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第13回 INSEADでの学び どのようにLeadershipを教えているのか(その2)?

Leadershipについての2回目の投稿になります。前回の投稿では、FPL(Fair Process)が求められる背景について説明しました。今回はFPLについて説明していきます。Leadershipについての講義の内容が幅広く、今回もかなりの文字数になりました。

要点を先に書きますと、変革を起こすプロセスを5つに分けていますが、その中でも最初の2つ、Engaging & Framing、Exploring & Debatingに十分な時間を割きながら参加者と一緒に作り上げていくことの大切さを提唱しています。

以下に詳しく書いていきます。


FPLにおける5つのプロセス(特に1と2が大切)


Fair Process Leadership

この図のようにFair Process Leadershipを5つの要素に分けて説明しています。

1 Engaging & Framing
Engaging & Framingは、問題解決の初期段階で重要なプロセスです。Engagingでは、リーダーがチームを積極的に関与させ、メンバー全員の視点や意見を引き出すことで、問題の共有と理解を深めます。これにより、プロジェクトへの参加意識とモチベーションが高まります。Framingでは、解決すべき問題の範囲を定義し、適切な知識や関係者を特定していきます。このプロセスでは、解決策に急ぐのではなく、問題を慎重に診断し続けることが成功の鍵となります。"Engaging" にはいくつかの意味がありますが、ここでは「関与する」や「巻き込む」という意味で使われています。リーダーがメンバーや関係者を問題解決のプロセスに積極的に参加させ、彼らの意見や視点を取り入れることを指します。

2 Exploring & Debating
Exploring & Debatingは、問題解決のために創造的なアイデアを模索し、多様な視点で議論するプロセスです。この段階では、アイデアをできるだけ広く探ることが重要で、早急に結論を出さないよう注意が必要です。多様な意見を尊重し、異なるバックグラウンドを持つメンバーを巻き込むことで、新しい発見が促進されます。また、心理的安全性を確保し、自由に発言できる環境を整えることが求められます。アイデアの独立性を保ち、無関係な視点からの発想を奨励することで、より革新的な解決策が生まれます。議論は建設的に進め、感情的にならず、論理的に意見を交わすことが成功の鍵となります。このプロセスを適切に進行することで、効果的かつ創造的な問題解決が期待されます。

3 Deciding & Explaining
問題解決プロセスの中で決定を下し、その決定をしっかりと説明する段階です。Decidingでは、議論や検討を経て、最終的な結論を導き、決断を下します。しかし、このプロセスは単に結論を出すだけではありません。Explainingでは、決定の理由や背景をチームに詳細に説明し、なぜその結論に至ったのかを理解させることが重要です。

また、説明は単なる結果の伝達ではなく、プロセス全体の透明性を保ち、メンバーが納得できるように、決定の「何を」「どうやって」「なぜ」を共有することが求められます。特に、リーダーが難しいトレードオフや選択肢を説明し、他の可能性を閉じる際には、このステップが非常に重要です。

この段階で十分な説明がなされない場合、チームの実行力やコミットメントが低下するリスクがあるため、しっかりとした説明が成功の鍵となります。

4 Execution
計画や決定を実行に移す段階で、リーダーが一貫した姿勢でチームを導き、成功に向けてプロジェクトを進めることが求められます。リーダーはまず、各メンバーの役割や責任を明確にし、プロジェクトの進行を監視しながら、必要に応じてサポートや調整を行います。ここで特に重要なのは、リーダーの姿勢の一貫性です。リーダーが自身の言動をブレさせず、決定をしっかりと支え続けることで、チームは信頼感を持って仕事に取り組むことができます。

一方で、状況によっては変更が必要になることもありますが、その際にはリーダーが変更の理由や背景をチームに透明に説明し、全員がその変更を理解し納得するように導くことが大切です。リーダーが一貫した姿勢を保ちつつ、適切な変更を柔軟に行うことで、チームの実行力やモチベーションを維持し、プロジェクトの成功に繋げることができます。

5 Learning & Evaluating
プロジェクトの結果やプロセスを振り返り、次に繋げるための学びを得る段階です。実行した内容を評価し、何が成功し、どこに改善の余地があるかを深く分析することで、次のプロジェクトの成功に活かします。

この段階では、リーダーはまず、チームの努力や貢献を正当に評価し、認めることが重要です。さらに、自己批判的にプロセス全体を振り返り、どの部分がうまく機能しなかったかを正直に見つめ直すことが求められます。この反省を基に、次のプロジェクトで同じミスを繰り返さないよう改善点を共有し、組織全体の成長を促します。

つまり、初期段階での苦労や試行錯誤が後半の大きな成果に繋がるため、リーダーはプロセス全体を評価し、持続的な改善を目指すことが重要です。このように学びと評価を繰り返し行うことで、次のサイクルでさらに高い成果を上げることが期待されます。

