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ABEMAトーナメント2023 本戦2回戦第四試合

9月2日に、ABEMAトーナメント2023の本戦2回戦第四試合が放映されました。Eリーグ1位のチーム藤井「トウカイテイオー」と、Bリーグ2位で1回戦ではチーム康光を降したチーム斎藤「飛慎隊」の顔合わせとなっています。


一局目:澤田真吾七段 vs 黒田尭之五段

両チームともオールラウンダーが先陣を切ります。振り駒で先手となった黒田五段が5手目に▲3八銀と上がる趣向を見せ、澤田七段はいきなり1分程考えて△3三角と上がり、四間飛車に振ります。黒田五段も想定外だったのか時間を使い、▲5五銀と右銀を繰り出します。澤田七段が早くも残り30秒程となり3筋の歩を伸ばすと、黒田五段は飛先の歩を交換して六段目に引き3筋の歩を狙います。澤田七段は4筋の歩も突き捨てて△3八角と打ち込み馬を作りますが、黒田五段は▲4五桂と跳ねて桂交換し、▲7五桂と金取りに打ちます。澤田七段は馬を自陣に引き付け、銀を取らせる代わりに桂を取ると、歩の攻めで先手陣を乱します。黒田五段が▲4四桂から後手陣の金銀を剥がし、▲6二角と飛車に当てつつ後手の玉頭を狙うと、澤田七段は連続王手で先手玉に迫りますが届かず、投了を告げました。
チーム藤井:0勝 - チーム斎藤:1勝

二局目:齊藤裕也四段 vs 冨田誠也四段

チーム藤井は新鋭の齊藤四段を送り出し、振り飛車党同士で大学の同窓対決となります。先手の齊藤四段が中飛車に振ると、冨田四段は居飛車を採用します。齊藤四段は銀を繰り出して後手の角頭を狙うと、冨田四段は角を交換して飛車先突破を狙います。6分近くに時間を増やしていた齋藤四段は4分近い大長考で▲3三銀不成と桂を食いちぎり、飛銀両取りに▲7四桂と打ちます。冨田四段は飛車を9筋にかわしますが、齊藤四段は飛車取りに角を打って交換し、▲8二飛と桂香両取りに打ち込みます。苦しくなった冨田四段は1筋を端攻めしますが、齊藤四段は飛車で銀を食いちぎり、金銀交換してから▲6二桂成と攻め込みます。自陣に飛車と角を打って粘る冨田四段は△6一銀と引く妙手で先手の攻撃を食い止め、齊藤四段が1筋の歩を伸ばして後手玉に迫ると、△1六桂から反撃して先手玉を追い詰めます。両者とも玉を上部に脱出して持将棋模様となりましたが、齊藤四段は入玉した後手玉を捕まえにいきます。最後は金を打ち合う手順の繰り返しとなり、千日手が成立しました。

指し直し局は先手の冨田四段が41秒、齊藤四段が27秒という持ち時間で行われます。冨田四段が居飛車を選択して穴熊を目指すと、齊藤四段は三間飛車に振り美濃囲いに構えます。冨田四段が▲5五歩と伸ばして銀に当てると、齊藤四段は△6五銀とぶつけて交換します。冨田四段が2筋の歩を突き捨て香取りに▲4四角と飛び出すと、齊藤四段は△4八歩と金頭を叩きます。冨田四段は構わず▲5三歩~▲5二銀と攻め掛かりますが、齊藤四段も△5七角成~△7九馬と金を食いちぎって△3九飛成と竜を作ります。冨田四段は▲3五角と援軍を送って攻め合いますが、最後は9筋の攻防となり、齊藤四段が即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:1勝 - チーム斎藤:1勝

三局目:藤井聡太竜王名人 vs 斎藤慎太郎八段

両チームとも順番通り、早くもリーダー対決が実現します。先手の斎藤八段が相掛かりに誘導すると、藤井竜王名人は飛車先の歩を交換し、△8七歩と角頭を叩いて後手の角を9筋に追い、9筋の歩をぶつけます。斎藤八段は飛先の歩を交換して▲4五桂と跳ね、藤井竜王名人が8筋の歩を成り捨て△3三桂とぶつけると、▲2三歩と打って角を3筋に引かせてから桂交換に応じます。斎藤八段が銀を上がって▲8八角と戻し、9筋の歩を伸ばして制圧すると、お互いに陣形の整備に戻ります。斎藤八段が3筋を歩で攻めて後手陣を乱すと、藤井竜王名人は8筋を歩で攻めて先手陣を乱します。斎藤八段は3筋に"と金"を作りますが、藤井竜王名人は構わず9筋から反発します。斎藤八段が"と金"で銀を取ると、藤井竜王名人も9筋の歩を伸ばして銀を取り、8筋の歩を伸ばして"と金"を作ります。お互いに時間に追われる中、斎藤八段は▲4三金から角と金を取って詰めろを掛けますが、藤井竜王名人は"と金"で金を剥がして△8八飛成と角を取って飛び込みます。この瞬間、斎藤八段の勝勢を示していたAIの評価値が藤井竜王名人の99%と逆転を示し、作戦会議室では齊藤四段が「えっえっえっえっ」とつぶやき、冨田四段は「やあーぁ」と叫びます。藤井竜王名人は慎重に10秒ほど考え、△9七銀から即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:2勝 - チーム斎藤:1勝

