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ABEMAトーナメント2023 予選Eリーグ第三試合

7月22日に、ABEMAトーナメント2023の予選Eリーグ第三試合が放映されました。第二試合に勝って3勝すれば予選突破が決まるチーム藤井「トウカイテイオー」と、この試合に勝てば予選突破となるチーム渡辺「ラン ラン ラン」の顔合わせとなっています。
※本稿は収録当時の称号で記述させていただきます。


一局目:澤田真吾七段 vs 岡部怜生四段

チーム渡辺は、若手の岡部四段が先陣を切り、練習を含めて初めての顔合わせが実現します。後手の澤田七段が角道を止め中飛車に振ると、岡部四段は左美濃に構えます。岡部四段が7筋の位を取ると、澤田七段は飛車を7筋に回して位を奪還します。澤田七段が更に飛車を8筋に寄せると、岡部四段は玉を4筋に早逃げします。澤田七段が△8五桂とぶつけて桂交換すると、岡部四段は▲7三歩と垂らして反撃します。時間に余裕のあった澤田七段が1分半程考えて飛車を浮いて受けると、岡部四段は4筋の歩をぶつけます。澤田七段は桂を取らせてから△6六桂と金取りに打ち、岡部四段が銀桂交換に応じると、更に1分程考えて△6五歩と角頭を叩きます。岡部四段が銀取りに▲8六桂と打つと、澤田七段は金取りに△6六桂と打ちます。時間に追われた岡部四段は銀桂交換してから▲6六銀と桂を食いちぎりますが、澤田七段は角で銀を食いちぎり、△4六銀と先手の玉頭を押さえて寄せ切りました。
チーム藤井:1勝 - チーム渡辺:0勝

二局目:齊藤裕也四段 vs 渡辺明名人

チーム藤井は、新鋭の齊藤四段が出陣します。先手の齊藤四段は中飛車に振り、渡辺名人が左美濃に囲うと、美濃囲いに構えます。渡辺名人が8筋の歩を突き捨て、△8四銀と繰り出すと、齊藤四段は飛車を7筋に寄せて受けます。渡辺名人が銀冠への組み換えを図ると、齊藤四段は▲6八角と引き、▲8六飛とぶつけます。渡辺名人は△8四銀と戻して飛交換を拒否し、△8五銀と上がって飛車を追いますが、齊藤四段は▲8六歩と突いて銀を捕獲します。渡辺名人は銀を取らせる代わりに桂を取り、齊藤四段が▲6五銀と金取りに打つと、△4四金とかわして先手の飛車を捕獲します。渡辺名人が△7八飛と打ち込み竜を作ると、齊藤四段は歩で飛車の横利きを止め、竜取りに▲7五角と飛び出します。齊藤四段が▲2四桂と玉頭から反撃すると、渡辺名人も王手で△2七香と打ち込みます。齊藤四段が時間に追われて▲1七玉とかわすと、作戦会議室では佐々木八段が「ひぇー」と叫びます。渡辺名人は△2五桂と畳み掛けますが、齊藤四段は▲2六玉とかわします。渡辺名人は先手玉を下段に落として再度△2五桂と詰めろを掛けますが、齊藤四段は▲3三"と"と金を取って王手し、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:2勝 - チーム渡辺:0勝

三局目:藤井聡太竜王 vs 佐々木勇気八段

チーム渡辺は、藤井竜王との対局が楽しみと言う佐々木八段が出陣します。先手の佐々木八段が相掛かりに誘導し、お互いに飛先の歩を交換します。佐々木八段が4筋の位を取ると、藤井竜王は角を交換します。佐々木八段が3筋の桂頭を攻め、▲5七角と打つと、藤井竜王は△2四角と合わせます。佐々木八段は歩で桂を取って▲4六桂と打ちますが、藤井竜王は7筋の桂頭を攻め、8筋の銀頭を叩いてから桂を取ります。藤井竜王が角金両取りに△6五桂打と継ぎ桂で攻めると、佐々木八段は残り10秒まで考えて▲6七玉と顔面受けします。藤井竜王は金桂交換し、△6七金と打って玉で取らせ、△8七飛成と銀を取って竜を作ります。佐々木八段は▲3三歩成と反撃しますが、藤井竜王は構わず△3七銀と挟撃態勢を作ります。藤井竜王は△4八銀成から連続王手で迫り、そのまま寄せ切りました。
チーム藤井:3勝 - チーム渡辺:0勝