一番重要なのは、1(Engaging & Framing)と2(Exploring & Debating)である。

そしてハイライトした1(Engaging & Framing)と2(Exploring & Debating)がこの中でも圧倒的に大事といっています。この講義を聞いて私は頭をガツンと殴られました。変革を進めていくためには、意思決定のところではなく、チーム組成と課題の特定、解決策の議論と討議のところからメンバーを参画せよといっているのです。Fair Process Leadership、つまり変革を起こすための公平なリーダーシップとはこういうことです。
最初の1と2を自分で決めて、意思決定の共有から始め、メンバーにアクションの実行のみを指示していませんか?大きな会社になるとこういったことは良くあることです。上層部からの指示で、決まったから実行しなければならない、こういう状況では、プロジェクトメンバーの意欲も湧きませんし、心からの信頼、協力を得ることが難しいのは明らかです。
プロジェクトに関わるメンバーをEngaiging(参画させ)、そもそもの課題は何か?、課題の範囲を定め(Framing)し、解決策について探究と討議(ExploringとDebating)を行うからこそ、参加者の気持ちを一つにすることがで、その後の実行へと繋げることができるのです。
こういうプロジェクトマネジメントの観点からリーダーシップを解説するというのは私にとっても初めてでありとても新鮮に感じました。

変革に関わる5つの人たち。敵対者と反対者にどう対処するのか?

INSEADはコンサルスクールと言われることからもフレームワーク、マトリクスを用いて説明することが多いです。変革に関わる5つのプレーヤーに類型化します。Trsut / Agreement Matrixと呼ばれるもので、プレーヤーを信用度と合意形成度で分類します。分かりやすく言えば、相手を「信頼できるか」、「合意形成があるのか(変革に理解を示しているか)」で分類していきます。

変革を進めていくためには、味方を増やしていく必要がありますが、変革に対するスタンスは様々です。変革自体は非常にデリケートなものであり、変革がもたらすもの、変革を推進する人との関係(政治、競争、感情)、これまでの経緯などが影響します。そして今回の学びは、敵対者と反対者へのアプローチです。両者ともに合意形成が図れていない、ということではな同じですが、信用度が大きく異なるのです。この両者についてどうアプローチしていくべきなのでしょうか。

そもそも争って勝てないのに争っても意味がありません。変革が進行し、十分な支持基盤が構築され、変革の成功が確実になるまで、敵対者との対立は控えるべきです。敵対者と対立する際には、変革プロセスが十分に進んでいるときに行うことが推奨されます。敵対者を無視するのではなく、可能であれば対話を通じて共通の利益を見つける努力をすることが重要ですがそもそも信用度が低いので、こちらとしても十分なリソースを投じるべき相手ではありません。変革推進の基盤が固まるまでは、争いを避け、基盤が固まったところで交渉を試みるのが良いと思います。

一方で、反対者へのアプローチは大きく異なります。反対者は、変革に対して合意形成が取れていませんが信用度があります。つまり変革の成功には無視のできない相手です。初期段階では、反対者とも争わないことが重要です。変革が進み、支持基盤が強固になった段階で対話を通じて反対者の意見を理解し、共通の利益を見つける努力をします。反対者はしばしば信用度が高く、経験豊富なため、彼らの視点を理解し、共通の目標を見つけることで協力を得る可能性もあります。反対者とのコミュニケーションと交渉のチャネルを常に開いておくことも大切です。反対者が何に抵抗しているのか、その理由を理解することが重要であり、それに基づいて対応します。反対者の中から味方を増やしていくアプローチこそが変革の成功要因になっていると考えます。ここへのチャレンジは変革を推進するリーダーとしては避けては通れません。

プロジェクトメンバーとの関係性について

プロジェクトに参加するメンバーとの関係を整理します。現時点での関係が「X」であり、プロジェクトの成功に向けて「O」を目指して取り組みます。ご覧いただけるように、全ての参加者が同じように重要なわけではありません。このように見ると上から2人目の人に一番のエネルギーを割くべき人であり、この方との関係、報告、ディスカッションにリーダーとしての時間を費やす必要があるのです。こういったものは作成する必要はないでしょうし、数値化することが難しいと思いますが、感覚的なもので構わないと教授は説明されています。

プロジェクトメンバーとの関係

Fair Process Leadershipの学びをALP(Action Learning Practice)とコーチが補強する

このFLPをALPで落とし込みながら学んでいきます。実にこれが学習効果が高い、別の言い方をすると大変です。改めてALPという指導方針は素晴らしいなと思います。ALPについては、第11回の投稿で詳しく述べていますので、そちらを参照してください(https://note.com/shogo_soma/n/nd67e4e076cd8)。

まずは自分が取り組んでいるプロジェクトを選定します。私の場合は社内で現在取り組んでいるプロジェクトを題材として選びました。それを題材にしてFLPで求められているリーダーシップの発揮度合いを測定するのです。

皆さんもぜひ、自分が担当しているプロジェクトにおいて、FLPに求められる行動を実践できているでしょうか。私の場合も多くのことを実現できていません。

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