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第11回 INSEADでの学び ALP(Action Learning Practice)と担当コーチはどのようなものか?

本日はAction Learning  Practice(ALP)担当コーチについて説明します。今回も結論から申し上げます。

ALPはオンラインでの授業を主体としたINSEADのLead the Future Programの根幹をなし、理論と実践を受講者に体得させる教育形態のことです。その学びをより確実、強固にするためにビジネスプロフェッショナルである、コーチを各生徒に割り当て、コーチとの対話の中でALPに取り組みます。ALPという教育形態は、オンライン教育のメリット(地理的制約、時間制約がない)を最大限に生かしつつ、デメリット(一方通行、動画視聴だけで終わる、具体的事例に適用できない)を最小限にとどめる教育形態であると思います。これよりも優れた教育手法を考案するのはなかなかむつかしいと思います。

それでは詳しく述べていきます。


Action Learnign Practice(ALP)とは何か?

Action Learning Practice)は以下のように書かれています。

ALPは、各コアモジュールで学んだ概念やフレームワークを、あなたの実際のビジネスに活用するための週ごとの課題です。

毎回の講義では教授から多くの理論、重要なフレームワークを紹介されます。それを現実のビジネスに適用することがALP(Action Learning Practice、以下の表ではAction Learning Projectとなっていますが、この投稿ではPracticeに統一しました。)です。科目単位の取得のためには、4回のALPの提出(4週連続提出)が求められています。


Lead the Future Programに必要な平均勉強時間

上記の図がLead the Future Programに求められる平均勉強時間になります。合計で4〜6時間ということになります。黄色の部分がALPになりますが、学習時間の半分の時間、2−3時間をこのALPに費やすことを求められています。私の場合はこの時間では終わっていません。動画視聴は、教授の講義動画を見るものであり、ほぼ予定通りで終わります。ALPの学習については、クラスメートとに話してもみんな苦労しています。グループワークの際にも、締め切りが近づいてくるとALP(アルプという)の話はよく話題に上がります。テーマは何にした?コーチに出した?などなど。

以下の内容は、Lead the Future Programのキックオフセッションの際に大学から提示された資料の抜粋ですが以下のように書かれています。

アクション・ラーニング・プロジェクト(ALP)は、リーダーシップ・アクション・プランの構築に焦点を当て、自分のリーダーシップ役割に学びを実践するためのものです。まずリーダーシップの状況を説明し、目標を設定します。毎週の課題とアクションプランを通じて、全体の概要を構築します。最終課題では、学びの要約を作成し、リーダーシップの課題に取り組むための優先事項を特定します。

INSEAD Lead the Future Program におけるALPについての説明

つまり、Lead the Future ProgramにおいてはALPの取組が学習時間の大半を構成し、さらにはこの課題を提出、クリアすることを重要視しています。以前の投稿で書きました(https://note.com/shogo_soma/n/nf638a1b95aad)がLead the Future Programには4つの必修科目と3つの選択科目があるのですがこれらの科目すべてにおいて、ALPに取り組まなければなりません。そして最終的には、24年の12月頃にコアプロジェクト(いわゆる卒論、修士論文に相当するもの)を完成させなければなりません。コアプロジェクトは、ひとつひとつの科目で取り組んだALPでの検討が土台になります。

フレームワークによる分析と活用について

INSEADのMBA特長としては、卒業生にコンサルティング会社に就職することが多いです。少しずつ自分の知り合いに、INSEAD関係の方が増えてきていますが、やはりコンサルティング業界関係者が増えてきます。そのことからもINSEADはコンサルスクールと紹介する記事も見かけます。コンサルティング会社では、経営課題に対する分析、解決策の提案を行う際にフレームワークを用いることが多いですし、INSEADの授業においても、複数のフレームワークの説明を受けます。

そして学んだフレームワークを実際のビジネスの分析、解決策の提案に適用するためにALPに取り組むのです。理論知識を理解レベルでとどめさせずに、実際に自分が取り組んでいる業務に適用することで、一層の理解と適用を受講者に求めるのです。そのために毎週取り組む課題がALPということになります。

しかしながら、なかなかこれが大変です。

皆さんもフレームワークを用いて分析をされたことはあると思います。実在しているビジネスにフレームワークを適用して、分析することは取り組みやすいです。ですが反対に、フレームワークを用いて新しい提案をする、というのはかなり難易度が上がります。