四局目:澤田真吾七段 vs 岡部怜生四段

両チームとも順番を変えず、一局目と同じ顔合わせとなります。先手の澤田七段が相掛かりに誘導し、お互いに飛先の歩を交換します。岡部四段が7筋の歩を突くと、澤田七段は再度2筋の歩を合わせて3筋の横歩を取ります。岡部四段が9筋の歩を突き捨ててから△6五桂と跳ねると、澤田七段は4筋の歩を突いてもう1枚の桂跳ねを防ぎます。岡部四段は香取りに△5五角と打ち、澤田七段が▲6六角と合わせると、4筋の歩を取ってから8筋の歩を合わせて攻め掛かります。澤田七段は香を取って▲4七香と打ち、後手の左桂の動きを牽制すると、時間に追われた岡部四段の攻めに丁寧に応じます。澤田七段が角をぶつけて交換し、飛車を4筋に寄せて突破を図ると、岡部四段は△5四角と打って凌ぎます。澤田七段は少し迷った手つきで▲9二角と打ち、岡部四段が角取りに飛車を9筋に寄せると、角を取らせる間に金を取り、飛銀両取りに▲8三金と打ちます。岡部四段は飛車を見捨てて3筋の歩を突進しますが、澤田七段は▲5四飛と角と交換し、王手銀取りに▲3二飛と打ち込みます。岡部四段は自陣に飛車を打って凌ぎ、△5七桂右成から先手玉に迫りましたが届かず、澤田七段が逃げ切りました。
チーム藤井:4勝 - チーム渡辺:0勝

五局目:藤井聡太竜王 vs 佐々木勇気八段

追い込まれたチーム渡辺は「個人の意地を見せよう!」と佐々木八段を送り出し、三局目と同じ顔合わせとなります。先手の佐々木八段が前局とは変えて角換わりに誘導し、相早繰り銀の将棋となります。佐々木八段が3筋から仕掛けると、藤井竜王は8筋を継ぎ歩で攻めます。藤井竜王が1分程考えて銀取りに△8五飛と浮き、佐々木八段が銀を引くと、3筋に歩を合わせて先手の拠点を消します。いったん駒組みに戻り、佐々木八段が▲3七桂と跳ねると、藤井竜王は△6四角と打って牽制します。佐々木八段は飛車を浮いて桂に紐を付け、▲6六角~▲3五歩と決戦を挑み、銀交換してから▲1一角成と香を取って馬を作ります。藤井竜王は桂取りに△3六歩と打って反撃しますが、佐々木八段は2筋に歩を垂らして後手陣の金を上ずらせ、▲6三銀と打ち込んで挟撃態勢を作ります。佐々木八段は香を犠牲に▲7四銀成と飛角両取りを掛けますが、藤井竜王は角を取らせる代わりに△6六歩から先手玉に攻め掛かり、△4六桂と歩頭桂を放って追い込みます。佐々木八段は▲5四桂から王手で迫りましたが届かず、藤井竜王が逃げ切りました。
チーム藤井:5勝 - チーム渡辺:0勝

第三試合の結果

チーム藤井は、先陣を切った澤田七段が勝ち、齊藤四段も相手のリーダーを倒す金星でチームに勢いをもたらしました。リーダーの藤井竜王も危なげなく2勝を挙げ、結果的に優勝候補と思われた強敵を相手に圧勝して予選1位通過となりました。リーダーの活躍は想定内と思いますが、初出場の澤田七段が時間の使い方を含め、フィッシャールールへの抜群の適応力を見せ、本戦でも勝ち上がっていけそうなチーム力を感じさせました。
チーム渡辺は、リーダーの渡辺名人が第一試合に続いて新鋭に勝ち星を献上し、流れを掴むことができませんでした。エースとしての活躍が期待された佐々木八段や第一試合では2勝を挙げた岡部四段も流れを変えることができず、まさかの5連敗で予選敗退となりました。チーム戦の怖さを思い知らされる結果となりましたが、新鋭の岡部四段には今回の経験を活かして公式戦での活躍を楽しみにしたいと思います。

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