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【deflection effect B〜】 第3話

        対戦相手が決まってから最初の練習
公平
「おはよう。県大会初戦の対戦相手が決まった。」
「皆も知っての通りクラブMHはメンバーさえ揃えば関東屈指のチームだからな。
気を引き締めていこう。」
子供達
「はい!」
KJ
「ビデオで見たけど、強いね。」
「ただ勝負に絶対はないよ。
絶対に勝てない相手も、絶対に負けない相手もいないということだ。」
樹里
「俺もコーチに1on1で勝てますか?」
KJ
「それを勝負だと思ってるのかい?
大した奴だな。」
和やかな雰囲気で練習が始まる。
KJ
「この前のゲームの改善点は何だと思う?」
啓斗
「DFだと思いまーす。」
KJ
「ほぅ、ではどこがどう悪かった?」
啓斗
「う〜ん。」
アレン
「誰か1人抜かれたら終わり、みたいな。」
KJ
「いいところに気付いね 。」
「ディフェンスで1番大事なのは1on1だ。これは譲れない。そして次に大事なのは
“ローテーション”だ。」 
「1人が抜かれた後にほかの人がヘルプに行く。そうしたら一瞬、相手が1人ノーマークになってしまう。そこでローテーションだ。
声を出してコミュニケーションを取っていればこれが上手くいきやすい。」
「テレビで見てたら分からないかもしれないが、プロはクールな選手もしっかり声を出してるよ。というよりほぼ怒鳴ってるね。笑」
「ローテーションは急激に良くなるほど簡単ではないが、コミュニケーションを意識すればハードルは下がるよ。」
「これからそれを練習しよう!」
チームディフェンスの練習が始まる。
KJ
「いいぞ啓斗!
君がディフェンシブリーダーだ。」
「樹里、ヘルプに行くか行かないか迷ってるのが1番ダメだ。どっちがハッキリ!」
徐々にインテンシティ(激しさ,強度)が上がる子供達。
公平
「KJ、おもしろいですね。
エナジーは伝染する。」
KJ
「あぁ。」

        練習後、体育館に残った公平とKJ
公平
「MHは特にスペシャルな子がいますね。」
KJ
「あぁ、だからといって急激に自分達の能力が上がるわけじゃない。」
「チームで対応していきたいね。」

        帰り道、タケル、享、樹里、啓斗

「MHって何人かバリスタU-15に行くんでしょ?タケル、誰か知ってる?」
タケル
「あぁ、上手い奴がいるね。
特に“鳥海武倫”(トリウミ タケミチ)。」
樹里
「タケミチって確かバリスタじゃなくてジーニアス(千葉のチーム)に行くんだろ?」
タケル
「らしいな。後半お前がマッチアップだよ。」
樹里
「うわぁ緊張するな〜」
タケル
「フンッ」

     1ヶ月後、県大会vs『 club MH』当日 
公平
「メンバーはいつも通り。」
「1Qから全快でいかないと
一気に持ってかれるぞ!」
子供達
「はい!」
1Q
タケル、光洋、樹里、享、永久
タケル
「おい樹里、スタートからノってかないと
後半タケミチに呑まれるぞ。」
樹里
(ふ〜     ふ〜     ふ〜。)
試合開始早々から樹里のギアは全快。
単独で点を積み重ね、こぼれ球を享とタケルが押し込む展開。
タケル
(ノッてるな。こうなったら俺達は補佐だ。)
1Q残り30秒。14-8
タケル
(永久が全然ボールに触れてないな。)
チラッ
(全然警戒されてない。)
タケル→永久
タケル
「打て!」
しかし永久のシュートはブロックされ速攻を浴びる。
樹里
「タケル、悪いとこ出てるぞ。」
タケル
「悪い。」
1Q終了。14-10
公平
「まずまずだな。」
「タケル、優しさが出ちゃってる。
そこがお前のいいところだけど、相手に読まれちゃダメよ。」
タケル
「はい。」

2Q
タケル、アレン、マサト、マイカ、啓斗
コツッコツッ
樹里
(鳥海だ)

「デカッ」
公平
「身長は啓斗と同じくらいだと思うよ。」
「ただ、姿勢が良いんだ。」
「姿勢が良い日本人は本当に少ない。」
「それをこの年代から」
アレンのシュートが当たり
DFでは啓斗が立ち塞がる。
しかし相手エース・タケミチの圧巻の個人技に点差は広がらず、一進一退の攻防を繰り広げる。
前半終了。25-25
KJ
「。。。」