ある会社のイノベーションに富んだサービス、商品をフレームワーク用いて分析することはそれほど難しいことではありません。しかし、フレームワークを使って、自社の新しい、イノベーションに富んだサービスを企画する、ということはかなり難しいわけです。フレームワークについて理解(分析)することと、活用出来ることは全く次元が違います。

INSEADにおいては、このように、優れたフレームワークをより実際の業務で使いこなせるように指導します。さらには、一つの授業だけではなく、すべての科目においてもALPという教育手法を適用することで学習効果を高めています。こういったカリキュラム構成ができるということは、INSEADの教授陣においてもALPについての重要度が合意形成されているからだと思います。私が20年前に早稲田大学ビジネススクールにおいては教授ごとに講義形式は様々であり、一貫した教育方針を適用するというのは決して簡単なことではないと思います。各々の教授に、授業については裁量を与えつつも、学習形態において統一化を図ることは素晴らしいことと思います。

担当コーチについて

各科目ごとに担当コーチが割り当てられます。多くのコーチはINSEAD出身者、卒業生です(おそらくは全員そうであると思います)。当然のこととしてビジネスプロフェッショナルです。各授業は、グループワークメンバーの発表と担当コーチの連絡により始まります。つまりこのプログラムを修了するまでには、4つの必修科目と3つの選択科目がありますから、これだけでも7人のコーチとの接点があることになります。素晴らしいですね。

2024年3月にLead the Future Programが開始されました。このキックオフセッションには、24年3月にこのプログラムを修了された方(つまり私からすると先輩)が参加してくれました。修了された方から、私たちに対するメッセージとしては「最大限にコーチを使い倒せ」でした。その時点ではこの言葉の意味が分からなかったのですが、今ならよくわかります。

このプログラムにおいてはALPへの取り組みが学習時間の大半を構成します。その学習に対して、第3者視点でALPにフィードバックを与え、受講者の学習効果を最大限に高めるのがコーチの役割です。

上述したように、所属企業も部署も立場も異なる受講者がALPに取り組みます。それを限られた時間とメールと数回のテレビ会議でフィードバックしていくことは決して簡単なことではありません。それゆえ、他の学生たちと話しているとコーチに対する不満の声も聞こえてきますが、私はこれまでのところ十分に満足できております。私は、私なりに真剣にこのALPに取り組んでおりますし、私の考えるトピックスについて知見の少ないコーチが理解、キャッチアップしやすいように資料を工夫する、補足説明スライドを足す、エグゼクティブサマリーを添えるなどの工夫をしています。

ALPの提出前にはコーチからフィードバックをもらうことが要件となっています。提出期限間近になるとコーチの確認作業が集中することも容易に想像ができます。それゆえコーチからも、期日間際に提出することは控えてくださいとのリクエストがあります。さらには、他にメインのお仕事がありながらALPのコーチに従事されているわけですからかなり大変です。本質的なところで、学ぶことが好き、アドバイスすることが好き、人との交流が好きでないとこのコーチという役割は続けられないと思います。

私は現在までに2つの科目(イノベーションと戦略)を終了しましたので2人のコーチと出会いましたがお二人とも素敵な方でした。ALPについてのアドバイスだけでなく、ネットワークの紹介などもしてくれましたし、私が彼らが滞在する国に訪れたり、彼らが日本に来るようなことがあれば、きっと対面でお会いできる関係に至れると思います。

まとめ

Lead the Future Programはオンライン形式で行われるプログラムです。そしてのその学びの中核をなすものがALPであり、この課題をクリアすることが単位取得、修了要件となっています。そして、受講者の学習効果を最大限に引き出すために、各科目毎にビジネスプロフェッショナルである担当コーチをアサインします。

以前にLead the Futureの専攻プロセスに書きましたがこのプログラムに参加するためには、TOEFLやGMATのスコア要件はありません。私の場合は面接もありませんでした。しかし、この1年間のプログラムを修了した場合は、Alumni資格を得ることができます。いい加減に取り組んだ受講者がAlumni資格を得られるなれば、最終的にはINSEADブランドの毀損につながります。これまでこのプログラムで学習してきてよく分かりましたが、オンラインプログラムではありますが、非常によく設計されたプログラムであると思います。誰でも簡単に修了し、Alumni資格を取得できるようなプログラムではまったくありません。

さあ、今日からはリーダーシップの授業がスタートします。どんな内容になるのか楽しみです。戦略と同様にリーダーシップの本質は変わっていないと思うのですが、時代、環境が変わりゆく中でINSEADの教授がどのように私たちにリーダーシップについて語るのか、大変楽しみです。

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