四局目:齊藤裕也四段 vs 冨田誠也四段

両チームとも順番を変え、二局目と同じ顔合わせとなります。先手の齊藤四段が中飛車に振ると、冨田四段は向かい飛車に振ります。齊藤四段も向かい飛車に振り直し、お互いに金無双に構えて飛先の歩を交換します。ジリジリした駒組みが続き、冨田四段が△7四歩~△7三銀と組み替えると、齊藤四段は7筋の歩をぶつけて銀を繰り出します。冨田四段は5筋の歩を突いて飛車の横利きを通し、△7四歩と打って銀を追いますが、齊藤四段は8筋の歩をぶつけて銀交換します。冨田四段が△7五銀と打って飛車を追い、△7六銀と前進して角を攻めると、齊藤四段は▲2五歩と突いて飛車を追い、▲2六飛と転回します。冨田四段が△5六歩と伸ばして角道を通し、△1三桂と跳ねて飛車を捕獲すると、齊藤四段は"と金"を作って角を取ります。冨田四段が角取りかつ金2枚との交換を狙って△7八飛と打ち込むと、齊藤四段は懸命の粘りを見せましたが及ばず、投了を告げました。
チーム藤井:2勝 - チーム斎藤:2勝

五局目:澤田真吾七段 vs 黒田尭之五段

両チームともリーダーを残し、一局目と同じ顔合わせとなります。先手の黒田五段が相掛かりに誘導し、▲7七桂と角交換を拒否し、8筋の歩を伸ばしてひねり飛車にします。澤田七段が△8三歩と受けると、黒田五段は▲4五桂と跳ねて角を引かせ、▲6五桂と後手の玉頭を狙います。黒田五段が桂2枚を銀と交換し、飛車もぶつけて交換すると、澤田七段は角銀両取りに△7六桂と打ち銀桂交換します。澤田七段が3筋の銀頭を歩で叩いて吊り上げ、△2九飛と打ち込むと、黒田五段は▲6五桂と攻め合います。澤田七段が△6四銀と打って桂を食いちぎり、銀取りに△4五銀と打つと、黒田五段は飛車取りに▲3八銀と打ちます。澤田七段は△3七桂成と王手し、再度△4五桂と打って先手玉を吊り上げると、△2六飛成~△3七桂不成と追い詰めます。黒田五段は玉の退路を作って粘りましたが、澤田七段は冷静に詰めろを掛けて寄せ切りました。
チーム藤井:3勝 - チーム斎藤:2勝

六局目:藤井聡太竜王名人 vs 冨田誠也四段

チーム斎藤は後手番を冨田四段に託します。冨田四段が四間飛車に振り穴熊を目指すと、藤井竜王名人も穴熊に囲います。藤井竜王名人が飛車を浮いて3筋の歩を狙うと、冨田四段は銀で歩を守り、2筋の歩をぶつけて反発します。藤井竜王名人は5-6筋の位を取って飛車を5筋に回し、冨田四段が△5二金と戻して4-5筋を補強すると、▲3七桂と跳ねて攻め駒を足します。冨田四段は桂交換に応じて△3四銀と上がって飛車に当てますが、藤井竜王名人は飛車を引いてから5筋に回し、▲5六桂と打って角を追い、▲6四桂と歩頭に跳ねて金に当てます。この桂を取ると5筋を突破されるので、冨田四段は金を諦めて5筋の歩を取りますが、藤井竜王名人は金桂交換してから▲1一角成と香を取って馬を作ります。藤井竜王名人は飛車取りに▲4四金と打ち、馬と角を交換してから金銀交換して竜を作り、飛車取りに角を打って馬を作ります。冨田四段は金取りに△6六桂と打って銀と交換し、竜取りに角を打って馬を作りますが、藤井竜王名人は飛車を取って▲3一飛と打ちこみ寄せ切りました。
チーム藤井:4勝 - チーム斎藤:2勝

七局目:齊藤裕也四段 vs 斎藤慎太郎八段

後がなくなったチーム斎藤はリーダーが出陣し、「サイトウ」対決となります。後手の齊藤四段が三間飛車に振り穴熊を目指すと、斎藤八段も穴熊に囲います。齊藤四段が3筋の歩を伸ばすと、斎藤八段は6筋の歩を伸ばして角道を通します。齊藤四段は銀で6筋の歩を取りますが、斎藤八段は2筋の歩を突き捨て、▲4四角と出て1筋の香を狙います。齊藤四段は△3三桂と跳ねて防ぎ、3筋の歩を突き捨ててから、△4五桂と跳ねて飛車と角の利きを通します。斎藤八段が飛交換に応じ、▲1一角成と馬を作ると、齊藤四段も飛車を打ち込み△2九飛成と竜を作ります。斎藤八段は▲4一飛~▲8六香と後手陣に攻め掛かり、齊藤四段が竜で香を拾うと、▲4四馬と攻め駒を足します。齊藤四段は△6四香から反撃し、△6八角成と銀を食いちぎり、金の両取りに△5七銀と打って先手玉に迫ります。両者とも時間に追われる中、斎藤八段は自陣に金駒を埋めて粘り、▲8三香成~▲8四香と攻め合いますが、最後は齊藤四段が即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:5勝 - チーム斎藤:2勝

第四試合の結果

チーム藤井は、リーダーの藤井竜王名人がこの日も2戦2勝と抜群の安定感でチームを牽引しました。齊藤四段も2勝を挙げる活躍で、少し自信なさげだった予選に比べると、指し手にも落ち着きが出てきたように思います。澤田七段も着実に白星を挙げており、このチームがリーダーだけに頼るのではない、総合力の高いチームであることを感じさせます。
チーム斎藤は、この日はリーダーの斎藤八段が2連敗し、チームに流れを呼び込むことができませんでした。前回はエントリーチームでの出場だった黒田五段と冨田四段はこの日もそれぞれ1勝し、次回以降もドラフトで選ばれるべき実力を示しました。リーダーを中心に、勝っても負けてもチームメイトを温かく迎える様子は微笑ましく、今大会屈指のチームワークだったと思います。

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