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「観る将」が観た第33期竜王戦決勝トーナメント

7月24日に行われた竜王戦決勝トーナメント、藤井棋聖と丸山九段の対局の感想です。藤井棋聖は、杉本八段との師弟対決を制し、3組優勝の成績で決勝トーナメントに進出です。丸山九段は羽生世代の一員で名人2期の強豪であり、今期は2組2位の成績で決勝トーナメントに進出しています。

ご存知の方も多いと思いますが、竜王戦は1~6組に分かれてトーナメントを行い、1組は優勝から5位、2組は優勝から2位、3~6組は優勝者のみの11名が決勝トーナメントに進出します。6組から挑戦権を得る可能性もありますが、上位の組の成績上位者にはアドバンテージのあるトーナメントになっており、とてもよく考えられた仕組みだと思います。

また、組によって多少形は変わりますが、トーナメント(ランキング戦)に敗れると敗者復活戦(昇級者決定戦、残留決定戦)に廻り、各組4名が昇級4名が降級となります。順位戦と同様、竜王戦で何組に在籍しているかは、棋士の一つのステータスになっています。

本局は、振り駒で先手となった丸山九段が角換わりから棒銀を採用しました。藤井棋聖が△4五角で受け止めましたが、丸山九段も自陣に打った▲3八角を活かして▲7四銀と反撃し、△5四角との繰り返しとなり千日手が成立しました。

差し直し局開始時点の持ち時間は、藤井棋聖の約1時間34分に対し、丸山九段は約3時間59分と大差がつきました。後手の丸山九段が得意の一手損角換わりを選択し、藤井棋聖は棒銀で攻めましたが、丸山九段は右銀を△4五銀と繰り出して対抗します。難しい中盤戦で藤井棋聖は時間を使わざるを得ない展開となり、71手目から1分将棋になると徐々に形勢を損ね、丸山九段の△5五銀が好手だったようで敗勢となりました。

しかし、最後に藤井棋聖らしい起死回生の一手▲3一銀が飛び出し、解説の深浦九段によれば大逆転の可能性もあったようですが、時間を残していた丸山九段が冷静に対処し(なんと相手に王手飛車銀取りを打たせる手が正解!)勝利しました。全体的には千日手局も含め、序中盤に時間を使わせる展開にした丸山九段の戦略が上手かったということのようですが、1分将棋で20手以上指し続け、最終盤に見せ場を作った藤井棋聖にも拍手を贈りたいと思います。

丸山九段としては、一度も明確なリードを与えない完勝だったと思います。藤井棋聖としては残念な結果となりましたが、この経験も力にして更に強い姿を見せてくれることでしょう。史上初の4期連続ランキング戦優勝を果たしながら、またしても決勝トーナメントで涙を飲む形となりましたが、来期は2組で5期連続優勝し、決勝トーナメントの壁を破って竜王に挑戦することを期待したいと思います。

※(7/29追記)余談ですが、これ、私も笑いました。


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