第三章

利用者調査から見た日本におけるVRChatのコミュニティと経済圏 第三章 VRChatのオープンコミュニティについて

お世話になっております!VLEAPの新保です。

今回は前回の利用者動向のnoteに引き続き、VRChatのオープンコミュニティについてご報告させていただきます!

以下のリンクに本研究の調査目的と、調査方法について記載したnoteがありますので、ご一読いただければ幸いです!

VRChatにおけるオープンコミュニティについて

VRChatには様々なコミュニケーション方法が存在します。

それゆえに交流の仕方やコミュニティも多様であるため、まず分類として

Twitterで連携し、後述する入場制限がFriend+以上で、外から観測しやすいオープンコミュニティ

と、

Discordで連携し、入場制限がfriend以下で、外から観測しにくいクローズドコミュニティ

に分けて調査を行いました。


VRChatはinstance ごとに入場制限を設定でき、誰でも入れるpublicからそのinstanceに最初に入ったオーナーのみが招待を承認できるinviteまで5段階あります。

instance = ユーザー同士が交流する部屋を指す。好きなworldを選択してinstanceを立ち上げることで交流できる空間をVRC上に出現させることができる。

入場制限

この入場制限を用いることによって、VRCユーザーは交流する相手を絞ることができます。

ではどの入場制限が最も使われているのでしょうか?早速、グラフを見ていきたいと思います!

当初invite+の承認はオーナーのみとしていましたが、正しくは招待はオーナーのみでした。訂正してお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんでした。

instanceを立てる時の入場制限 回答数=573

画像2

複数回答可能な選択肢で回答を集めました。

これを見てみると、Friend+が70.3%と最も多く使われているわかります。つまり、instanceにいるユーザーのフレンドのみが入れる仕組みにしているところが一番多い結果となりました。

主流なinstanceの移動方法 回答数=574

VRCにおけるinstanceの主な移動方法には、

①自分でinstanceを立てる

②VRCにログインしているフレンドの場所に飛ぶ(join)

③public instanceに入る

の3つがあります。この移動方法についてが次のグラフになります。

スライド11

選択肢+その他で回答を募集しました。

これを見ると上のグラフでfriend+を使う人が多い影響もあり、フレンドにjoinする人が62.9%と最多の割合を占める結果となりました。

ここから、ユーザーがいるところにユーザーが集まるというネットワーク効果があることが予想されるため、ユーザーが集まりやすくよく使われるworldが存在します。

次のグラフはよく使われるworldに関してのものになります。

普段活動しているworld 回答数=518

普段活動しているワールド

これを見てみると、自作worldで活動している人(24.3%)や特定の場所はない人(11.6%)も多いものの、Fantasy Shukai jou(28.6%)やTutorial world(22.8%)、ポピー横丁(13.7%)といったworldなどに集まっていることが確認されました。

ここから、VRCにはworldそのものにネットワーク外部性が働いていると考えることができそうです。

ただ一方で、今回のアンケートは選択肢+その他形式で選択していただいたため、選択肢にあるworldに偏った可能性があります。そのため、今後も調査を続けていこうかと思います。

public instanceに行く理由 回答数=550

さて上記のようにpublic instanceに行く人も一定数居ることが分かっていますが、その動機はどうなっているのでしょうか?

スライド13

選択肢+その他で回答を募集しました。

グラフを見てみるとやはり一番多かったのは新しいフレンドを作るため(47.2%)でした。それに続いて、world散策や気分転換をしたい、しがらみのない交流を楽しみに行きたいという理由が続きました。

新しい人に出会うきっかけ 回答数=573

では新しいフレンドを見つけるきっかけはpublic instanceがほとんどなのでしょうか?

実際に新しい人と出会うきっかけについて聞いたのが次のグラフになります。

スライド14

選択肢+その他で回答を募集しました。

予想通りpublic instanceでの交流も31.3%と多い一方で、知人友人の紹介が最も多く32%、そしてイベントでの交流が27%と続く形になりました。

知人・友人の紹介に関してはもちろん入場制限friend以上における交流も含んでいますが、friend以下のクローズドコミュニティにおいても発生しうるため、この章ではイベントに着目していきたいと思います。

開催しているイベント 回答数=110

VRCでは、運営でなくユーザー主催のイベントが開催されています。

VRCユーザーがイベントを告知したりする際に用いるVRChatイベントカレンダーを参考にすると、10月は322件ものイベントが行われていました。

では実際にはどのような種類のイベントが開催されているのでしょうか?

実際に自由回答欄にご回答いただいたものをユーザーローカルのテキストマイニングツールを用いて解析したのが次の図です。

スライド16

これを見ると、非常に多種多様なイベントが行われていますが、アバターに関する集会が多いことがわかります。また、飲み会やフォース、TRPGなども多いようです。

参加したことのあるイベントの種類 回答数=552

ではこれらを分類するとどうなるのでしょうか?

