーを取った下もこだわりが見えます。本の内容も面白くてオススメです!

・「桜風堂ものがたり」村山早紀

優しい雰囲気の表紙が癒やされますよね。続編の「星をつなぐ手」もステキな表紙なので、気に入っていただけたらそちらもぜひ。内容も表紙の雰囲気に違わず、とても優しい物語です。

③なんちゃって読まなきゃタイプの人へ

・「メモの魔力」前田裕二

「4.どう「学ぶ」か?」で紹介した「具体化」と「抽象化」のやり方について、とても分かりやすく書いています。本書を読めば、読書以外からでも多くの学びを得られると思います。

・「具体と抽象」

そもそも「具体」とか「抽象」っていうものがよく分からないという人向け。マンガも入りつつ、内容も端的にまとめられているので読みやすいと思います。

さいごに

私は読書はすごく楽しいものだと思います。自分が行ったことの無い世界に思いをはせたり、直接会うことのできない人の話を知れたり、その人の人生の研鑽や見識を余すことなく伝えてくれたり。それが過剰に宣伝され、「読書をしなくちゃいけないんだ」という脅迫観念のようなものに囚われたり、本来の目的を見失ったまま「とにかく読書しよう」と自分の好きなことをする時間をないがしろにしてしまうのはとても勿体ないことだと思います。もしあなたが今「読書をしなくちゃいけない」と思っているのであれば、一度立ち止まって「本当にそうなのかな?」と考えてみてください。それを考えてみてからでも読書を始めるのに遅くはありません。本はいつまでも必要としてくれるあなたを待っていてくれます。