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祝「四冠」藤井聡太王位・叡王・棋聖が竜王獲得

藤井聡太王位・叡王・棋聖が11月12-13日の竜王戦七番勝負第四局に勝ち、4勝0敗で竜王を奪取し自身初の四冠となりました。19歳3か月での達成は、これまで羽生善治九段が持っていた22歳9か月を大幅に更新する最年少記録となりました。翌日の会見では「昇龍」と揮毫した色紙を披露し、「竜王戦だからということもありますが、竜が空に勢いよく昇っていく様ということで、自分もそのように上を向いてそこを目指していけるようにという意味を込めました」と語りました。

もはや最年少記録ということを感じさせない程あっさりと、圧倒的な強さで将棋界最高峰のタイトルを勝ち取ってしまいました。昨年二冠を獲得し、今年はタイトル数を増やしていくことを期待されてはいたものの、昨年まで通算0勝6敗と歯が立たなかった豊島竜王(昨年末時点)の持つ竜王と叡王は、藤井二冠(昨年末時点)にとって最難関のタイトルになると考えるのが一般的だったと思います。ところが現実は、豊島竜王を挑戦者に迎えた王位戦は4勝1敗で防衛し、叡王戦は3勝2敗で奪取し、竜王戦も4勝0敗で奪取してしまいました。ここでは竜王戦七番勝負を振り返り、全八冠制覇への道のりを確認しておきたいと思います。

■竜王戦七番勝負振り返り

第一局 (10月8-9日)
初日に後手の豊島竜王が先手の飛車の横利きを止める好手を指し、形勢はわずかに豊島竜王に傾きましたが、持ち時間は藤井三冠の方が多く残す展開になりました。2日目の午後、豊島竜王の残り時間が先に1時間を切り、最終盤に形勢が逆転した頃には両者とも10分を切っていましたが、藤井三冠は訪れたチャンスを逃さず寄せ切りました。
第二局 (10月22-23日)
先手の豊島竜王が序盤から工夫を見せ、飛車の成り込みを目指して歩を突いたのに対して、藤井三冠が竜を作れられても大丈夫と歩を突き返した手が意表を突きました。豊島竜王は2時間近い長考を余儀なくされ、持ち時間は藤井三冠が1時間近く多く残して初日を終えました。2日目は藤井三冠がわずかな形勢差を徐々に拡大し、持ち時間も1時間以上残す快勝となりました。
第三局 (10月30-31日)
先手の藤井三冠が久し振りに角換わりを採用しましたが、豊島竜王が研究手順と思われる守りの側から銀をぶつける趣向を見せ、形勢は互角ながら持ち時間は藤井三冠が1時間近く少ない状況で初日を終えました。2日目は徐々に時間差が縮まり、藤井三冠が後手陣に銀と角を続けて打つ一見重たい攻めを見せると、豊島竜王の持ち時間が先に1時間を切りました。形勢が藤井三冠に傾いたところで藤井三冠の残り時間も1時間を切りましたが、そのまま一気に寄せ切りました。
第四局 (11月12-13日)
両者の研究が行き届いた角換わり腰掛け銀の将棋となり、形勢はわずかに藤井三冠に傾きながらも、持ち時間は拮抗した状態で初日を終えました。2日目は非常に難解な中盤戦となって藤井三冠の長考が続き、飛車が成り込んで勝負を賭けたところで藤井三冠の持ち時間は10分弱、豊島竜王は2時間以上の大差となりました。明快な勝ち筋を見つけられれば勝ちという局面でしたが、豊島竜王は100分近い大長考で見つけることができず(恐らく誰にも)、藤井三冠が鮮やかな即詰みに討ち取りました。

多くの方が指摘されている通り、恐らくは課題の一つであったと思われる時間の使い方が改善され、終盤まで充分時間を残していることが増えました。ファンの立場から言うと、時間がなくてヒヤヒヤする場面はほとんどなくなりました。第四局が時間の面ではピンチでしたが、恐らくは結論の出ない局面で相手に決断を迫った勝負術が光りました。
ただ序盤は豊島竜王がペースを掴んでいる将棋も多く、技術的な課題は素人には測り知れないところですが、この辺りがご本人の言う「課題が多く見つかった」という点なのかもしれません。

■全八冠制覇への道

羽生九段が全七冠制覇して以来の全八冠制覇が、現実的なものとして近づいてきました。もちろん既に獲得した四冠を防衛し続けることも容易ではありませんが、まだタイトル戦で負けたことのない藤井四冠が失冠する姿を想像することができません。ここでは未獲得のタイトルを獲得するまでの道のりを整理しておきたいと思います。

王将戦
7人による挑戦者決定リーグの優勝者が挑戦権を獲得します。今期は藤井四冠が現時点で4勝0敗と単独トップに立っており、挑戦権を得る可能性が高くなっています。王将戦七番勝負は渡辺王将に挑む戦いとなりますが、渡辺王将との対戦成績が通算8勝1敗、2日制のタイトル戦における藤井四冠の成績が12勝1敗であることを考えると、かなりの確率で奪取すると思わざるを得ません。最速2022年2月頃に獲得が可能です。

王座戦、棋王戦
両棋戦ともトーナメントの優勝者(棋王戦はベスト4以上は敗者復活戦あり)が挑戦権を獲得します。藤井四冠は両棋戦とも今期は既に敗退しており、獲得は早くても来年度となります。藤井四冠は挑戦者決定戦などの大一番で負けたことはほぼありませんが、トーナメントの序盤で姿を消すケースがあります。序盤を乗り切ってベスト4ぐらいまで勝ち上がれば、挑戦権を獲得しタイトル奪取する可能性は高まると思います。最速、王座戦は2022年9月頃、棋王戦は2023年3月頃に獲得が可能です。

名人戦
順位戦A級の優勝者が挑戦権を獲得します。藤井四冠が所属するB級1組で上位2人がA級に昇級します。今期は藤井四冠が現時点で2番手につけており、来年度はA級で戦う可能性が高くなっています。A級は最高峰の10人が集まるリーグ戦なので優勝することは容易ではありませんが、1つ負ければ終わりのトーナメントではないので可能性は高いと思っています。最速2023年5月頃に獲得が可能です。

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