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[級位者向け将棋戦略論]駒を働かせるために④。駒を王様の近くに寄せるのが特に有効なケース。

 こんにちは、ゆに@将棋戦略です。

 今回はシリーズ初回にて説明しました、指針④がテーマです。つまり、駒を王様の近くに寄せようという指針①に関して、それが特に有効になるケースを書いていきます。


 まずはなぜ特に有効なケースが生じうるのか、カンタンに説明しておこうと思います。以下の参考図を見て下さい。歩と玉以外に、赤、青、緑の丸印を打ってあります。

参考図①。赤丸は攻めの働き、青丸は守りの働き、緑丸は第3の働きが主体である駒。

 赤丸が打ってある駒は、攻めの働きが主体である駒です。一方、青丸は守りの働きが、緑丸は第3の働き(ここでは大駒をジャマする働き)が主体です。こんな風に、通常はどの駒がどの働き成分が主体の駒であるか、ざっくりですが分類することができます。

 ですが、場合によっては駒の働きの成分が複数混ざりあって、とても強力な駒となります(今後は、これを働きのミキシングと表現します)。以下に紹介するケースがそれにあたります。

自玉と相手玉が同じサイドに居る時

 一つ目にご紹介するのは、自玉と相手玉が同じサイドに居るケースです。
カンタンに言うと、居飛車と振り飛車の対抗形みたいな場合です。例えば以下の図①。手番は後手番です。先手も後手も、玉が先手から見て右辺にいますね。

図①。後手番。お互いに玉が右辺にいて、大駒を持ち合っている状況。

 加えて言うと、お互いに大駒を持ち合っている状況ですね。シリーズ②でご紹介しました指針に従えば、大駒を持ち合っている状況では駒を王様に近づけるだけでなく、相手の持ち駒の打ち込みに気を付けてバランス良く駒を配置する必要があるのでした。

そうして見ると、先手は自陣にスキが全くないのに対し、後手は全体的に駒が偏っており、7一や6一の地点にスキがあります。とすると、この局面は先手うまくいきそう?と思えますが、この場合は実はそうではありません。

 後手は図①から、△4五歩と突きます。以下、▲3六歩△4四銀▲3七桂△2四歩(図②)と、後手はさらに駒を偏らせます。

図②。ここで4四の銀の働きに注目。

ここで、4四の銀の働きに注目してみましょう。まず後手玉の近くに配置されていて3三や5三の地点にも利いているので、守りの働きを持つ駒と言えますね。でもそれだけではありません。4四の銀は攻めの起点にもなっており、いつでも△3五歩から攻め駒として活用することができます。このような駒は、存在しているだけで攻めの働きも守りの働きも持っており、とても強い駒と言えます。

図②は先手はあまり手がないのに対し、後手は△6四角~△2五歩や△3五歩と攻める手があって、既に後手がやや有利と言えそうです。それだけ、4四の銀が強いのです。先手は△4五歩と突かれないように、早めに▲4六歩と突いておくべきだったでしょう。

 というわけで、玉が同じサイドにいる時、玉側の駒は攻めと守りのミキシングによりとても強くなる場合があります。ちなみにですが、上の例に挙げた4段目(6段目)の金銀については、位(5段目の歩)とセットが望ましいです。そうでないと、歩で追い返されてしまって、ミキシングの効力を失ってしまいます。

相手玉と相手の大駒が近いケース

 次は、相手玉と相手の大駒の位置が近いケース。いわゆる、玉飛接近形がそれに該当します。図③は右玉戦法の序盤戦で、先手番。▲6五同歩だと△同桂で銀桂交換になってしまいます。どうするのがいいでしょう?

図③。先手番。後手から△6五歩と突いた局面。

 ここでは駒損になっても、▲6五同歩と取ってしまうのが良いです。以下、△同桂▲6六銀右△7七桂成▲同桂(参考図②)と進みます。

参考図②。駒損ですが、6六銀や7七桂の存在が後手玉に響いていて大きいです。

こうなると先ほどの例と同じように、4段目に出た銀が攻めにも守りにも働いており、とても強い駒になっています。参考図②以下は次に▲5五桂があるので△5四歩と守り、▲5五歩△同歩▲同銀△5四歩▲6四歩△7二銀▲6六銀△6三歩▲5六桂(図④)が一例の進行です。

図④。先手は次に6五桂と跳んでいけばOK。既に先手がかなり有利。

図④は既に先手がかなり有利な局面です。後は▲6五桂と跳んで、▲5三歩や▲7五歩を狙っていけばOKです。

 ここまでの話は、玉飛接近形とあまり関係ない話のように思えますが、そうではありません。図④以降、6五桂や7五歩~7四歩とさらに駒を進出させた場合、それらの駒は玉を攻める駒であると同時に、相手の飛車をいじめる働きも持ちます。すなわち、攻めの働きと第3の働きのミキシングによって、とても強い駒になります。

 もう一つ例を出してみましょう。図⑤は後手番。またも先手はバランス重視の構えで、後手は偏った陣形です。この瞬間の右辺は、後手にとって数的優位の状況ですので、何とか左辺で戦いたいですが、4五の地点は先手もがっちりガードしています。

図⑤。後手番。後手は何とか左辺で戦いたい。

図⑤では、強引に見えても△4五歩と戦いを起こしてしまいます。以下、▲同歩に△3四銀と進出して、▲3五歩に△4五銀左(参考図③)とぶつけてしまいます。

参考図③。駒損確定の攻めですが、既に後手優勢です。

後手は駒損確定の攻めですが、参考図③以下▲同桂△同銀▲同銀△同桂(参考図④)となると、次の△4六歩~△3七銀や△3七歩~△3八銀が玉を攻めながら飛車をいじめる手になり、先手はもう受けがありません。

参考図④。△4六歩や△3七歩を防ぎきれず、後手勝勢です。

 以上、駒を王様に近づける手が特に有効になるケースについてご紹介しました。次回は指し手のプライオリティのお話の予定です。

 それでは読んで下さり有難うございました。引き続きよろしくお願いいたします。


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