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SaaS/THE MODELに見られる「専門家」全盛時代の「ジェネラリスト」存在意義

本記事は「#SaaSLovers 秋のブログ祭り」 のバトンブログ企画記事です。9日目担当の、契約ライフサイクルマネジメントシステム(CLM)を提供するHolmes(https://www.holmescloud.com/holmes/)の津田(@small5_td)と申します。

昨今、SaaSやTHE MODELについて考え実装していく上では、マーケティング、インサイドセールス、カスタマーサクセスなど単一機能の専門的なフレームワークや知見は検索すればたくさん見つかるようになっており、大変素晴らしい事だと感じています。また、「メンバーシップ型」から「ジョブ型」への移行が常にメディアを賑わせるなど、専門家のプレゼンスがますます大きくなっているように感じます。

一方で、専門領域に抜きんでた強みはないけれども、ジェネラリストとして活躍する方々の知見や考えは世の中にあまり出てないように感じています。

このnoteでは、自身の経験も踏まえて、専門家全盛時代の「ジェネラリストの存在意義」について私見をご紹介したいと思います。少しでも皆様のお役に立てれば何よりの喜びです。

そもそもお前は何者なのか?

まず自己紹介をさせてください。私は、新卒で旭硝子に入社しガラス製造技術開発に従事した後、経営コンサル、外資系2社で経営企画/経営管理を経験した後に2020年8月よりHolmesに参画しております。

直近では、アドビのコンサルティングサービス事業において、マーケティング、セールス、パートナー開発、コンサルティングデリバリー、カスタマーサクセスを横断して事業管理しておりました。

このとおり、特定領域でキャリアを形成してきたわけではない正真正銘のジェネラリストタイプです。以降は、これまでの経験から見えてきた景色、大事にしている事について書いていきます。

事業ドライバーを見定め"つなぐ、仕掛ける"

ジェネラリストはその多様な経験から、各領域の主要な論点をおよそ理解している事が強みとしてあげられます。よって「何か困ったらあの人に聞いてみよう」という情報のハブになるケースが多くあります。

もちろん、様々な事を知っている事は組織を助けますし、一定の価値を生むでしょう。でもそれだけでは「ただの便利屋」止まりになってしまうのではないでしょうか。それでは、ジェネラリストが「便利屋」に留まらず、本質的な価値提供を生み出すために最も大事な事は何なんでしょうか。

それは何より、事業ドライバーを見誤らない事、そして事業成長のために情報を”つなぎ“、自ら“仕掛け“ていく事だと考えます。私が薫陶を受けてきた方々に共通していた事は究極的にはその1点に集約され、私自身も常に意識してきた事がまさにこれです。

サービス事業を例にとると、売上の先行指標として契約高やさらにその手前の案件パイプライン管理だったり、案件が充足しているのに売上が伸びない場合は、稼働率やリソース配分などを掘りに行ったり、いくつか鍵となるドライバーに対してアクションの効果の大小や時間軸を鑑みながら行ったり来たりします。

例えば、とある月曜日の朝、こんな事がありました。案件パイプライン管理の会議で営業マネジャーが、翌四半期のパイプラインがターゲットを下回り、そこに対するアクションが実行を伴っていない事について事業部長から叱責を受け、うなだれた姿で自席に戻っていきます。翌四半期の目標を達成するにはターゲット相当の案件パイプラインが作られているべきなので、当然の光景です。

会議に同席していた私は、途中で営業マネジャーをつかまえて個室で2人で話をし、そこでデリバリーマネジャーAさんとBさんに具体的に既存顧客X、Y、Zの提案機会をヒアリングして協力してもらう事を提案(AさんやBさんとは常日頃からオフィスで雑談しながら既存顧客に対するデリバリーや今後の進展について聞いていました)。

その営業マネジャーを一緒に連れてAさんBさんの元へ直接向かい、AさんやBさんの直接的なKPIではないものの事業全体を見れば今はパイプラインを積むことが重要である事を説明、納得してもらい、具体的なヒアリング日程調整などを実行していきました。結果としてこの後、案件パイプラインが少しずつターゲットに近づいていきます。

また、別のケースですが、毎週定例で出しているデリバリーコンサルタントの稼働率レポートを見て、コンサルタントの稼働率に偏りがある事を私は見つけます。コンサルティング事業はコンサルタントの稼働率が売上に直結するので、低い稼働率はすぐに改善すべき必要があります。

偏りのあるコンサルタント本人およびマネジャーに直接話を聞き、また別のマネジャーには稼働を必要としているプロジェクトの有無を確認しながら、稼働の低いコンサルタントに具体的にアサイン可能なプロジェクトを見つけてはアサイン調整を行った事もありました。

