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Number将棋特集「藤井聡太と最強の一手」を読んで

ビジュアル・スポーツ総合誌「Sports Graphic Number」の将棋特集第3弾、「藤井聡太と最強の一手」が発行されましたので、早速入手し読んでみました。第2弾からおよそ1年、将棋ファンが待ち焦がれた待望の一冊です。将棋に関する記事は70数ページ、これまでと変わらず大きな写真をふんだんに使って棋士の魅力を伝えてくれています。

前半の約30ページは、タイトルにある藤井聡太竜王に関連する記事が続きます。名局と称される竜王戦第四局における対局者の心理を、大川慎太郎さんが取材に基づき描写した記事は将棋ファン必読です。その最終盤を多くの図を使って解説した勝又清和七段の記事を読むと、私のように棋力の低い観る将にも、あの将棋の奥深さが何となくわかります。色々な人が様々な視点で藤井竜王を見つめ、それぞれの想いを綴っています。

後半は、竜王戦後の豊島将之九段に寄り添う記事、谷川浩司九段や渡辺明名人の名勝負を振り返る記事、佐藤康光九段や深浦康市九段らの「初タイトルの一手」を語る記事、大山康晴十五世名人の最後の順位戦でA級プレーオフを戦った高橋道雄九段が回想した記事などが続きます。一気に読んでしまいそうになるところ、一つの記事を読むたびに一度冊子を置き、余韻に浸りながらゆっくり読み進めました。どの記事も私には印象的で素晴らしい内容でしたが、特に心に残った記事を紹介しておきたいと思います。

1つ目は、西山朋佳女流二冠のインタビュー記事です。年齢制限前に突然奨励会を退会し、女流棋士としての道を歩み始めた西山女流二冠の心の動きが語られています。剛腕と呼ばれる将棋からは想像しにくい、西山女流二冠のおおらかな魅力を感じ取ることができます。昨年は女流王将と女流王座を失冠した西山女流二冠には、全女流棋戦に参戦する今年は再びタイトル数を増やして欲しいと応援したくなります。

2つ目は、木村一基九段と行方尚史九段の記事です。恐らく個別に取材した内容を組み合わせているのだと思いますが、同い年で小学生の頃から対局を重ねてきた二人の、親友とも敵とも違う関係を軽妙に浮かび上がらせています。お互いにお互いを認め合いながら「傷を舐め合うんじゃなくて、傷つけ合っていたい」という言葉には、我々一般人には理解しえない勝負師の世界の重みが感じられます。

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