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「観る将」が観た第31期銀河戦決勝トーナメント1回戦 藤井銀河vs斎藤(明)五段

11月30日に、銀河戦決勝トーナメント1回戦第8局が放映されました。Hブロックで羽生善治九段を破って最終勝残者となった藤井聡太銀河と、Aブロックで7人抜きの最多連勝者となった斎藤明日斗五段の顔合わせとなっています。

斎藤五段は2017年プロ入りの25歳です。昨年度は勝率0.812と全棋士中2位の成績で、順位戦でも10戦全勝でC級1組への昇級を果たしています。藤井銀河とは過去2回の対戦があり、いずれも敗れています。兄弟子の本田奎六段が第45期棋王戦(2019年度)で、弟弟子の伊藤匠七段が今年度の第36期竜王戦でタイトル挑戦しており、斎藤五段としても絶対王者の藤井八冠を倒して存在感をアピールしたいところです。


戦型は相掛かり

振り駒で先手となった斎藤五段が相掛かりに誘導し飛先の歩を交換すると、藤井銀河も飛先の歩を交換します。お互いに玉を4筋に上がり、斎藤五段が▲7七桂と跳ねると、藤井銀河は少考して角道を開けます。斎藤五段は飛車を3筋に寄せ、藤井銀河が△4四角と出ると、7筋の歩を伸ばして得意のひねり飛車を目指します。

斎藤五段の端からの仕掛け

藤井銀河が△8二飛と引くと、斎藤五段は▲8五歩と飛車の利きを止めます。藤井銀河は△6三銀と上がり、斎藤五段が飛車を8筋に回すと、△8三歩と打って収めます。穏やかな駒組みになると思われましたが、斎藤五段は少考して9筋の歩をぶつけ、解説の阿久津八段は思わず「ひぇー」と声を上げます。藤井銀河は少考して同歩と応じ、斎藤五段が▲9五同香と走ると、△9五同香と香を取ります。AIの評価値は藤井銀河の62%と傾いています。

斎藤五段が歩頭桂からの強襲

斎藤五段は▲9六歩と打って香を取り返しますが、藤井銀河は7筋の歩を伸ばします。斎藤五段は▲9四歩と伸ばし、藤井銀河が△9二歩と受けると、▲6五桂と後手の歩頭に跳ねて角道を通します。藤井銀河が桂を取ると、斎藤五段は角を交換して飛車取りに▲9一角と打ち込みます。

両者とも30秒将棋へ

藤井銀河は少し時間を使って飛車を6筋にかわし、斎藤五段が8筋の歩をぶつけると、7筋の歩を伸ばします。斎藤五段は少考して▲7六同飛と取り、藤井銀河が8筋の歩を取ると、▲7四歩と垂らします。藤井銀河は持ち時間を使い切り、更に考慮時間を2回使って△6四銀と上がり、斎藤五段も30秒将棋に突入して▲7三歩成と飛び込むと、△7三同銀と取ります。

藤井銀河の強気の反発

斎藤五段は考慮時間を4回使って▲7三同角成と銀を食いちぎり、藤井銀河が桂で取ると、▲7四歩と桂頭を叩きます。藤井銀河が考慮時間を2回使い、7筋に構わず6筋の歩をぶつけると、斎藤五段は考慮時間を5回使って▲6六同歩と応じます。藤井銀河が考慮時間を2回使って飛車取りに△8五角と打つと、斎藤五段は飛車を8筋に寄って辛抱します。AIの評価値は藤井銀河の98%と大きく傾いています。

飛車切りの寄せ

藤井銀河はもう1枚の角を飛車取りに△9七角と打ち、斎藤五段が飛車を引いてかわすと、△6四角成と馬を作って万全を期します。斎藤五段は▲7三歩成と桂で取り、藤井銀河が馬で取ると、最後の考慮時間を使って馬取りに▲6五桂と打ちます。藤井銀河は馬をかわし、斎藤五段が▲7七金と上がると、△6五飛と桂を食いちぎります。斎藤五段は▲8五飛と角と刺し違えてから飛車を取りますが、藤井銀河は△5六桂の王手から△7六歩と金頭を叩いて寄せ切りました。

まとめ

本局は斎藤五段が積極的に仕掛けて激しい応酬となり、駒得となった藤井銀河が落ち着いた指し回しで少しずつリードを拡げました。斎藤五段は受けに回って辛抱する展開となりましたが、藤井銀河は攻防の2枚角で自陣の傷を消すと、飛車切りから鮮やかに寄せ切る快勝となりました。
藤井銀河は2回戦に進出し、千田翔太七段と顔を合わせます。斎藤五段は高い壁に跳ね返される形となりましたが、叡王戦など他棋戦でも上位に顔を出しており、今後の飛躍を期待したいと思います。

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