このように、事業や組織/人の空気をつぶさに観察し、何らか違和感を感じたらすぐに各領域のマネジャーに話をしながら、最も重要な「執行」が確実にかつ速やかに進むように情報を"つなぎ"、自ら"仕掛け"ていくのです。

細かい内容に感じるかもしれませんが、こうして小さな違和感や小さな課題でも細かくフォローを積み重ね、事業の「執行」にこだわって貢献して初めて、「便利屋」からの脱却、本質的な価値提供が生み出されると考えています。

確実な「執行」の支えとなる下地作りも重要

これを実現する下地作りとして、日頃から関係するマネジャーやメンバーらとの定例会議だけでなく雑談やチャットも非常に重要です。

私の場合はランチや飲み会はあまりしなかったですが、日頃から事業に関係しそうな市場情報やお役立ち情報をSlackやTeamsに投稿しながら、そこにつくコメントやスタンプをきっかけに話したりして、いつでも自分の話に少し耳を傾けてもらえる状態を維持する努力をしていました。

少し話はそれますが、現在、リモート状況下で雑談をどうしてくか、はどんな組織でも課題の1つだと思っています。私はHolmesに入社してビジネス、テック、コーポレート関係なくインターン含めて全メンバーとまず1on1を行ってとにかく顔と名前を自分が覚える事、自己紹介スライドを全社員共有のSlackチャネルに投下して少しでも覚えてもらう事、に徹しました。

ここまで記載したような「執行」へのこだわりやアクション、それを支える下地作りはおわかりのとおり誰でもやろうと思えばできる事です。ですが、例えば本当にインターン含む全社員と1on1をやるなど、小さな事でも「やり切る事」って案外出来ていない場面をよく目にしますし、私自身はこれを大事にしています。

SaaSにおけるジェネラリストの未来は

ここまで、主に自身の経験を踏まえてジェネラリストが提供すべき本質的な価値について書いてきましたが、本企画のテーマであるSaaSにおける存在意義について少し触れたいと思います。

SaaSについては、私より詳しい方がたくさんいらっしゃると思いますが、SaaSにおけるジェネラリストの存在意義は高まってきていると考えています。まずわかりやすいところでCRO=Chief Revenue Officerの認知、必要性の高まりがあると思います。例えばCROについて解説する下記記事ではこのような言及があります。

・CROの役割は、「セールス」「マーケティング」「組織づくり」など、収益を上げるために必要なこと全てである(だからこそ日本のベンチャー・スタートアップにおける必要性が高い)
・今の日本ではCROに求められる要件が多すぎて、採用が困難
・そのため、CRO候補を育成していく必要がある

また、近年海外では増えてきている(はず)のChief of Staffも目指すべきキャリアの一つかと思います。日本企業的には社長室長的なニュアンスが一番わかりやすいかもしれません。下記に示すHarvard Business Reviewの記事ではこのような言及があり、Chief of Staffの重要性が見て取れます

(DeepL訳引用)
多くの新任CEOは、たとえそれが自分のスタイルに合っていなくても、あるいは自分が行わなければならない業務の変更に合っていなくても、継承してきたシステムをデフォルトで使用しています。多くの場合、CEOが成功するために必要な情報の流れを処理するためのより良い方法があり、チーフ・オブ・スタッフ(CoS)が重要な役割を果たすことが多い。

CROもChief of Staffも経営レイヤーすぎて参考にならんわ!そんな声が聞こえてきそうですが、もう少し手触りがあるポジションとしては例えばSales Operationが該当するかなと思います。ただ、Sales Operationと一言で言ってもデータ分析やインフラ整備(Salesforce, Tableau etc)の専任やEnablementの専任などともすれば単一機能のみにとどまってしまったりするので、とにかく重要なことは情報を"つなぎ"、小さくても自ら"仕掛け"る事にあると思います。

「何者でもない」呪縛に囚われないために

ここまで書いてきた通り、専門家全盛時代においてもジェネラリストは「何者でもない」存在ではなく、「潤滑油」として重要な役割だと思っています。目の前の事に向かい続ける事で道は拓けてくると思います。本noteが専門家でない事に悩む方の参考に少しでもなれば幸いです。

カジュアルな面談など私でよければいつでもお受けします!私自身も、このnoteで書いているような事すべてを完璧にいつもできているわけではないですし、当然最初から出来たわけでもない普通のサラリーマンです。一緒に悩み、一緒に成長していければ幸いです。また、具体的にどういうキャリアを経てここに至るのか、自身についてもどこかで書いてみようかと思います。

最後に、私の元上司であるとくさん(https://note.com/noritoku)も、これは本当に偶然なのですがほぼ同様のテーマで最近noteを書いてらっしゃるのでぜひご一読ください。

明日は、Hubspotの橋本さんが代理店営業について書かれます、お楽しみに!

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