イベントを

定期開催、不定期開催、大規模開催、オフ会

といった種類に分類したものが次のグラフである。

スライド15

選択肢で回答を募集しました。

こちらを見ると、バーチャルマーケットのように大規模に開催されたイベントに参加したユーザーが80.6%と多いことが分かります。また、70%以上のユーザーがVRC上の何かしらのイベントに参加していることがわかりました。

バーチャルマーケット・・・VRC上で開催される3Dモデルなどの試用、鑑賞、購入が行われるマーケットフェスティバル。VRCの運営からではなく、ユーザーが主催となって開催された。今までに3回開催されている。

Twitterとの連携とアバター人格の形成

VRCはVRC内だけでコンテンツが閉じてしまいがちで、一部Youtubeなどに配信しているユーザーもいるものの、ほとんどはTwitterで日々のVRCの写真をアップしたり、告知、交流などをしています。

ここからは、オープンコミュニティの重要な役割を果たしているTwitterについての調査になります。

Twitterの主な利用目的について 回答数=570

Twitterの主な利用目的について、3つ選択+その他形式で回答していただきました。

スライド17

選択肢+その他で回答を募集しました。

グラフを見ると77.1%が情報収集、71.9%がVRC上の関係構築・維持、67.1%が写真や動画を共有するために使っていることが判明しました。

Twitterで交友関係を広げることはありますか? 回答数=574

また、TwitterはVRC外で交友関係を広げるためのツールとしても使われている事が判明しています。

スライド18

選択肢で回答を募集しました。

71.7%は交友関係を広げるために使ったと回答しており、うち29.3%はVRCよりも多いと回答してい。

アカウントの性質 VRChat用のアカウント 回答数=573

VRCを利用しているユーザーはアイコンなどがVRCのアバターであることが多く、これによりVRC用のアカウントを持っていると予想していました。

スライド19

選択肢で回答を募集しました。

しかし実際は、59.5%がアカウントを分けていないことが判明し、かならずしもVRC用にアカウントを作るというわけではないことがわかりました。

VRCやTwitterの人格と、リアルの人格について 回答数=573

リアルの自分から切り離し、ゲームやMMORPGでアバター人格を持つという行為は以前から見られたものですが、VRCではどうなのでしょうか?

スライド20

選択肢で回答を募集しました。

グラフを見ると57.1%の人は分けておらず、ありのままでVRC上に居ることが分かりました。

その一方で、場合によって分けている人(32.5%)や常に分けている人(10.4%)も存在することが判明しました。

またインタビューの中で、いわゆる無言勢の人はしゃべらないときはアバターに、しゃべるときはリアルの人格によっていると回答されている方もいらっしゃいました。

無言勢に関する調査は以下のリンクにまとめております!

まとめ

以上が、VRCのオープンコミュニティに関する調査になります。

今回の中で個人的に大きかった発見は、VRCのワールドそのものにもネットワーク外部性が働いている点でした。

上記調査を簡単にまとめます。

VRCではInstanceの入場制限としてfriend+が最も多く使われ、そのInstanceにいる全ユーザーのフレンドが入場できる環境であることが多いようです。
Instanceを移動する時もフレンドのいるInstanceに飛ぶjoinが最も多く使われていることがわかりました。
つまり、基本的に人がいるところに人が集まる構図となっており、普段活動しているworldも偏っていることがわかりました。このことから、VRCのworldにはフレンドを中心とする強いネットワーク外部性が働いていると考えられます。
一方でPublic Instanceを訪問する際は新しいフレンドを作りに行くという理由が47.2%という結果になりました。
フレンドを作る理由としてはPublic Instanceでの交流、イベントでの交流、知人・友人の紹介がそれぞれ30%近くを占める結果となりました。
月に公開されているだけで300件以上ものイベントが開かれており、70%以上のユーザーは定期または不定期に開催されるイベントに参加し、バーチャルマーケット といった大きなイベントには80%が参加していることが確認されました。
イベントの種類も多岐にわたり、アバターに関する集会が多めではありますが、それ以外にも交流会やロールプレイ、飲食を伴うイベントなどが行われているようです。こういったイベント機能はVRC運営側が用意したものでなく、ユーザー側が自主的に運営していることが規模の面から見ても今までのゲームとは異なる現象であると言えるでしょう。
Twitterは情報収集が77%と最多でしたが、ユーザーとのつながりや写真共有に使う方も多くいらっしゃいました。
アバター人格に関しては、予想に反し59.5%と半数はアカウントを分けず、57.1%の人は人格を分けていないことが分かりました。ただ、分けている人も42.9%はいることが判明しました。

以上がオープンコミュニティのまとめになります。ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました。

次回はVRCにおけるクローズドコミュニティになります!



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