ふと隣コートに目を移すKJ。
隣コートでは『那須クラブ』と『鹿沼少年団』が試合をしていた。
UBCベンチ
公平
「ナイスゲーム!いい前半だ!」
「ただ3Qだぞ。強いとこはここでギア上げてくるからな。」
3Q
光洋、アレン、樹里、啓斗、享
club MHの猛攻に失点を重ね防戦一方。
得点もセカンドチャンスのみと伸び悩む。
3Q終了。32-45
4Q
タケル、アレン、樹里、啓斗、享
タケミチ
「あれ?タケル、俺に付かないの?」
タケル
「試合中にうるさいな。」
「そいつ(樹里を)ナメんなよ。」
開始早々タケミチの得点。34-45
樹里
(ハァハァ)
(ハァハァ)
(上手ぇ〜)
タケル→樹里
タケル
(やり返せ!)
樹里はシュートモーションからのワンドリブル、顔を上げる。
するとタケミチはシュートチェックへ
タケミチを跳ばせ樹里は享へパス。
再び樹里へのリターン。樹里→享→樹里
ゴール下で待ち受けるビッグマンと対面。
みぎひだり
フワッ    ピシ

   スパッ
ユーロからバックボード最上部を上手く利用しバスケットカウント。
36-45

樹里のフリースローはゴールに嫌われるも
オフェンスリバウンドを取る享。
享はトップのタケルにボールを預ける。
タケル、間髪入れず
裏へ抜けたアレンへバックドアパス。
カウント。38-45
タケミチ
(ワンマンじゃねーな。)
以降、両チーム得点が停滞しイーブンの展開を演じながらも
4Q残り 3:00 41-49
タケミチボール。
樹里を交わし
ボールをピックアップ
プルアップを放

つも後ろから樹里がチェック。
パシッ 
ブロック成k ピィーーー!!
プッシング!
樹里のファールがコールされる。
公平
「いやいや!着地してちょっと触れただけじゃないですか!!」
公平の抗議は実らず、
後半からタケミチにマッチアップしていた樹里はここで5ファール退場となる。悔しそうな顔でベンチに下がる樹里。
公平
「ナイスハッスル。ナイスプレイ!
彼どうだった?」
樹里
「上手い、
っていうか
凄いっす!
まだ勝てないです。でも」
樹里OUT→光洋IN
樹里を失ったUBCは急激に衰退し、
club MHに地力の差を見せつけられる。
試合終了。
1Q 14-10
2Q 11 -15
3Q   7-20
4Q  9-21
ーーーーー
      41-66

???
「強いな」
「バスケットは一人のスターパワーで激変する競技だ。」
「それがプレイメイカーや2WAYプレイヤーなら尚更。」
タケルに駆け寄るタケミチ。
タケミチ
「上手いね。」
「だけど上手いだけじゃ俺達には勝てないよ。」
「また会おう。」
タケル
「。。。」
栃木県大会1回戦『vs club MH』敗退
引き上げる子供達の顔は憔悴していた。
                                試合後
公平
「お疲れ様。」
「悔しいけど、各々課題は浮かび上がったと思う。冬までにあのチームに勝てるようになればいいんだからさ。顔上げろよ。」
KJ
「お疲れ様。ナイスゲーム!」
「ただ、後半の点差が君達と彼等の差なんだと思う。小さくないよ。」
「ただ自信を持つんだ。上手くなってる!良くなってる!って」
子供達
「。。。」
KJ
「1つだけやっちゃいけないのは“あんなに頑張ったのに”って思うこと。自分の努力を他人に誇っちゃいけない。」
「君が努力して積み上げてきたものを、
相手は努力とも思わず積み重ねてきたかもしれないだろ?それじゃ君はそいつに一生勝てない。」
微笑むKJ。
KJ
「お父さんお母さんも凄く楽しそうだったよ。
次は勝てるように頑張ろう。」
「勝てた方が楽しいもんね。」

帰り支度を整えたKJは1人の少年とすれ違い
ふと声をかける。
それは那須クラブの
“小出 藍人”(コイデ ラント)であった。
KJ
「ナイスプレー!」
小出
「えっ?」
「サンキュー。」
KJ
「スコシ OK?」
小出
「え?は、はい。」
KJ
「オフアーム、オフアーム
アンダースタンド?」
小出
「イエス。」
KJ
「ーーーーー」
一通り話を終え別れる2人。
KJに公平が近づく。
公平
「どうしました?」
KJ
「少し、アドバイスをね。」
公平
「あの子もウチの子達が特に意識してる子ですね。」
「コーチがアドバイスしたなんて知ったら怒るかも。笑」
KJ
(ニコッ)

【ディフレクション】
少し軌道修正する。
その手助けをしてあげるだけで
それが後々大きなことを成し遂げる礎となるかもしれない。
                                                                          続く





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