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第54期新人王記念対局 藤井八冠vs上野四段

新人王を獲得した上野裕寿四段の、藤井聡太八冠との記念対局が12月4日に行われ、1月11日までにしんぶん赤旗に観戦記が掲載されました。新人王記念対局は2005年までは公式戦扱いで相手は名人と決まっていましたが、2006年以降は非公式戦となりタイトルホルダーの1人と対局する形になりました。持ち時間は各3時間で新人王の先手と決まっており、2006年以降は新人王側からみて6勝11敗です。

上野四段は2023年10月プロ入りの20歳で、藤井八冠の1学年下になります。今期の新人王戦は三段として参戦し、中澤女流二段、伊藤(匠)六段(当時)、増田(康)七段、吉池三段を倒して決勝に駒を進めました。四段としてのデビュー戦となった決勝三番勝負では、今年度驚異的な勝率で勝ちまくっている藤本四段を2勝1敗で降し、デビュー3戦目に棋戦初優勝という快挙を成し遂げました。


上野四段は矢倉

上野四段が矢倉を採用し、藤井八冠は角道を通したまま現代調の駒組みを進めます。上野四段が飛先の歩を交換すると、藤井八冠も△6五桂と跳ね、銀を6筋に上がらせて飛先の歩を交換します。上野四段は右銀を繰り出し、飛車を3筋に寄せて、3筋の歩を交換してから2筋に戻します。

上野四段の仕掛け

上野四段は左桂をぶつけて交換し、藤井八冠が角を3筋に引くと、▲3六桂と据えます。藤井八冠は角を5筋に上がって4筋に利かせ、上野四段が▲2五桂と跳ねて銀に当てると、いったん4筋に引いてかわしてから△4三銀と上がって備えます。上野四段が5筋の歩をぶつけて仕掛けると、藤井八冠は7筋の歩をぶつけて攻め合います。

一気に終盤戦へ

上野四段は5筋の歩を取り込み、藤井八冠が銀で取ると、▲5五銀左とぶつけます。藤井八冠は7筋の歩を取り込み、上野四段が角を6筋に上がってかわすと、6筋の歩を伸ばして角に当てます。上野四段が構わず5筋で銀交換し、王手金取りに▲4四桂と跳ねると、藤井八冠は金を見捨てて玉を6筋に引いて逃れます。上野四段は再度銀をぶつけ、藤井八冠が歩で角を取ると、銀を取って角に当てます。

攻め切るか、逃げ切るか

藤井八冠は角をかわしつつ桂を取り、上野四段が▲6三銀打と踏み込むと、6筋の歩を成り捨ててから金取りに△7五桂と打ちます。上野四段は銀で金を剥がして後手玉を孤立させ、王手角取りに銀を打って銀2枚で角を取り、玉頭を歩で叩きます。取ると王手飛車があるので藤井八冠が玉を4筋にかわすと、後手玉は意外に逃げ道が広く、形勢は大きく傾いてきたようです。

絶妙の金頭桂

上野四段は桂取りと5筋への角成の両狙いで角を打ちますが、藤井八冠は桂で金を取って王手してから、玉で歩を取って角に当て返します。上野四段がやむなく7筋に角を成って馬を作ると、藤井八冠は△6六桂と金頭に放ちます。この手は詰めろになっているようで、しかも先手が飛車を5筋に転回して攻撃参加するのを防いでいます。1分将棋となった上野四段は桂で王手してから金で桂を取りますが、藤井八冠が王手金取りに角を打つと、攻防共に見込みなく投了を告げました。

まとめ

本局は上野四段が5筋から積極的に仕掛け、藤井八冠は7筋から反発しました。上野四段は角を見捨てて後手陣に攻め込みましたが、守備駒を剥がされた後手玉が意外に捕まえ辛かったのが誤算だったのかもしれません。先手からの猛攻をギリギリでかわした藤井八冠は、2枚の桂で先手陣の急所を捉えて鮮やかに寄せ切りました。
2年前の新人王記念対局で藤井竜王に挑んだ伊藤匠四段(いずれも当時)は、今年度は竜王戦と棋王戦の挑戦者として藤井八冠と戦う立場になりました。上野四段にも近い将来、タイトル戦の場で藤井八冠を脅かす存在になることを期待したいと思います。

新人王戦は、しんぶん赤旗と日本将棋連盟が主催しています。棋譜等は下記サイトをご覧ください。


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