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利用者調査から見た日本におけるVRChatのコミュニティと経済圏 第一章 序論と研究手法について

2020年度最新版の調査は、以下URLからどうぞ!




お世話になっております!VLEAPの新保です。

今回は、以前より多くの方々にご協力いただいておりました、早稲田大学の生徒として私が行わせていただいたVRChatの研究に関して投稿させていただきます。

本研究は、VRChatが何故ここまで支持されているのかを日本のコミュニティと経済圏に着目して探求したものになります。

本研究は一つのnoteで納めるには長いものになったため、全6つのnoteに分かれております。

第一章 序論と研究手法について
第二章 VRC利用者動向について
第三章 オープンコミュニティについて
第四章 クローズドコミュニティについて
第五章 経済圏について
最終章 まとめと考察

といった順番で投稿していきます。どうぞよろしくお願いいたします!

このnoteは、早稲田大学社会科学学会が発行する早稲田社会科学総合研究別冊の「学生論文集2019」に提出した卒論研究をより読みやすい形に再構成し、いくつかの考察を加えたnoteになります。もし何かしらの引用に用いていただける場合は、3月に出版されるそちらの論文集を根拠にしていただきますと、より信頼性が上がるかと思われます。

なお、このnoteを纏めてpowerpoint化したものがこちらになります。

序論 VRChatの特異性。他VRコンテンツとの比較

1-1. VRChatとは

2016年にVR元年が叫ばれた後、市場からの失望やハイプサイクルからの消失を繰り返しながらもVRはハード、ソフトともに発展を続け、現在では啓蒙期に入ってきているとも言われてます。

こういったVRソフトの中でも、特に同時接続数が高いのがVRChat です。(以下VRC)

VRCは簡潔に言えば

3DCGで構成されたVR世界でのコミュニケーションを提供する無料のツール

です(注:ゲームではありません。)


ユーザーはVR機器またはPCを用いてVRCにログインし、同じく中にいる他のユーザーたちとコミュニケーションをしたり、Unity やBlender を用いて作成した自作のアバターや服、アクセサリーまたはworld をVRCにアップロードしたり、コミュニティを作ったりするなど、非常に自由度の高いツールになっています。

ゲームのようにVRCからユーザーに提供される共通の目的は無く、中でどのような活動をするかは一定のルールを除いてすべてユーザー自身にゆだねられています。

過去に存在した中でVRCに最も近いサービスはビジネス業界も巻き込んで大きな盛り上がりを見せたSecondlife であると言えます。

VRCと同じくアメリカに本拠を置くLindenlab社によって提供されていたこのサービスは、VRでこそなかったものの、高い自由度と「リンデンドル」というアメリカドルと両替可能な内部通貨があったため、その内部では経済活動が活発に行われていました。


さて、このようなサービスの総称はVirtual World (仮想世界)、ソーシャルVR、metaverse (メタバース)、VRSNS などいくつかに分かれています。

ただ、各サービスの公式HPを見る限りVRC、Secondlife、Horizon 、ambr などはVirtual Worldまたは仮想世界と呼称しているため、本論文ではVirtual Worldと呼ぶこととしています。

VRCの同時接続数は現在販売されているVRコンテンツの中でも突出しています。

Steamcharts の統計を見てみると、2019/12/01時点での一日の同時接続数 のピーク数で、VRCに次いで最も遊ばれているBeatsaber で2,805人、次のPavlov VR が1,326人で、VRCと同じく仮想世界サービスであるRecroom が464人なのに対し、VRCは10,217人と突出していることがわかります。

本研究の目的

なぜVRCは他のVRサービスと違い、世間から見ると少数とはいえこれほどまでの熱狂的な人気を集めているのでしょうか?

本研究はVRCにできあがっていると見られる独自のコミュニティと、Boothを中心として3Dモデルが売買されている経済圏 がその人気の要因ではないかと仮定し、VRCの利用実態とVRC界隈のコミュニティやコミュニケーションのあり方、そして3DモデルやVR関連機器などの購買状況について調査したものになっています。

研究手法

調査手法は以下のように分かれておりまして、

1) Twitterアンケート :予備調査として2019年10月18日から10月30日まで4回実施。それぞれの回答数は順番に1,042名2,006名1,802名772名


2) インタビュー1:11月2日から11月18日にかけて18名にVRC上でインタビューを行い、VRCとそれに関連しているサービスを含めた日本におけるVRCの全体像を把握。


3) インタビュー2:11月20日から12月4日にかけてTwitterとオープンコミュニティ、Discord とクローズドコミュニティ、Booth と経済圏の3つに分類してVRC上で14名にインタビューを実施。


4) 最終アンケート:12月4日から7日にかけて45項目の定量的なアンケートを上記の調査を参考に作成。Twitterで回答を募集。回答数576名。

・・・と、4つの段階を踏んで行ったものになっております。

2ヶ月という短い期間でここまでの調査を行うことができたのは、本当にVRCユーザーの方々の協力あってのことでした。本当にありがとうございます・・・!!!


本研究はまずVRChatの利用実態を把握したうえで、クローズドコミュニティ、オープンコミュニティに関わる調査結果と考察を紹介し、次に成り立ちつつある経済圏について論述していったものになります。

次のリンクから、本研究の本論に入っていこうかと思います。

どうぞよろしくお願いいたします!


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